Nov 08, 2008

音楽

Perfumeの新曲「Dream Fighter」のPVを見ていて思ったこと。

王道進行の時に思い知らされたけど、自分には音楽の才能とか「正しい」審美眼とかそういう物がない。だから「イイ曲」と感じるのはそれが「客観的にイイ曲だから」ではなくてあくまで「自分にとって主観的にイイ曲と感じられるから」でしかなくて、それはつまり「自分に快楽を与えてくれる音楽だから」でしかなくて、つまり「イイ曲だろうが悪い曲だろうが、快楽を与えてくれさえするなら何だって構わない」わけで、だから僕が「イイ曲」と感じる曲というのはきっと「音楽というものが分からない糞大衆の快楽中枢を刺激するために書かれた、ただの工業製品」に過ぎないのだと思う。

ハリウッド映画もそう。ハリウッドでは、いくつかパラメータを与えてやればそれだけで大衆の快感原則にぴったりはまる脚本のテンプレートが生成されるという風なツールがあるという。最初の30分で主要人物と状況を説明して問題を提起し、真ん中くらいで1回問題を解決して、後半でさらに大きな問題をもう1度提起して、ラスト10分で全部を解決し、最後の5分は観客がスッキリして家に帰れるようにクールダウンさせる。という風な黄金のパターン。

チャイニーズレストランシンドロームというものも昔はあったそうですね。味の素さえ入れときゃいい、ということでビックリするくらいの味の素をぶち込んでたもんだから、中華料理を食べて「旨い旨い」言ってた人達が後で頭痛に悩まされたとか何とか。

料理といえば、ドクタークラレのケミカルクッキングという動画も有名ですね。食品添加物だけで美味なジュースを作ってしまったり、安い肉に何とかいう薬品を塗りたくったり油を注入したりして霜降りステーキ肉を人工的に作ってしまったり、安い米を炊く時に何とかいう薬品を混ぜたら粒が立っててツヤツヤな銀シャリになったり、エリンギに松茸の臭いの元を振りかけて焼いて松茸を作ったり。これらは別に特別な話ではなくて、世に出回ってる安い食べ物はそうして作られている……そしてそれを僕らは「旨い旨い」と言って食べてる。

で、専門家の人らが「名作だ」と言ってるものを見てみたら、主観的には糞つまらんかったりするわけですよ。薄味、素材の味、奇抜な味だったりするわけですよ。全然美味しいと思えない。それでも「専門家がそう言うんだからこれは名作に違いない」と無理矢理思い込もうとして、でも「素直な感性」=「大量にぶち込まれた食品添加物が無いとおいしいと感じられない鈍感な感性」ではやっぱりつまらないとしか思えなくて、「この『名作』をつまらないとしか感じられない自分がダメなんだ」と自分を責めたりする。あるいは、「専門家がどう言ってるかなんか関係ねえ。つまらんもんはつまらん!」と素直に言う人に対して「俺がこんだけ悩んでも理解できない『名作』を、貴様ごときが貶すんじゃねえ!!」と、もはや信者となって盲目的に崇め奉り、それに異を唱える者を攻撃する。

もう、疲れたよ……

そんな感じで「作られた感動」にまんまと乗せられてしまうことしかできないから、僕はもう、客観的に「良い音楽」とか「良い映画」とかいうものを求めることは、諦めたい。アイドルマスターやマクロスFやPerfumeのCDをいくつも買ったのは、それを客観的に名曲だと思ったからではなく、腐った舌で腐った耳で「これを聴いてても特に不快な感じはしなかった」という理由で選んだからだ。

あるいは、そういう「お祭り」だったからなのかもしれない。お祭りなら、何でも許される。露天のショボい売り物が、祭りの場ではとても魅力的に見える。ショボい売り物すらも「祭り」を構成する不可欠な要素であって、それはむしろショボいからこそ良い。

だからもう最近では、レビューというものを書くのすらも億劫になってしまった。「これがすごいイイ!!」「はいはい良かったね。それはお前が、お前や他の多くの人間が共通して持つ脳の回路を刺激するように狙って作られた物に反応してるに過ぎないんだよ。お前がレビューを書こうが書くまいが、それは売れるんだよ。お前が選んだ時点で、それはもう末端の大衆にまで行き届いてるって事なんだよ。お前が今更良し悪しを語る意味なんか無いんだよ。真っ先にその作品を知って良し悪しを語って人の考えを変える、アルファブロガーだのファッションリーダーだのの、真似事をしたいんだったら、無意味にも程があるよ。」

客観的な良し悪しを考えると、辛いことにしかならない。「感性を磨く」でも「自分の一言が業界全部を動かすような大物になる」でもなく、「考えない」。それが一番楽ではある。

音楽の分からない人間が音楽の分かる人間のフリをしちゃいけないし、味の分からない人間が味の分かる人間のフリをしちゃいけないってことです。批評家の才能も無いくせに批評家のフリをしちゃいけないってことです。

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