Jan 31, 2009

コミケに行く人が自費出版ビジネスに引っかけられた、それが悲しい

出版日記|夢とウツツの狭間にまに

共同出版とか自費出版とかの話のリンク元を辿った中に、文芸社(自費出版ビジネスで悪評が多い会社の一つ)で自費出版した人のブログがあった。断片的に語られた情報によると、以下のような感じだったそうだ。

  • 出版は2008年6月で、ごく最近の出来事。
  • 賞に応募して、落選したが、後日「自費出版してみないか?」という連絡が来た。
  • 「プロデビュー、ではない」「契約書店の店頭に一定期間だけ置かれる」「お金がかなりかかる」「この出版で著者自身が儲かる見込みは無い(が、次のステップに繋げられるかもしれない)」という説明は、担当者からあった。
  • 部数は不明(著者の元に40部、最低でも配本先27店舗に2部ずつ回ったようなので、100部以上と思われる)部数は合計で1000部、ページ数103ページ、費用は120万円ほど。

これまでに色々な所で「自費出版はここがインチキ」と指摘されているポイントのいくつかについては、担当者は事実を一応は話していたようだ。ただ、「今回の出版では儲からない。が、次のチャンスに繋がる可能性はある。そのための投資として出そう。」という風に口説いたのは、いただけない。作家としての「次」に……ましてや、「プロ」になんてまず繋がらないのに。

悲しいのは、この人がコミケに何度か一般参加していたらしいということだ。コミケ会場にも小説を置いているサークルはたくさんあるし、「同人誌で」「まずはコミケなり文学フリマなりに出展側で参加する」という所から始めてみることもできたはずなのに……何故、そちらには目を向けなかったんだろう? 何故、飛びついてしまったんだろう? 何故、一足飛びに結果を手に入れようとしてしまったんだろう? とても、やるせない。

前のエントリのコメント欄に、「マンガの場合は同人誌という選択肢があることが比較的知られているから、割が合わない自費出版ビジネスには引っかかりにくいんじゃないだろうか。そういう選択肢の存在(とその実態)を知ることができない人達が、引っかけられてしまうんじゃないだろうか。」という風な事を書いたけど。同人誌という選択肢があり、同人誌即売会の会場の空気とはどういう物か、そこで一体何ができるのかを知っていたはずの人が、引っかかってしまった。コミックマーケットは彼に、作り手として参加する価値を伝えられなかったのか。

参考リンク:

他人事のように書いたけど……自分だって騙されるかもしれない、ひょっとしたら現在進行形で騙されてるかもしれない。モデリング講座の例もある。たまたま僕が今、声優養成学校とかゲーム制作専門学校とか自費出版とかの暴露話・裏話・告発話に関心があって、それらについてだけは情報を集めているから、こう言えているだけで……それ意外の情報弱者な分野については、分からない。

追記。

「インチキじゃないごく普通のビジネスじゃん」と言ってる人がいた。同じ事を、一時期話題になった株式会社ウェディングなどのデート商法(「将来彼女ができた時のために」とおだてて、美人女性の販売員に接客させて「やがて訪れるかもしれないその時」のイメージを疑似体験させ、判断力を鈍らせて「今必要でない」高額アクセサリを売りつけるやり方)に対しても言うんだろうか。

確かに、この程度では詐欺にはあたらないだろう。「あなたが勝手に勘違いしただけでしょ? 可能性は低いけど、って最初に言ったし、あなたもそれで納得したんでしょ? 本当は『こいつは見る目が無いからこう言ってるけど、俺はこれを足がかりにして大成功して勝ち組になれるって信じてる! 周囲の奴ら全部見返してやる! でも今は謙遜しておこう』って思ってたのかもしれない、本当は『織り込んで』なんていないのに見栄で『織り込み済みですから』って言っただけかも知れないけど、こうして契約書が残ってるんだから『織り込んだ』って世間は見なすんですよ?」って、厳しい人には言われるだろう。

極端な話、本人が気付かないままで満足したままなら問題ない、とも言える。ホメオパシー、新興宗教……こういうのはいくらでも世の中にある。消え去らないということは、やっぱり、「それでも」っていうニーズが常にあるってことだ。ニーズがあるならそれに応える、それは確かにある意味で「普通の商売」だ。「そのニーズに応えていいのかどうか?」っていうことを、抜きにさえすれば。

最初のリンク先の人は、今、少なからず後悔しているようだ。それが全てを物語ってる。

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