パンタグラフキーボード「TK-P09FPBK」レビュー

「アーチ型だから、チルトさせても全高が高くならず、狭いキーボード置き場にも容易に置ける」という理由だけで選んだキーボードのTK-09FPBK(ELECOM)ですが、ちょっと使ってみて色々と気付いたことがありますので、文書としてまとめておこうと思います。

困ったところ

キーがあるはずの所に無い?!

実際に文章を売っていて気付いたのですが、カーソルキーがアーチの手前にあるということは、キーボード全体で一番低い所にキーがあるということで、今までのキーボードと同じ感覚でカーソルキーに指を伸ばすと思いきりスカッてしまうのですね。

まあ、これは使ってるうちになれるかもしれませんが。

ファンクションキーが謎配置

言われるまで気付かなかったのですが、ファンクションキーがF1〜F4/F5〜F8/F9〜F12という4つごとの区切りではなく、F1〜F3/F4〜F6/F7〜F9/F10〜F12という3つ区切りになっています。これはちょっといただけません。他のキーボードと違和感ありすぎです。フルキーボードで109キーだと書いてあったから安心して買ったのに、まさかこんなところに落とし穴があったとは……

しかしどうやら最近はこのようなファンクションキーの配置のキーボードも増えてきているようですね。トホホホ。今後はこれがスタンダードになっていくのか……?

タイプ感が全然変わらんじゃないか!

全キーにパンタグラフを採用しているので「キートップのどこを押してもまっすぐ沈み込む」というのがウリになっているようですが、普通のメンブレンキーボードだって英字キーのような小さなキーならどこを押しても大抵まっすぐに沈むので、この点においては、この特徴の恩恵は大して意味がないという感じです。

まあ確かに感触的には「柔らかいキー」という感じで、売り文句の「ノートパソコンと同じキータッチ」というのもあながち嘘ではないのですが。

むしろパンタグラフは機構が複雑な分、壊れやすくて値段が高いというデメリットばかりが増えたという気が……

色がシルバーとブラックしかないのかよ!

せめてホワイトを用意して欲しかったです。シルバーの配色なんて、なんだか下品で使う気が失せます(暴言)。

つまり、正直言ってこの買い物はほとんど失敗ということですか……

よかったところ

ああ、でも、いいこともひとつだけあります。それはタイピングがものすごく楽なところ。

何故疲れない?

何故タイピングが楽なのか。理由の一つは、キーボードの手前がものすごく低い(薄い)ことです。前の物と比べて1センチは低いです。(比較写真)

前まで使っていたキーボードのように設置面との段差が大きいキーボードでは、手首を浮かせ続ければ疲れますし、かといって手首を設置面につければ手首を無理な方向に曲げ続けることになってこれもまた疲れます。この段差をなくして手が疲れないようにする道具がパームレストというわけです。しかし、このTK-P09FPのように段差がほとんどなければ、パームレストなんてハナから不要です。

また、アーチ状のカーブは自然に置いた手にフィットします。僕のようにダラダラとしたスタイルでキーボードを操作する場合、普通の凹面キーボードと違って手首をほとんど持ち上げなくても良いので、これもまた疲れを軽減するのに一役買っていると思われます。

パンタグラフの本当の恩恵

前述の「薄さ」の理由はパンタグラフにあります。 (模式図) 普通のメンブレンキーボードでは、キーを押すとキーの下にある部品がまっすぐ沈み込むようになっていますので、当然、下に空きスペースが必要になります。しかしパンタグラフでは下に空きスペースが要りません。つまり、キーボードをより薄くできます。ノートPCなどでは、これに加えて薄型キートップを採用することで、さらにキーボード全体を薄くしています。(参考:ダイヤテックのパンタグラフキーボードについての解説

普通のメンブレンキーボードは、「厚いキートップ」と「厚い基盤」の組み合わせなので、設置面との段差の極めて大きいキーボードとなります。それに対して、パンタグラフキーボードはキーボード全体を薄くしやすいのが特徴ですから、それを突き詰めて、多くの場合は「薄いキートップ」と「薄い基板」を組み合わせます。TK-P09FPのような「厚いキートップ」は、一見すると、パンタグラフの最大の利点を殺してしまう矛盾したチョイスのようにも思えます。

しかし、「厚いキートップ」と「背の高いパンタグラフによる深めのキーストローク」で一般的なキーボードに近い外観・触り心地を維持しつつ、パンタグラフ採用によって基盤の厚みを薄く抑えているのだと考えれば、これは「利点を殺している」のではなく、「利点を別の形で活かしている」のだと言えるのではないでしょうか。

余談ですが、僕はノートパソコンなどの薄いキートップのパンタグラフキーボードはあまり好きではありません。ダイヤテックのパンタグラフキーボードについての解説のアニメーションを見ると分かりますが、キートップが薄いと打鍵時に隣のキーのキートップより下まで沈み込んでしまうので、爪に隣のキートップが引っかかってしまうからです。(下手をすると、キートップをはじき飛ばして壊してしまうことすらあります)

「ダラダラ使っても手が疲れない据え置き用フルキーボード」。これが、僕のTK-P09FPに対する評価のまとめです。……ン、実は結構、悪い買い物ではなかったのかもしれない。