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オタクという言葉が指す範囲の変化と、脱オタという言葉 - Jan 04, 2007

以前にも似たような事を書いている気がしますが。

「脱オタ」の政治的解釈において、republic1963さんは「脱オタク」という言葉の意味として、以下の2つがあるということをさらっと書いておられます。

  1. マンガ、アニメなどの趣味をやめること
  2. 垢抜けないダサい格好、どもりなど、対人コミュニケーションスキル的に劣っている状態を脱すること

しかし、ここから単純に「脱」という漢字とその意味を外して考えれば、そもそも「オタク」という言葉自体が

  1. マンガ、アニメなどを趣味として愛好する人、また、その趣味
  2. 垢抜けないダサい格好、どもりなど、対人コミュニケーションスキル的に劣っている人、また、その状態

という2つの意味を持っている(持つようになってきている)という事実が、自明の理として浮かびあがってきます。

もともと「オタク」は形容詞としてよりも名詞として誕生したものです。「マンガやアニメ、SF、鉄道などを趣味とする人」の集合Aと、「自分の趣味について深く探求する人」の集合Bとの、積集合A∩Bを指す言葉が「オタク」だったのだと言えるでしょう。

しかしながら現実的には、「マンガやアニメ、SF、鉄道などを趣味とする人」は、「自分の趣味について深く探求する人」の部分集合に過ぎなかったのではないでしょうか(A⊂B)。そもそもそれらを「趣味」として扱う事自体が、かつての時代の風潮として、いい歳をした大人としてあるまじき行為であって、「自分の趣味について深く探求し、他の事には興味を示さない人」くらいしか、それを「趣味」として考えることはなかったのではないでしょうか。

そして、これは僕の偏見かもしれませんが、積集合A∩Bは、「他の事にはあまり興味を示さない人」という集合Cにほぼ等しかったのではないでしょうか。

はい、つまりここまでのことから、こういうことが言えるようになりました。

  1. オタクは、マンガやアニメ、SF、鉄道などを趣味としている。(集合Aの性質)
  2. オタクは、自分の趣味について深く探求する。(集合Bの性質)
  3. オタクは、自分の趣味以外の事についてはあまり興味を示さない。(積集合A∩B=集合Cの性質)
  4. オタクは、ダサい場合や、対人コミュニケーションスキル的に劣っている場合がある。(Cの部分集合Dの性質)

ここで唐突に4番目の性質が登場しましたが、これは3から導かれる性質です。

ところがどういう訳か昨今では、「マンガやアニメ、SFなど」を「趣味」として扱う風潮が、「そういう人」以外の層にも広まっていった。その結果として、「マンガやアニメ、SF、鉄道などを趣味とする人」の集合は範囲を拡大し、「自分の趣味について深く探求する人」の部分集合ではなく、一部が重なりあう別個の集合にまで成長したのではないでしょうか。そしてそれにひきずられる形で「オタク」という言葉が指す範囲も、「マンガやアニメ、SF、鉄道などを趣味とする人」と「自分の趣味について深く探求する人」との積集合A∩Bではなく、和集合A∪Bへと広がっていった、とは考えられないでしょうか。

そして私達は「オタク」という言葉をその都度、この二つの集合の和集合であったり、積集合であったり、あるいはどちらか一方の集合のみを指す言葉として、文脈に応じて無意識のうちに使い分けているのではないでしょうか。

そして重要な事なのですが、この4の性質は、集合Dだけが持つものではありません。経度のアスペルガー症候群の人々も、いじめられっ子も、持つものです。平たく言えば「キモい人」という全く別の集合Eと、集合Dとは、この性質においてリンクしている。ここから、人々は、集合Eまでも「オタク」という言葉の指す範囲に含めてしまうようになったのではないでしょうか。

だからこそ、普通のオシャレで社交的な人が、マンガを読む自分自身を指して「俺ってオタクだから」と軽く言い放つと同時に、同じ人が、ダサくて対人コミュニケーションの下手な人を指して「あいつはオタクっぽくてキモい」と言えてしまう、そんな言葉じりだけを捉えれば矛盾しているようにも読めるような状況が発生しているのではないでしょうか。

平仮名の「おたく」と片仮名の「オタク」という二つの言葉の使い分けも、こういった混乱した状況を整理して文脈の違いを明確にするために設けられたルールであるように、僕には思えます(※ここでは、「追求する」という性質を持つのが「おたく」、そうでないのが「オタク」である、といった文脈)。

そう考える僕にとって、「オタクはキモい」という言説に対して「事実に反した偏見だ」と反論する様子は、不合理に思えます。いくらコミケ会場に集う人達を観察して「ダサくて対人コミュニケーションの下手な人」が全体において占める割合が少ないかを力説したところで、それは的外れな説明としか思えません。「オタクはキモい」という言葉の使い方の文脈において、この「オタク」という言葉が指すのは、上記で言えば集合DとEの部分のみでしかないのですから。

ただ一つ不幸なのは、追求する性質があるかどうかにフォーカスしての言葉の使い分けとして「おたく」と「オタク」があるのに対して、キモい性質があるかどうかにフォーカスした使い分けのための言葉、マンガやアニメの趣味であるかどうかにフォーカスした使い分けのための言葉、といったものが存在しないことでしょう。それ故に、時に、ある人がキモいことを表すために使われた「オタク」という言葉にマンガ・アニメ等を趣味とする「オタク」までもが反応するようなケース、あるいはその逆のケースが生じてしまっているのではないでしょうか。(強いて言うなら「アニオタ」「キモオタ」などがそうなり得るかもしれませんが、これらの語句は自然発生的に使われ始めたものなので明確な定義がないため、このような厳密な区別のために使い分ける言葉として採用するのには不適当であると思われます。)

繰り返しになりますが、このように考える限り、「オタクだからキモい」「キモい人をオタクと呼ぶ」は偏見でも何でもなく、厳然たる事実、というよりも下手をすれば「オタク」という言葉のある文脈での定義そのものが「キモいこと」である、とすら言わざるを得ないのです。

分類:モテ・非モテ・恋愛・自己承認, , 時刻:15:23 | Comments/Trackbacks (4) | Edit

Comments/Trackbacks

ああ、そうか

「オタク」という言葉自体が2種類の意味を持っているんですね。そこまではちょっと気がつきませんでした。確かにそうするとオタク=キモイというのは偏見でも何でもありませんね。
ただ、ひらがなおたくとカタカナオタクの使い分けは私はオタクの世代論というか、自分で同人活動とかしてアクティブなおたく(世代的には古い)をおたく、消費者のオタクをオタクというんだと思っていました。違ってたらすいません。

Commented by republic1963 at 2007/01/04 (Thu) 19:26:34

no title

すみません、「おたく」と「オタク」の話のあたりは、他と文脈が違いましたね。というわけで一部書き直し&追記しました。

Commented by Piro at 2007/01/04 (Thu) 20:47:16

no title

あ、すいません。わざわざ修正していただいて。
キモイことを表すのならオタクなんて使わずに(意味がいろいろありすぎる)キモイとすればいいのにとは私なんかは思うのですが、これが世の中で普通に流通しているという事は皆さんちゃんと使い分けていらっしゃるという事なんでしょうね・・・

Commented by republic1963 at 2007/01/04 (Thu) 23:51:59

no title

「キモイ」の部分集合が、この文脈における「オタク」なのだと思うのですが……条件付けがなかなか難しいですね。

Commented by Piro at 2007/01/05 (Fri) 00:19:04

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