Jul 03, 2010

Firefoxのバージョン間の差異を吸収するライブラリをこそ、僕は欲しているというのに。

Firefox 3.6以前とMinefieldとでは、アドオンマネージャのAPIがまるっきり変わってしまった。

Firefox 3.6以前のアドオンマネージャ(Cc['@mozilla.org/extensions/manager;1'].getService(Ci.nsIExtensionManager))は同期的なAPIで、頑張ってラップすればvar enabled = isEnabled('treestyletab@piro.sakura.ne.jp');みたいな感じで「その場で結果を取得する」ことができた。でも今のMinefield(アドオンマネージャがタブで開かれるようになった奴)では、インストール済みのアドオンの情報を取得しようと思ったら必ずコールバック関数を使った非同期なAPIでやらなきゃいけないようになってしまった。

// このコードはMinefield(Firefox 4)以降でないと動かない
Components.utils.import('resource://gre/modules/AddonManager.jsm');
AddonManager.getAddonByID(
  'treestyletab@piro.sakura.ne.jp',
  function(aAddon) {
    if (aAddon && aAddon.isActive) {
      // ツリー型タブがインストール済みで、
      // 且つ有効化されている時の処理
    }
    else {
      // ツリー型タブが利用できない時の処理
    }
})

Firefox 3.6以前と今のMinefield(つまり将来のFirefox 4)の両方に対応しようと思うと、この差異をどうやって吸収するかがネックになる。そこで、メインスレッドの処理を一時停止して処理の完了を待つ裏技を使って、同期的なやり方で他のアドオンの有効・無効の状態を調べたり設定ダイアログを開いたりするためのライブラリをMinefieldでもそのまま使えるようにしてみた。

// このライブラリを使うと、Firefox 3.6でもMinefieldでも
// 違いを意識しないでコードを書けるようになる。
var extensions = window['piro.sakura.ne.jp'].extensions;
if (extensions.isAvailable('treestyletab@piro.sakura.ne.jp')) {
  // ツリー型タブが利用できる時の処理
}
else {
  // ツリー型タブが利用できない時の処理
}

そしたら、Minefieldで起動時にセッションが復元されないという現象に遭遇してしまった。条件を絞り込んでいくと、どうもアドオンマネージャのタブが開かれた状態のセッションが復元される時に問題が起こっていて、さらに辿っていくと、上記の裏技で新アドオンマネージャの処理を止めていると、アドオンマネージャのタブの読み込みが阻害されてしまってセッション復元が半端な所で止まってしまうという事のようだった。

仕方がないので、Firefox 3.6以前のやり方に合わせるのではなく今のMinefieldのやり方に合わせる方向でestensions.jsのAPIを拡張して、今後はそっちの使い方を推奨する事にした。

// 新しい書き方。これも、Firefox 3.6でもMinefieldでも
// 違いを意識しないでコードを書いて大丈夫。
var extensions = window['piro.sakura.ne.jp'].extensions;
extensions.isAvailable('treestyletab@piro.sakura.ne.jp', {
  ok : function() { /* ツリー型タブが利用できる時の処理 */ },
  ng : function() { /* ツリー型タブが利用できない時の処理 */ }
});

Firefox 3.6以前でこのAPIを呼んだ場合は、非同期にならずにその場でコールバック関数が呼ばれるという実装上の違いがあるけれども、基本的に非同期で実行される前提でコードを書いておきさえすれば、Firefox 3.6以前でもMinefieldでもそのまま動くようになってる。コールバック関数を渡さなければ今まで通りの同期的なAPIとして動作するので、コールバック関数はどーしても使いたくない!という場合は、非推奨ではあるけど今まで通りの使い方もできる。

FUELとかJavaScriptコードモジュールとか、Firefox本体の方で色々ユーティリティっぽい物が用意されつつあるけど、僕の立場(複数のバージョンのFirefoxをサポートしたいという前提がある)では、それらはまるっきり役に立たない。新しいバージョンのFirefoxで標準のコードモジュールが増えた所で、現行のリリース版のFirefoxにも対応させるなら、結局それは使えないのだから。しかも、Firefoxのバージョンが上がったらAPIが使えなくなっちゃいましたなんて事もザラにある(今回の話も、nsIExtensionManagerがゴッソリなくなってしまったせいで起こった問題だ)。

そういう「簡単に書けますよ」っていうだけのAPIは、もう、ぶっちゃけどうでもいい。そんな物より、Firefoxの複数のバージョン間での差異を吸収するライブラリこそが僕には必要なんだ。新しいやり方に合わせて書いておけば古いバージョンのFirefoxでもそのまま使える、というのでも、古いやり方のままで新しいバージョンのFirefoxでも動く、というのでも、どっちでもいいんだけど、とにかく1つの記述でどっちのバージョンでも動くようにしておきたい。そうじゃないと、新しいFirefox用と古いFirefox用とで目的が重複するコードがどんどん増えていって、片方は直したけどもう片方は直し忘れてたみたいな穴がどんどん増えていって、すぐ破綻してしまう。

