Mar 15, 2006

正しい名前と分かりやすい名前とターゲットと方向性

「拡張機能とかプラグインとかややこしいから、分かりやすくするために全てプラグインと呼ぶ」という窓の杜の理屈は本当にFirefoxの方向性にそぐうのかどうかを考えてみます。

本当に何も知らない初心者というのは、案外、名前の違いとかそういった細かいことにはこだわらないものだったりします。それよりもむしろ「これをこうしたらこうなった」みたいな感覚的なものの方を、彼らは大事にします。正しい言葉を教えようが間違った言葉を教えようが、初心者というのは、自分の分かる言葉で呼ぶようになります。青いeマークを指して「インターネット」と呼ぶのはそういう層です。

上級者も、名前が違うからといって理解できないということはありません。本質的な部分を理解しているから、名前が違っても理解できます。逆に、名前の違いに敏感になっていたりすらします。ログインとログオンの違いとか、アドオンとプラグインの違いとか、本質的な共通性と表面的な違いの両方を正しく認識できるようになっている人には、わざわざ「不正確な言葉で説明して分かりやすくする」意味はありません

言葉や方式の違いに大きく戸惑うのは、実は、初心者から中級者に上がろうかというレベルになってきた人です。この層の人は、ただ感覚だけで認識しているわけでなく、さりとて本質を見極めているわけでもなく、条件反射的に名前や外観と実体とを記憶の中で結びつけていたりします。本質的な共通性も違いも、表面的な共通性も違いも分かっていないと、名前や方式がちょっと変わっただけでとたんに分からなくなってしまいます。

いつまでも初心者の層に留まったままでいる人、上級者の域に達してしまった人はそこからほとんど立場を変えないのに対し、中間層の人というのは、初心者から上級者へと階段を駆け上ろうとする流動的な存在、過渡的な段階です。この、過渡的な段階にある人達を取り込むために有効なのが、乗り換え元の彼らが慣れ親しんでいる製品に用語や体裁を合わせる、というやり方です。

他の物に完璧に合わせる、というのは、ただ「良いと思うもの」を作ること以上に難しいことです。多大な労力を積み重ねてただの劣化コピーを作るくらいであれば、初心者層と上級者層の二つをターゲットにする方が、Firefoxの開発をより少ない労力で、より良いものを作る方向に進めるられるのではないでしょうか。

また、最も重要なのは、Mozilla FoundationはFirefoxを、「IEのシェアを奪い勝つためのもの」ではなく「IE以外の選択肢を提供するためのもの」と位置づけているということです。必要以上のIEへのすり寄り、シェア奪回それ自体は、その位置づけにおいてはそれほど強くは求められていないのです。無論、結果としてシェアが増すことについては、何ら否定されませんが。

こうして考えてみると、窓の杜の理屈は、Firefoxを世に送り出しているMozilla Foundationhaの思惑とは必ずしも一致しておらず、ひょっとしたらそぐわない部分があると言えるのではないでしょうか。

――なお、前述の3レベルの分類は、一人の人が全ての場合においてそうであると言い切るものではなく、ある人がとある分野では上級者でも、別のある分野ではまるっきり初心者、という場合は往々にしてあります。ある物事への習熟度一つを取ってその人の全人格の優劣を語ろうという話ではありませんので、そこは誤解のないよう。

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