Jun 15, 2006

与え続けて報われないと……

愛に見返りを求めてはいけない、ただ与えることに歓びを感じよ、と言う人は多い。しかし僕は思う。そう言う人は、見返りを得ていることに無自覚なだけなのではないのだろうか? ひょっとして、本当に見返りがなくただ与えるだけの愛を実践することで、その人自身が却って不幸せになりはしないだろうか? 考えようによっては、僕の非モテ性はまさにそのことによって養われたかも知れないのだ。

僕は心情的には非モテの性質を持っていると思うけれども、顔が醜いことを理由に見ず知らずの女性に罵られた経験は記憶の限りでは無いし、奥手で告白なんてしたことがないから当然「玉砕」「フラれた」経験もない、全く友人がいないわけでもない、そんな感じで、汁だくの非モテな人に比べると明らかに当事者性に欠けている。モテと非モテを数直線上に置いたなら、プラスの方ではないだろうけれども、かといってマイナスでもない、初期値ではゼロに近い位置だったのではないだろうか。

しかし僕はいつの間にかそこからマイナスの方に移行してしまっていたようである。何故、当事者性がないのに僕は非モテの性質を持ち、非モテの心理状態に(近いところに)あるのだろうか。もしかしたら、対異性の経験・恋愛に関する社会的言説以外の理由で、僕は非モテ性を得てしまったのではないか。そんな風に考えてみた。

僕はMozilla/Firefoxの拡張機能を作るにあたって当初、褒めて貰えると嬉しいけど、お金を取ろうとまでは思わないよ、ただ自分がしたいから・楽しいからやっているんだ、というスタンスで活動していた。

しかしそのうち方針が少しずつズレてきて、プロダクトに対して寄せられる要望を可能な限り掬い上げたい、できるだけ万人が幸せになれるものを作りたい、というものになってきた。これはある意味で、「見返りを期待しない愛」「人類愛」の一種と呼べないこともないのではないだろうか。

日々変わるMozillaとFirefoxの仕様に追随し、旧バージョンとの互換性も保ち続け。リーガルな方法では実現不可能な要望に対しても、イリーガルな手を探してどうにか実現し。自分が一生使いそうにない機能のためにも、丸2~3日を費やしてコードを書き。

それが本当に多くの人にとっての幸せに繋がっていたなら問題はなかった。しかしその姿勢はやがて「Piro拡張化」などと呼ばれ、疎まれるようになっていった。そこからだ、苦痛が増したのは。愛を以て「よかれ」と思い加えた変更がクソミソに貶され、叩かれ、見捨てられ、しかしそれでも僕は食い下がるというループに陥るようになった。男女関係に例えて言うなら、熱烈にアプローチしても全く振り向いてももらえない、という状態に近かったのではないかと思う。

最初は、嫌悪された。

やがて、無視されるようになった。

「嫌悪される」うちはそれでも反応を示されているのだからまだよい、しかし「無視される」ようになったら本当の終わりだろう。意識的に無視されるのでなく、彼ら・彼女らは自分がそれを無視していることにすら気付いていない、本当の意味での「無視」だ。新しい「愛をくれる人」を見つけた彼ら・彼女らはそちらに鞍替えし、それまでの相手には目もくれない。彼ら・彼女らにとってそれはごく自然なことで、誰に咎められることではない。しかし残された「それまでの相手」が彼ら・彼女らに対して未練を持つ限り、ここから先には苦痛しか残らない。(無論それでも支持してくれる人はいた。しかし非モテが家族の愛の大切さに気付けないように、僕もその大切さに気付けず、ただ、目の前の人達が僕から関心を失っていくという事実だけに囚われていた。そしてその「空気」に耐えることができなかった。)

そのような経験が、僕を数直線上のマイナスの方向に引きずり込んだのではないか、歪んだ卑屈さという僕の非モテ性の一つを育む土壌になったのではないだろうか、と、妄想してみている。

もしこれが一般的にも言えることであるなら、自分のことが視界にすら入らない相手に無償の愛を注ぎ続けることは、本当の意味で何の見返りもない愛を実践することは、彼の非モテ性を強化する方向に働いてしまうのではないか、と僕は思っている。本当の意味で何の見返りもない愛を実践できるのは、そしてするべき・してもよいのは、数直線上で既に相当大きなプラスの位置にある人なのではないか、とも。

確証はない。ただの妄想。

余談。「敗因」は、誰に愛を注ぎ誰から見返りを受けるのか、ということを明確にしなかったせいなのだろう。だから「全ての人に」愛を注ごうとして、「全ての人から」見返りを受けられずに、自滅してしまったのだろう。

そして本能的に「モテ」な人は、見返りが全くないと分かればその時点で愛を注ぐこともやめてしまうのだと思う。

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