GFFは塗装済完成品のアクションフィギュアシリーズですが、立体物ということでここに置いておきます。
GFFシリーズ開始当初の勢いはどこへやら。最近では生産量重視で塗りや組み付けの品質チェックが甘くなってきているのか、パッケージ写真の原型と実際の製品との出来のギャップが一段と激しくなってきてしまったように思えます。
2004年8月末に発売されたF91も、その出来は邪神像モッコス(ゼノサーガ2のおまけフィギュア)級とまで言われる始末です。とはいえ嘆くだけではどうしようもありませんので、自分はGFFは組み立て・基本塗装済みの素材であると割り切って手を加えていくという楽しみ方をしています。今回はF91を題材にして基本的なノウハウを一通りまとめてみましたので、参考にして頂ければ幸いです。
完成品アクションフィギュアのGFFでは、ブリスターパック状のパッケージなため、以下の3点をチェックしながら買うことができます(店頭に在庫がたくさんある場合の話ですが)。
しかし、これらの条件すべてを満たすものはなかなかありません。塗装がきれいでもパーツが曲がっていたり、顔がまっすぐ付いていても塗装が汚かったり。
改修を前提にする場合、とにかく塗装のきれいさだけに目を向けましょう。パーツのゆがみや接着ミスには敢えて目を瞑ります。なぜなら、それらは手作業で直せるからです。
また、スジ彫りの線の色のはみ出しも考慮しません。塗装のきれいさは、ガンダムの額のアンテナの赤が黄色の上にはみ出していないか、メカ部分のグレーが白い部分にはみ出していないか、マーキングが左右で激しくずれていないか、といった基本塗装とマーキングのみに絞ってチェックするのがベターです。なぜなら、これらの点は自分で直すのが非常に難しいからです。
ただ、接着ミスを直すのが難しいケースもあります(今回のF91の顔とか)。切削作業に自信のない方は、塗装の汚さには多少目を瞑っても接着の状態の良いものを選ぶ方が良いかもしれません。
フィギュアは顔が命です。顔が悪くてはおしまいです。少なくとも自分はそう思います。このF91も、顔のダメさが他のすべての良さを台無しにしてしまっていると言えます。
まずは製品の顔をご覧下さい。
(交差法で立体視できます)
こうして見ると、目が大きく、面長で、元々の大河原邦男・安彦良和デザインには非常によく似ています。
しかしこれはGUNDAM FIX FIGURATIONです。消費者はカトキ顔を望んでいるのです。小顔で細目がカトキ顔のチャームポイントです。
というわけで、これをどうにかして小顔かつ細目にしたいと思います。
まずはヘルメットと顔面とを切り離します。
同シリーズの他の製品だと、例えばウイングガンダムやGP04などは「中身の詰まった頭に顔面パーツが貼り付いている」という風な構造をしているので、比較的容易に顔面を外せます。しかしF91の場合は「中が空洞のヘルメット」と「顔と首が一体になったパーツ」という分割になっていますので、結構大変です。
また、多くの場合はパーツの接着がずれないようにと、双方に出っ張りと受け穴が設けられています(その上で接着がズレているのだから、品質管理が以下略)。これを残したまま取り外すのはほぼ不可能なので、頭の中身とヘルメットの隙間(パーツとパーツの接着ライン)のラインですっぱり切ってしまいましょう。
使う道具はカッターナイフ(普通のカッターナイフではなく、デザインナイフやオルファのNTブレードのように刃先が細く鋭くなっているもの)と細いマイナスドライバーです。
カッターで丁寧に切れ目を入れて、マイナスドライバーでぐいぐいと広げます。
首の基部の白いところは、どうせエリに隠れてほとんど見えなくなります。基部の白いところを気にすると作業が格段に難しくなりますので、ここは傷が付いても大丈夫と割り切って作業をするのがお勧めです。また、ここを先にリング状に切り取ってしまってから顔とヘルメットの切断作業を行い、終わった後でリング状パーツを付け直すという風にするのも良いでしょう。
とにかく、無理な方向に力を入れて指をケガしないようにご注意下さい。
三方向に切れ込みを入れてマイナスドライバーでぐりぐりやってもまだパーツが外れない場合、目の上とヘルメットの間の所も接着されている可能性があります。目の上の所からナイフの刃を入れ(ひさしを切らないように注意!)、こちらからもマイナスドライバーで切れ目を広げていきましょう。
苦労の末、やっと切り離せました。
このF91のようなパーツ構成の場合、ヘルメットと顔の両方に全く傷を付けずに切り離すのは大変困難です。うまくやる自信がない場合、フェイスオープン頭部と通常頭部をニコイチするのも良いかもしれません。使いたい顔の方はヘルメットを切り刻んで取り払い、いらない方の顔は彫刻刀やドリルなどで取り払ってヘルメットだけを残し、その二つを組み合わせて一つの頭にするという寸法です。
