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電車男スタイリング・バイブル - Dec 22, 2005

Kammy+氏のレビューに乗っかってあれこれ書いてたけど、きちんと目を通してからでないと批判する資格は無いと言われるのも何なので、税込み999円出して買ってきましたよ電車男スタイリング・バイブルAmazon.co.jp)。

さて通読してみた感想はというと、概ね購入前の印象と同じだ。とはいえ、立ち読み段階で読んでいなかった部分については、想像していたよりも、対象読者である「現在オシャレでないが、オシャレになりたいと思っている人」に対して好意的なスタンスで書かれているようには思えた。少なくとも、悪く言おうとしてそう書いたわけではないのだろうということは何となく分かる。

ただ、この本のコンセプトを「電車男と呼ばれるような人も含めて、オシャレになりたい人に届けたい(A)。その人たちはこういう内容の本を求めているはずである(B)。」と2段階に分けて解釈すれば、Aから導かれたBの内容がAの実態に即していない、という感想については、通読する前後で変化はない。例えて言うなら、「熱意は分かるけれども、バットの振りどころが外れてるなあ、所々ではキャッチャーの頭をぶっ叩いてしまってたりもするなあ」といったところだろうか。

対象読者像から漏れた人にこそ届いてしまうタイトル

著者は本書について、「オシャレの仕方が分からないがオシャレになりたいと考えている、全ての男」を対象にするべく書いたものだと表明している。ナンパ師を目指している彼も、思い切って高校デビューしようとしている彼も、モデルを目指そうとしている彼も、彼女から「服のセンスが悪い。もっとかっこよくなって欲しい」と言われてしまった彼も、「ダサイ、キモイ」と毎日のように蔑まれている彼も、全てが本書の「対象読者」なのだという。

だが、これら「全ての対象読者」が皆同じ目線でファッションを捉えているとは言えない。他の人達は、オシャレに対して悪感情を抱いていないが、最後の彼だけは、オシャレに対して恐怖感すら抱いている

オシャレになるには服の店の店員なり美容師なりオシャレな人間に関わらなくてはならない。だが、彼を「ダサイ、キモイ」と蔑む人間は例外なくオシャレな人間だ(図) 自分を攻撃してきた人間の同類が多数潜む場所に、どうして身一つで特攻できようか?

彼のような人間の存在は、オシャレを楽しんでいる人の目には入らない。なぜなら、オシャレを楽しんでいる人達の生活圏に彼らは、自分を貶すオシャレ人がいるのではないかという恐怖故に近寄れないからだ。 (図)

オシャレを楽しんでいる人が自分の生活圏の中にいる限り、その人は、オシャレを恐れている者にナマで出会うことはあり得ない。本書の著者は、長くファッション業界で活躍してきたという元デザイナーだ。オシャレな人の集う真ん真ん中にいた人物だ。その著者が自分の視界に入る情報だけで――そこからあえて飛び出そうとせずにものを考えれば、それは当然、自分の生活圏の中だけで通用する理屈にしかならないのは、自明だ。 (図)

「電車男」はファッションの文脈においては、「オシャレな人から蔑まれている人」の代名詞と言ってもいい。それをタイトルに掲げる以上、タイトルで名指しされた層の人が本書に関心を持つのは当然だ。だが問題がある。このタイトルで名指しされた人達は、本書の対象読者層から漏れているのだ。

本書の著者に悪意はないのだろう。だが「オシャレになりたいと願う全ての人」を対象と考え、「電車男」の名をタイトルに掲げるのなら、「オシャレな人の生活圏」と「オシャレな人から蔑まれている人々の生活圏」の境界を踏み越える必要があった。その落ち度は否めない。

内容面

以上のような事情なので、本書の内容はあくまでオシャレな人々の生活圏の言葉で書かれている。僕はオシャレに疎い人間なので、本書の内容の良し悪しについて評価するのは非常に難しい。

そんな僕ではあるけれども、本書の内容が薄いということは分かる。例えば71ページにまず「スクラブ洗顔」は必須ですね。アブラギッシュでくすんだお肌を改善させないといけませんとあるが、このスクラブ洗顔とは一体何なのか、という情報が足りていない。「そのくらい自分で調べろ」と言われるだろうが、「そのくらい自分で調べよう」と思った人が情報を求めて手に取る本をこそ、本書の著者は想定していたのではないだろうか?

本書は想定読者のレベルが妙に高いように感じる。「本当にファッションのことが全く分からなくて、アキバ系と呼ばれるような外観をしている」人が、どこまでファッション用語を知らないのかがつかめていないのだろうか。大げさでなく、一つの用語につき一つ写真を用意して、「これが○○だ!」と鬼のように懇切丁寧に解説するべきだったろう。54・55ページは特にそれが顕著で、「どういうものがテーラードジャケットで、どういうものがヘンリーネックで、どういうものがハイネックなのか」まるで分からない。

思うに、「全ての人を対象に」と考えたことが原因なのではないだろうか? 「漠然としたユーザ像」を掲げるのは、実用性重視のコンテンツを作る上での御法度だ。具体的に「誰に」そのコンテンツを役立てて欲しいのかをイメージしなければ、一般論を軽く撫でるだけに終わってしまうし、言葉遣いも、その「誰か」ではなく、「自分が」分かる言葉にしかならない。

ただ、上記の感想は表紙のこれ一冊で「アキバ系」から「モテ系」に変身できる!というアオリ文句を受けてのものだ。これさえ真に受けなければ、本書は「それなりの値段で、それなりの内容の本」と感じられなくもないのではないかと思う。

まとめ

……なんか結局、この本、表紙とタイトルが全てを駄目にしたって気がする。

レビューとしては他の人によるものの方が考察が深くて興味深いと思うので、そっちを見てもらった方がよいだろう。え? じゃあ無駄に長々書くなよって? まあそれも、ここまで関わってしまった義理というものですよ……

余談:変身予告?

とまあ色々と思うところがあるのだけれども、Kammy+氏のレビューに寄せられたコメントの中の中に「ユニクロや無印(無印良品、MUJI)でオシャレにコーディネートしてみやがれ!」みたいなものがあって、著者の方が「大阪まで来れるもんならやってやろうじゃんか!」と反応し、そこでどういうワケか「じゃ大阪在住のPiroたんをコーディネートすれば?」と軽く個人情報の漏洩を食らったので、せっかくだから「僕はやってもいいっすよ?」と特攻してみたら、なんかホントに僕をコーディネートしてお手頃価格で変身させちゃうよ祭りが発生してしまった模様。

日がなパソコンの画面に向かってだらしなく口を半開きにして時々声にならない含み笑いを洩らしたり(←IRCでウケたとき)、半日物も食わずにキーボードを叩いてプログラムを書いたり、童貞の妄想力大爆発で2週間全力を投じて20ページほどのエロマンガを描いたり、人間失格の烙印をいつ押されてもおかしくない僕が、どこをどう間違えたのか、元ファッションデザイナーにして筋金入りのファッションオタクを自認される著者の方の手で変身って、何このあり得ない展開。

……祭りの結果は追って沙汰しよう。とりあえず当面の仕事は、冬コミでのエロ同人誌頒布な!(駄目杉)

分類:レビュー・感想 > 本, , , , , , , , 時刻:03:52 | Comments/Trackbacks (1) | Edit

Comments/Trackbacks

うわあ

ごめんなさい遅ればせながら今この祭り展開を知りました。
おいしいじゃないですk!

Commented by ナルカミ at 2005/12/26 (Mon) 00:47:38

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