Mar 23, 2008

IEからシェアを奪う、を合言葉にしていてはFirefoxが勝てない理由

第348回 PC業界がAppleに学べること - 本田雅一の「週刊モバイル通信」

こうした戦略を実行できたのは、最初から「ジョブズはWindows搭載PCを超えるシェアを取ることに興味がなかった(福田氏)」からだともいえる。 Windowsをライバルと見立て、それ以上のシェアを取るのではなく、同氏が実現したいと考えているビジョンを実現するために粛々とできることから順に取り組んでいるのが現在のAppleというわけだ。

まあMozillaが「ブラウザ界でのシェア」にどれだけ関心があるかは知らないけど、少なくとも、「ブラウザ界でのシェア」なんて考え方をしているのなら、その考えである限りは絶対に成功なんてありえないよな、と常々思う。

すでに一社製品で独占されたような場に割り込むことがどれだけ大変か。特に素の状態で機能を比べればIE7とFirefoxに有意な差はないと言っていいわけで、機能でも値段でも圧倒的に優れているわけでない製品が同じような製品の市場を奪うための努力なんてのは、僕には、無駄な努力としか思えない。同じ土俵で戦おうとしている時点でもうダメ。勝ってる相手に正面から挑むなんて、これ以上の愚策は無い。

勝てる可能性があるとしたら、ライバルがいない新しい市場、別の次元で戦うことしかない。「ブラウザ」とかいう枠にとらわれない全く別の新しい物として売り込んで、「その市場で」シェア100%を獲る。そうして初めて、「その市場でのシェア100%の人数」が「ブラウザ全ユーザのうち30%の人数」に等しくなり、結果として「ブラウザ界でのシェア30%」が実現されるんだと僕は思っている。

あれだけ娯楽産業の覇者としてウハウハだった音楽業界その他の業界が今急速に衰退している理由。ネットワークを活かした対人コミュニケーションという全く別の次元で勝負を展開したケータイ業界が、他の業界からゴッソリと「みんなが財布から出せる自由な金」「みんなが何かに割ける自由時間」両方のシェアを持っていってしまったという事実。これを見て「どうすれば勝てるのか」、いや、「どうしないと勝てないのか」、「それをすれば必ず勝てる(十分条件)とは言えないけれども、少なくともそれをしない限り勝ちはありえない(必要条件)」ということを理解しないといけない、と僕は思う。

その点、Operaは実にうまくやっている。auでは全機種でOperaが導入されて、つまりここでシェア100%を獲っている。WiiでもDSでも、それらのハードでインターネットを見る唯一の手段としてシェア100%を獲っている。デスクトップPCで使われるブラウザとしてのOperaのシェアなんかに、多分Operaは無関心なんだろう。Mozillaがデスクトップに拘泥している間に、日本のネット利用人口の大半がOperaユーザになってしまっている、そんな事にだって十分なり得ると僕には思える。

とまあ、偉そうな事を言ってみたけど、今Firefoxの手持ちの武器弾薬の中で新しい次元の勝負を挑んでいけそうな物って実際、何も無いんだよねえ。あるとすれば「カスタマイズ性の高さ」という点で、確かにここで心をガッチリ持っていかれてしまったギークほどFirefoxにドップリはまって抜け出せなくなっているという事を考えれば、カスタマイズ界(?)でのシェアは30%どころじゃないと思うけど、でも「カスタマイズ界」自体が、日本ではものすごく小さいし、日本ほどじゃないかもだけど世界的にも小さい(ディーラーで買ってきた車をカスタマイズせずに乗ってる人の割合と、パーツからカスタマイズして乗ってる人の割合を比べてみればいい)。ここで100%を獲れたとしても、ブラウザのユーザ数全体の中での30%には全然届かないだろう。

かといって、そこでシェア100%を獲ったら全体で30%にもなる、という風な広い層を狙える特徴を今から新たにFirefoxに付け加えるなんてことは、きっとできない。一部のリーダーが強い統制力を以って事を動かせる普通の企業・ベンダと違って、常にユーザコミュニティの雑多な意見に色々な方向から足を引っ張られ出る杭を打たれ続けているMozillaでは、落ち着く所は「無個性」以外の何者でもない。

つまり……Firefoxが30%のシェアを獲るなんてのは、そもそも無理な話だったんだよ!!(と、キバヤシ風に〆てみる)

追記。会社が数字を気にして動いてはいけない理由 - teruyastarはかく語りき 「手堅い戦略というのはレッドオーシャンに突っ込んでいく自殺行為。リスクを取ってブルーオーシャンを目指さないと成功はない」これも要は同じ事を言っているように思う。

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