Home > Latest topics

Latest topics > デッサン至上主義ってどうよ

宣伝。日経LinuxにてLinuxの基礎?を紹介する漫画「シス管系女子」を連載させていただいています。 以下の特設サイトにて、単行本まんがでわかるLinux シス管系女子の試し読みが可能! シス管系女子って何!? - 「シス管系女子」特設サイト

デッサン至上主義ってどうよ - Feb 27, 2006

「ここのデッサンがおかしい」とか、僕も含めて素人絵描きはよく言う。そこにこだわりすぎるあまり、失敗を重ねてしまう人もいる。でもそれってそんなに重要なことなの?

デッサンとはこの場合、物の形や角度、位置、バランスなどを正確に2次元に投影・投射して描く力のことだ。それらがどこか破綻している場合、「デッサンがおかしい」と言われることになる。実際に「デッサンがおかしい絵」の例を見れば一目瞭然だろう。 (デッサンが狂った絵の例)

この絵では上半身が「上から見下ろした絵」、下半身が「下から見上げた絵」になっている。これほど範囲が広くて極端な「デッサンの狂い」はさすがにそうそう無いけれども、もっとミクロな部分、例えば全身に対する手首であるとか、顔全体に対する髪の毛であるとか、そういうレベルで「デッサンの狂い」は表出することが多いと思う。

こういった歪んだ絵になることを防ぐ方法は二つある。一つは、まずは全体を描いて、次に、おかしいところを見つけたらそこを片っ端から直していくという方法。もう一つは、消失点や補助線を取って製図的アプローチで「作図」すること。ただ、どちらにしても「躍動感に欠ける絵」になりやすいのが欠点で、最も良いのはやはり、最初から最後まで一発で描きながら破綻のない絵を描くことだ。そのためにはいわゆる「デッサン力」を磨くほか無い。

ところで、ある程度以上の「デッサン力」があるのなら、些末な「デッサンの狂い」に囚われて微修正を繰り返すことは、最初の絵の躍動感を、魅力を失わせる作業となってしまう。「デッサン」を過剰に重視する必要は必ずしも無いのではないか? というのが、ここで僕が言いたいことだ。そう考える根拠を以下に示そう。

カメラで撮影した写真や3DCGは、ある一点から物を眺めたときの様子を写実的に描いている。しかし、人間の目に映る物は必ずしも写実的とは限らない。なぜなら、人は目ではなく脳で物を見ているからだ。

人間の視界は広いが、解像度にはばらつきがある。視界の中心近くは高解像度でも、視界の辺縁になると低解像度で、しかも色すら判別できなかったりする。それでも視界一杯の鮮明な画像を見ているように感じられるのは、脳が自動的に絶えず目を動かして、視界の中心近くの高解像度な部分で得た画像をいくつも集めて、合成し、一枚の絵のように見せているからだ。我々は目に映った画ではなく、脳が合成した画を見ているのである。

一枚の絵としてあったものではなく、複数の画像を合成して最終出力を得ているので、その過程で主観に基づく改変がなされることもある。注目していた部分は大きく「見え」たり、注意を払っていなかった部分は小さく「見え」たり、あるいはスッポリ抜け落ちたり、といった具合だ。人間がいつも見ている世界は、写実的な世界ではなく、主観に基づいて改変された世界なのである。

だから我々にとって、「正確無比なパース」「歪みの全くない絵」は、むしろ不自然にすら見えることもあるのだ。

「GUNDAM FIX」という画集がある。ガンダムの一部作品のメカデザインや、バンダイのプラモデルの開発用画稿を手がけている、カトキハジメのCG作品集だ。GUNDAM FIXは基本的に背景には写真を使い、その中にガンダムを描くことで、あたかも現実の世界にガンダムがいるかのように見せる、「現実の物体」としてガンダムを描くというコンセプトのシリーズである。

写真の中に違和感なく絵を埋め込むためには、「デッサン」に通常以上に気を遣う必要がある。写真を撮影したときのカメラの位置を無視したパースを付けたりすると、猛烈な違和感がそこに発生してしまう。写真の中に絵を自然にとけ込ませるためには、高い「デッサン力」が必要となる。

このシリーズは写真の上にいきなり絵を描くという方法で描かれているらしいのだが、その中に一点、3DCGを利用して描かれた作品がある。64ページの「Ζガンダム」だ。 (Ζガンダム 引用元:GUNDAM FIX POPULAR EDITION)

「なーんだ、写真の中に自然にとけ込ませるには、3DCGみたいにやっぱり正確無比な作図的手法しかないんじゃないか。」そう考えるのは早計だ。

「GUNDAM FIX TRANSITION+」に収録された「参考にしたCG」と「それを元に一から描かれた絵」を見てみると、両者はパーツのバランス、配置等が明らかに異なっていることが見て取れる。 ((株)ベックによる3DCG 引用元:TRANSITION+) (カトキハジメによるパース画 引用元:TRANSITION+) シールドやフライングアーマーの取り付け位置、テールスタビライザーの大きさなどが顕著だが、それ以外の部分にも差異がある。この絵には以下のようなコメントが付けられている。正確なパースというものと、画で見たときにそれらしいパースは一致しないのである

この辺りの事情に目を向けた上で、改めて「デッサン」のことを考えてみるのが、絵描きとしてはより望ましいのではないだろうか。

分類:, , 時刻:02:01 | Comments/Trackbacks (1) | Edit

Comments/Trackbacks

最強のパース本








(パースの前に覚える事に戻る)背景を描くのになぜパースなんかにここまで振り回されなければいけないのでしょうか?よーく考えてみてください。たかだか一枚の背景を描くためのテクニックの一つなのです。マンガを描くために必要な事のほんの一部分なのです....

Trackback from 画力向上ガイド - 絵心をアップしてイラストや漫画のレベルを上げよう at 2006/09/14 (Thu) 01:42:01

TrackBack ping me at


の末尾に2020年11月30日時点の日本の首相のファミリーネーム(ローマ字で回答)を繋げて下さい。例えば「noda」なら、「2006-02-27_dessin.trackbacknoda」です。これは機械的なトラックバックスパムを防止するための措置です。

Post a comment

writeback message: Ready to post a comment.

2020年11月30日時点の日本の首相のファミリーネーム(ひらがなで回答)

Powered by blosxom 2.0 + starter kit
Home

カテゴリ一覧

過去の記事

1999.2~2005.8

最近のコメント

最近のつぶやき