Mar 23, 2007

Microsoftと海賊版とネットワーク効果

海賊版の利点において、Microsoftが「Windowsを違法コピーして使っているユーザは今後はMicrosoft製品を買ってくれるかもしれないから」海賊版には意義があるという風な話が書かれているけれども、これはもうちょっと話を進めると、ネットワーク効果の話になると思う。

僕がMicrosoftのWordを使うと、僕は他の人から送られてくるWord製文書を読めるようになる。まだWordを持っていないある会社にとっては、Wordを使えば僕や僕と文書のやりとりをしている人達の仲間の輪に加われるようになり、Wordを使うメリットが大きくなって、Wordを導入したいと考える動機が強まる。Wordを使う人が増えれば増えるほど、Wordを導入することによって得られるメリットが大きくなっていく。……という正のスパイラルを、一般に「ネットワーク効果」と呼ぶ。

Windowsの違法コピーは、Microsoftにとっては、コピーされた分のWindowsの数だけのライセンス収入を減じるものではあるけれども、しかしながら同時に、そのライセンス分だけシェアは増えてくれる。短期的には金という収入を得られないけれども、長期的に見れば、その人がWindowsを使い続ければ使い続けるほど、そしてWindowsに依存した生活を送るようになればなるほど、周囲の他の人もWindowsでなければ仕事が回らなくなってきてしまう。正規・非正規ひっくるめてユーザ数が増えていくことによって、Windowsの使用率がほぼ100%という世の中に近づいていき、Microsoftの支配力はより盤石な物になっていく。……というネットワーク効果が働いたからこそ、Microsoftは今の地位を手に入れられたのではないか、と考えるのは穿った見方すぎるだろうか?

Adobe製品も同じようにしてデファクトスタンダードの地位を築いたんじゃないだろうか、という気がする。昔はAdobeのインストラクター自身が講習会なんかで製品版のPhotoshopの違法コピーをインストールしてばらまいて回って行ってた、という話をいつだったかMacユーザの人に聞いたことがある。それ以外にも、Photoshop Elementsなどの廉価ツールが出てくるよりも前の同人界隈で、特に中高生が使っていたPhotoshopの、いったい何割が正規版だっただろうか。や、僕はウルトラキッド→Fanfare Photographerという流れだったんすけどね。

実際のところ、単体で利用することだけ考えれば、僕ら素人が普通に使うような用途においては、WindowsでもMacでもLinuxでも(特に事務では、OOoがある現在においては)全然優劣がないし、Adobe IllustratorだろうとCorel Drawだろうと(Adobeに買収されたけど)Macromedia Fireworksだろうと良かったのかもしれない。ただ一点、それを使えば既存の利用者グループのネットワークに参加できるということだけが、ものすごく大きな価値をその製品に与えているのかもしれない。

「みんながフォトショ使ってるからぼくもフォトショ使う~」という単純な動機は、単純でありながら、結構馬鹿にできないよ、という話なのでした。

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