Aug 26, 2009

同人活動は採算が取れなくてもよい(採算取れた方が長続きするけど)

商売ならそれなりに厳しい - Weblog

前に書いたエントリに言及されたのだけれども、ピントのずれたことをおっしゃっているなあと思った。商売は生活の糧を得るための手段だけれども、同人活動(趣味)はそれ自体が目的なのだから、商売の理屈で同人活動の良い悪いを語っても意味がない。

極端な話をすれば、頒布価格は0円でも構わないし、あるいは「金を払うから見てくれ」といういわばマイナスの頒布価格だってアリっちゃアリだ。

実際、同人誌即売会の会場に行けば無料頒布のコピー誌がよくある。今回のもえじら組の頒布物だって、頒布価格は200円にしてたけど今計算してみたら1冊あたり金銭的には208円かかってて、作る手間を加えれば赤字どころの問題じゃない。それでも僕は「これに200円より高い値段は付けられないなあ」「200円でだったら人に見てもらえるなあ」と思ったのでこの頒布価格にした。

商売でだって無料の物をばらまくだろ、って言うかもだけど、それは将来の金銭的利益のための投資でしょ。同人は「消費」だから。

そういえば以前に詐欺まがいの自費出版ビジネスに言及した時にも、似たようなことを書いた覚えがある。

言ってみれば、同人は究極的には「金持ちの道楽」だ。それを金持ちじゃない僕のような普通の人間がやるから、なるべく長く楽しく続けるために赤字を少なくすることを考える必要が出てくるだけであって。金持ちがやるんだったら、そんな事気にする必要も無い。

前のエントリで言及した「3部しか売れなかった」の人も、作る部数を10部とかそれくらいのごく少部数にとどめて(=印刷製本のコストが跳ね上がるので1冊当たりの原価が数百円、下手したら1000円を超える)、且つ、赤字が出ることを厭わずに「買い手が見た時の、内容から判断される適正価格」で頒布していれば、「96冊(コミケット準備会に提出する見本誌1冊を除いた残り)の在庫を目の当たりにする精神的なダメージ」を被ることを避けられたんじゃないのか? そして次の作品作りへ繋げられたんじゃないのか? ということを僕は思うわけですよ。

さとうメメ子氏のコメントにはこうあった。

同人において「売れない」辛さっていうのは金銭面のものじゃなく、自分や自分の作品が受け入れられなかったっていう、自己承認欲求が満たされない辛さだから商いの辛さとは似て非なると思うよ。

10冊作って適正価格で頒布して全部捌けたら、赤字であってもそれは9人から承認されたって事。でも、100冊作って3冊しか売れなかったら、それは96人から拒絶された(相手にされなかった)って事。「そんな内容じゃ買う気しないな」なのか「その値段は分不相応に高すぎるわ」なのかは分からないけれども、とにかく、在庫の山とは可視化された拒絶そのものだ。僕はそういう風に拒絶が可視化されるのが辛い。その辛さを味わわなくて済むようにすることが、同人活動を長続きさせるひとつのコツだと僕は思ってる。ということを前のエントリで僕は言いたかったんだと思うよ。うん。(←後付けもいいとこだ)

幸いにも今はネットで無料に限りなく近いコストで作品を発表できる。ブクマや拍手を集めることができれば、商業的価値のない作品しか作れない人間でも、自己承認欲求を満たせる。pixivなんかはまさにそういうシステムを備えてる。そんなこの時代にそんな人が敢えてカネと手間をかけて同人誌を作るというのは、同人誌を作る事・本という形になった物を人に届ける事・同人誌即売会に参加する事自体が目的なのでない限り、全然オススメできない。逆に言うと、商業的価値のない作家がこの時代に敢えて「同人誌」を作るというのは、「同人誌を作る事」「同人誌即売会でそれを頒布する事」自体が目的であり採算なんかハナから度外視であるとでも考えてなきゃとてもやってらんない、贅沢な道楽なわけです。

エントリを編集します。

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