とにかく顔のみのパーツを取り出すことができたら、ここからが本番です。
目の上の部分をカッターナイフで少しずつ削っていき、ヘルメットと合わせたときに「帽子を目深にかぶる」時のような効果で目が細く見えるちょうど良いバランスにします。また、頬や顎のラインでマスクを削り、面長だった顔を短くしていきます。
どちらも、一気にやらずに、ヘルメットと合わせながらバランスを見て少しずつ削るのがポイントです。正しいバランスを見るためにも、小顔化するためにマスクを削って素材の白い色が出てきたところは、首のグレーに近い色(ガンダムマーカーのメカグレーがお勧め)で塗っておきます。顎の赤い部分も同様です(ガンダムマーカーのレッド、あるいは、コピックマーカーのR35あたりがお勧め)。
これで、製品状態の大河原・安彦顔から、カトキ顔にすることができました。
塗装にも凝ってみましょう。目のグリーン部分の上の端を少しだけ黒く塗ると、目をもっと引き締まった印象にできます。
元設定では目が六角になっていたので、それを参考にしてみました。
また、自分はヘルメット内部も暗い色で塗っています。
こうしておくと、低い視点から見上げたときに目の周辺が暗くなり、よりいっそう目が際だつという効果を得られるからです。
なお、すべての作業が終わった後にはヘルメットと頭内部パーツとを固定する必要があります。接着して固定する場合、PVC部品の接着には瞬間接着剤を使うのがお勧めです(PVCは瞬間接着剤で強固に接着できる)が……接着に失敗したらやり直しが難しいのと、もし顔にさらに手を加えたくなった時などにはがすのが大変というデメリットもあります。可能ならば、ヘルメットは着脱可能なままにしておくことをお勧めします。
ヘルメットの仮止めは、両面テープで固定するか、道具がある場合は真鍮線などでつなぐのがよいでしょう。僕は0.5mmの真鍮線(模型店の改造パーツ売り場などで手に入ります)を使って差し込み式にしてみました。
余談。大河原・安彦顔は面長だと書きましたが、それは設定画などの話で、映画で印象深い咆哮シーンなどの一連のカットや安彦氏によるイメージボードなどを見と、面長というよりもむしろ犬顔(フェイスオープン状態の顔にさらにマスクが被さって、マスクがかなり張り出してる)なんですよね。劇中イメージの立体化という意味では、むしろカトキ顔の方がそれに近い気がします。
上の写真を見てもわかりますが、切り離し作業の時にだいぶ無茶をしたので、アンテナがグニャグニャに曲がってしまっています。まるで黄色いイソギンチャク……でも心配はいりません。他のPVC部品のゆがみも含めて、これから一気に直してしまいます。
PVCという素材には、熱すると柔らかく、冷やすと固くなる性質があります(これを熱可塑性といいます)。この性質をうまく使えば、ゆがんだパーツも元通りのまっすぐな状態に直すことができます。
まずお湯を沸かします。これはただの水道水で結構です。
お湯が沸いたら、そのお湯の中にゆがんだパーツを投入します。鍋に直接入れると大変なことになるかもしれないという心配から、自分は別の器にお湯を移して作業しています。
湯にしばらくつけると、パーツが芯から柔らかくなります。ここでパーツを取り出して、正しい形になるよう指で押さえながら(柔らかくなった状態ですでに正しい形になっている場合は、押さえなくても大丈夫です)、冷水で一気に冷却しましょう。冷水といっても、真夏のぬるい水道水でもなければ、普通に水道水で大丈夫です。
こうすることで、ゆがんだ部品を正しい形に矯正できます。湯で温める代わりにヘアドライヤー等で暖める方法もありますが、保持するのが大変なのと、気を抜くとすぐに温度が急上昇してPVCが異常変形してしまうことがある(柔らかくなる、を通り越して、溶けてしまう)ので、あまりお勧めできません。
また、お湯でやる場合もドライヤーでやる場合も、この作業後にはパーツが若干収縮してしまいます。うっかりカッターで傷を付けてしまったりした部分などがあると、タコさんウィンナーのようにめくれ上がって固まってしまうので、暖める前に瞬間接着剤などで固めておきましょう。
F91の場合、アンテナ以外には、サイドスカートやふくらはぎの部品の端っこ、スラスターのフィンなどが、この方法で直しておくと良いポイントと言えます。
パーツのゆがみと接着ミスはここまでの工程で直せました。次は、塗装のリタッチです。
まず、スジ彫りを際だたせるために塗られている色(これを模型用語で「スミ入れ」と言います)がはみ出ている部分を直します。F91だと、マスクの「へ」の字などが顕著ですね。
これは、実は簡単に直すことができます。使うのはティッシュと模型用シンナーです(模型店の塗料売り場で手に入ります)。