FUELはFirefoxのバージョン間の違いを意識しないで使えるようなAPIの提供を目指してたはずだと思ってたけど、今となってはその計画も頓挫してすっかりうち捨てられてしまったような印象がある。実際、今回の件についてもFUELのAPIは互換性を失う形であっさり変更されてしまってて、もうFirefox 3.6の物と同じ使い方はできないし、Firefox 3.6の物の使い方もMinefieldではできない。JetpackはRebootで明後日の方向に飛んで行ってしまって、少なくとも「Firefox 4から先」の事しか眼中になくてFirefox 3.x系はガン無視っぽい。結局、Mozilla本家はアテにならない。アドオン作者が自分達でやる以外にない。

そういう理由で作ったライブラリ類をリポジトリの中にまとめて置いてあるので、似たような事を考えてる人は覗いてみるといいかもしれない。JavaScriptコードモジュールとして使える物はmodestのJavaScriptコードモジュールの紹介ページに簡単な紹介を書いておいたけど、どれもソースの頭の方に用例を付けてあるので、まあ見てもらえばだいたい分かるんじゃないかな。

一応、簡単な説明。

  • jstimer.jsm:JavaScriptコードモジュール等のDOMWindowを参照しづらい場面でsetTimeout()とかsetInterval()とか書けるようにするライブラリ。
  • namespace.jsm:JavaScriptコードモジュール同士で名前空間を共有できるようにするライブラリ。同じJavaScriptコードモジュールの同じ内容のファイルを複数のアドオンでそれぞれ別々に持たせて、それぞれのメモリ空間も別々に確保される、というのがものすごくあほらしく思えたので作ってみた。
  • animationManager.js:JavaScriptでアニメーションさせる時に、複数アドオンで1つのタイマーを使い回して効率よくアニメーションさせるためのライブラリ。jstimer.jsmと併用すればJavaScriptコードモジュールとしても使える。
  • arrowScrollBoxScrollHelper.js:arrowscrollboxの中に1つ大きなボックスが入っていてその中に小さなボックスがたくさんある、という場面でarrowscrollboxのスクロール処理がぶっ壊れる問題を回避するライブラリ。
  • autoScroll.js:mousemoveまたはdragoverイベントに基づいてタブバーの自動スクロールを行うライブラリ。
  • bookmarkMultipleTabs.xul / bookmarkMultipleTabs_bookmarkPropertiesOverlay.xul:複数のタブをまとめて1つのブックマークフォルダにブックマークするためのライブラリ。Firefox本体の機能だと「全部のタブを保存」しかできないので。
  • boxObject.js:HTMLDocumentのgetBoxObjectFor()を使ってたコードを、手直しせずにそのままFirefox 3.5とかで動くようにするためのライブラリ。
  • extensibleToolbarButton.css / extensibleToolbarButton.xml / extensibleToolbarButton.xul:Firefox本体のツールバーボタンに後からappendChild()とかで内容を追加できるようにするためのライブラリ。
  • extensions.js:このエントリでメインの話題にしてる、「他のアドオンがインストールされているかどうかを調べる」「他のアドオンの設定ダイアログを開く」といった事を簡単に行えるようにするライブラリ。
  • operationHistory.js:何かの操作をアンドゥ・リドゥできるようにしたいときのための汎用的な履歴管理ライブラリ。詳しくは解説のエントリを参照してください。
  • prefs.js:FUEL/STEELが無いような古いバージョンも対象にする場合向けの、簡単に設定を読み書きできるようにするライブラリ。
  • stopRendering.js:ウィンドウ内の再描画を一旦止めて、その間に色々GUIをいじくる処理をして、最後にまとめて表示に反映させる、という事をやるためのライブラリ。画面がチラついてなんか気持ち悪い、という不快感を和らげるのが目的。Firefox 3.6以前とMinefieldとでは実装が中身の自動的に切り替わるけど、APIとしてはFirefoxのバージョンの違いを意識せずに使えるようになってる。
  • stringBundle.js:stringbundle要素をXULの方に埋め込まなくても、同じAPIでpropertiesファイルの中の文字列を読めるようにするAPI。
  • tabFx2Compatible.css / tabFx2Compatible.xml / tabFx2Compatible.xul:Firefox 3以降でtabbrowserのtabの中にappendChild()とかで要素を追加できるようにするためのライブラリ。Firefox 2以前のDOMツリー構造を再現して、中にいくつかのボックスを増やす。
  • UninstallationListener.js:アドオンのアンインストールが行われたタイミングで、変更した設定を自動的に元に戻すとかの後片付け的な処理をやるためのライブラリ。Minefieldでは多分動かなくなってる気がするので、後で直しときます。
エントリを編集します。

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