ティッシュをよじってとがらせ(こよりのように細くしすぎると作業しにくいので、適度に太めにします)、シンナーをしみこませて、スミ入れがはみ出している部分をそっとぬぐいます。
シンナーはスミ入れ以外の塗装も溶かしてしまいますが、スミ入れの塗料は表面にごく薄く付いているだけなので、軽く手早く作業すればスミ入れの部分だけをきれいに取り去ることができます。
印刷されているマーキングもスミ入れの色同様に表面に薄く付いているだけなので、うっかりこするとマーキングがはがれてしまいます。マーキングに触れないように、スミ入れのはみ出しだけを丁寧にぬぐいましょう。
スミ入れがなされていない部分や、排気口で色が塗られていない部分などは、自分でスミ入れをすると良いでしょう。これにはガンダムマーカーのスミ入れ用を使うと便利です。はみ出したところは先ほどと同様にシンナーで拭き取れば大丈夫です。
スミ入れ以外の地色のはみ出しは、ガンダムマーカーの似た色で塗り足してやればよいでしょう。F91で色のはみ出しが特に目立つのは、足首の赤と白の境界線などです。
F91の本体色の白は、ガンダムマーカーのホワイトで塗ってはいけません。ガンダムマーカーのホワイトは実は薄いグレーなのに対し、F91の白は純白なので、塗った部分が浮いてしまいます。こういう場合は、模型用塗料のホワイトやアクリル絵の具のホワイトなどを使うと良いでしょう。
僕がよく使っているのは、ミルキーペンというものです。
ミルキーペンは写真の上に文字を書いたりするのによく使われるペンで、白の隠蔽力(下の色を覆い隠す強さ。水彩絵の具などのような隠蔽力が低いものは、下の色が透けて見えてしまう)が高いので重宝しています。文具店などで普通に手に入るので、持っておくと何かと便利ではないかと思います。
自分で塗った部分の色ははがれやすいので、心配な場合は最後につや消しクリアーコート(模型店の塗料売り場で缶スプレー状の物を買えます。「スーパークリヤー」は塗装を溶かしてしまうことがあるので、「クリアーコート」の方を選んでください)を吹き付けて保護しておくのも良いでしょう。
関節は干渉するところを削ると可動範囲が広がることがあります。F91の場合、サイドスカートの動きや膝の曲がる角度などが厳しいので、ポーズ付けに懲りたい場合は、手を入れておくと良いかもしれません。
脚をもっと大きく開けるようにしたい場合、モモのボールジョイントの受け穴にΖplusの改造と同様の加工を施すと効果的です。
可動範囲の拡大だけでは変化は微々たるものです。手間を惜しまないのであれば、関節を新たに加えてみるのも一つの手です。例えばガンヲタ氏のページでは、首に関節を加える改造が紹介されています。
まず首と顔を切り離します。
元からある首のボールジョイントは実はABS製で、首の中まで軸が埋まっているという構造になっています。この軸が通っているところまでを首、そこから上を頭という風に分割しましょう。
また、切り離すのと同時に、ボールジョイントの可動のための隙間を作っておきます。隙間がヘルメットに隠れるように、首側を切らずに頭側を切るのがポイントです。分割ラインと切除部分を模式図において赤で示しています。
首を切り離せたら、ボールジョイントを仕込みます。僕はイエローサブマリンの「関節技」という、ボールジョイントだけがたくさん入った改造パーツを使いました。
関節技の場合、ボール部分の直径は3mm、軸の直径は2.5mmでした。首側の軸の部分と、頭のそれぞれに同じ太さの穴をピンバイスやドリルで開け、ボールジョイントを仕込みました。(GFFの素材は弾力があるので、これだけで十分ボールジョイントを締め付けて保持してくれる。ただ、軸の方は接着しておくと良いかもしれない)頭の底面を斜めに切っておくと、顔を大きく上に向けられるようになります。このときは、ヘルメットの内側と首がぶつからないようにヘルメットの縁を少し削っておく必要があります。
また、腰にも関節を増やしてみました。まず腰のところで胴体を切断します。
胴体の腰部分はABS製の軸が中を通っているので、簡単には切断できません。エッチングソーや熱したカッターナイフなどでゆっくり根気よく切りましょう。
胴を腰と胸に切り離せたら、それぞれを加工します。
腰側は関節を動かしたときに干渉する部分をなるべく切り取っておきます。腰後ろの二つの穴のうち上の穴は取ってしまいました(胸の方に付いています)。
胸側も同様に干渉しそうなところを削ります。
腰の関節には、手元にあった関節技(首に使用したものと同じ。直径3mm。コトブキヤのボールジョイントではSサイズが相当)を埋め込みました。しかし小さなボールジョイントは可動範囲が狭いので、結果的にはあまり動かない関節になってしまいました。ここにはもっと直径の大きなオールジョイントを使うべきですね。