宣伝。日経LinuxにてLinuxの基礎?を紹介する漫画「シス管系女子」を連載させていただいています。
以下の特設サイトにて、単行本まんがでわかるLinux シス管系女子の試し読みが可能!
先日HDDを交換したばかりだった自宅サーバ機が、起動しなくなった。 起動してもすぐに電源が切れるという状態で、使い物にならない。
HDD以外のハードウェアは少なくとも5~6年は経過しているので、寿命と思って新調する事にした。 それに伴って、GitHubのService Hookなどの処理はVPSあたりに移動して、自宅に置くのは完全にストレージ専用の物にする事にした。
で、どうするかなんだけど、せっかくついこの間買ったばかりのHDDなのだから、ここが故障したわけでないのなら流用したい。 でも実質的にファイルサーバーとしてしか使わないんだから、そのためだけにPCを導入するというのも何だか勿体ない気がする。 あれ、そういえばラズパイって5000円くらいで買えてUSBで色々繋げられてLinuxが動くんだよね? じゃあこれに既存のHDD繋いでファイルサーバーにしたらいいんじゃね?
というわけで、漫画を連載させて頂いている日経Linux誌でずっと前から特集や連載がいっぱい載ってるにも関わらず完全にスルーしていたRaspberry Piを、今更ながら自分でも導入してみることにしました。
事前に仕入れた&知ってた情報によると、Raspberry PiというのはARMプロセッサを搭載して1ボードで完結してるLinuxマシンで、DebianベースのディストリビューションのRaspbianを使うのが通常の使い方らしいけど、今出回ってるRaspberry Pi 2 Model BではUbuntuの動作実績もあると。 であれば、今まで運用してたサーバ機(Ubuntu)と似た感じで使えるのではないか? という予想ができる。 もしうまくいかなくても、値段が値段だから大して痛くはないだろう。 というのが、導入を後押しした感じです。
必要な物は全部Amazonで買えた。
まず、何はなくとも本体。Ubuntuの動作実績があるのはRaspberry Pi 2 Model Bとのことなので、他と間違えないように気をつけないといけない。 Amazonで買える物は裸の基盤のままではなくケース付きなので、見苦しくなくて良いですね。
先日買ったHDDを外付けするための、ケースとアダプター。 SATAをUSB接続に変換して、HDD自体はほぼ裸で置くという感じ。
HDMIケーブル。 今までのサーバ機はD-sub 15pinでテレビに繋いでたけど、Raspberry Piには映像出力はHDMI端子しかないので。
マウスとキーボードは手元にある物を使った。 Raspberry Pi本体にはUSB端子が4つあるので、外付けHDDに2つ使って、キーボードとマウスで1つずつで埋まった。 (多分普段はSSHで操作するから、キーボードとマウスは必要な時だけ挿せばいいんだけど。)
Raspberry Pi本体にはmicroSDのスロットがあって、これがシステム領域のストレージになるんだけど、たまたま手元に32GBの物があったのでそれを使う事にした。 持ってないなら、これも買っておかないといけない。 後述するUbuntuのイメージを使うなら4GB以上の大きさは必要だそうです。
このあたりの手順は、他の用途でも共通して使えそうな気がするので、ここだけ読んでも有用かも。
有志の人が作った起動イメージがUbuntu Wikiで公開されているので、ダウンロードしてきて、Win32 Disk ImagerでmicroSDに書き込んだ。
書き込み完了した物をRaspberry Piに挿して電源を繋ぐと、ユーザ名がubuntu
、パスワードがubuntu
となっているアカウントが1つだけある状態のUbuntuが(デスクトップ環境無しで)起動する。
しばらくはこれで作業することになる。
ちなみに、何かやらかして起動不可能になってしまった時(/etc/fstab
にミスがあった、とか)は、最悪の場合ここからやり直すことになる。
僕は2回やり直しました。
起動できたら、SSHで接続できるようにしておくと後が楽。 上記のイメージにはOpenSSHサーバが入っていないので、自分でインストールする必要がある。
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install ssh
そうしたら、DHCPで割り当てられたこのサーバ自身のIPアドレスを調べておく。
$ ifconfig
DHCPで割り当てられたIPアドレスを確認したら、作業用の別環境から接続する。 そうすれば、その作業環境でインターネットを検索しつつ、紹介されていたコマンドラインをコピペで実行するのが容易になる。
前述のUbuntu Wikiのページに書かれている通りの手順で、パーティションを修正してmicroSDの全領域を使えるようにする。
$ sudo fdisk /dev/mmcblk0
2番目のパーティションを削除して、領域を作り直し(d, Enter, 2, Enter, n, Enter, p, Enter, 2, Enter, Enter, Enter, w, Enter)、 パーティションを編集したら、再起動する。
$ sudo reboot now
2番目のパーティションを最大サイズに拡張する。
$ sudo resize2fs /dev/mmcblk0p2
ここから先、ターミナルの操作でファイルを編集することが多いんだけど、nanoの操作よりもvimの操作の方が自分は慣れているので、vimをデフォルトのエディタにした。 ついでに、SSH越しの接続を中断したり複数タブを開いたりという感じの事ができるように、tmuxも入れた。
$ sudo apt-get install vim tmux
$ sudo update-alternatives --config editor
先のイメージで起動した環境は、必要最小限のソフトウェアしか入っておらず(OpenSSHサーバすら入ってない)、GUIで操作したかったら必要な物を別途入れないといけない。 先程、microSDのパーティションを編集して使える領域を広げたのは、それが理由。
ここから先は、技評のサイトのいくやさんの記事を参考に、日本語環境用の設定とデスクトップ環境のインストールを行う。
まず、既定の状態で設定されているファイルのダウンロード元は海外のサーバで、必要なファイル群のダウンロードにメチャクチャ時間がかかってしまうので、日本のミラーサーバからファイルをダウンロードするように変更する。 (自分が最初にやった時は、既定の状態だとファイルのダウンロードだけで5倍くらいは時間がかかった気がする)
$ sudo vim /etc/apt/sources.list
ファイルの内容を全削除して、以下のように書き換えてしまう。
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ trusty main restricted universe multiverse
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ trusty main restricted universe multiverse
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ trusty-security main restricted universe multiverse
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ trusty-security main restricted universe multiverse
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ trusty-updates restricted main multiverse universe
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ trusty-updates restricted main multiverse universe
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ trusty-backports restricted main multiverse universe
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ trusty-backports restricted main multiverse universe
そうしたら、早いとこ安全な状態にするために、インストール済みのパッケージを更新しておく。
$ sudo apt-get update && sudo apt-get upgrade
一息ついたら、Lubuntuのデスクトップ環境(LXDEを使っている。XfceのXubuntuより軽いそうなので。)をインストールする。
$ sudo apt-get install lubuntu-desktop xserver-xorg-video-fbturbo fonts-takao language-pack-ja language-pack-gnome-ja ibus-mozc dphys-swapfile
デスクトップ環境が入ったら、プロプライエタリのドライバ用の設定を作る。
$ sudo vim /etc/X11/xorg.conf
ファイルが無ければ新規に作成する。内容はいずれにせよ以下の通りにする。
Section "Device"
Identifier "Raspberry Pi FBDEV"
Driver "fbturbo"
Option "fbdev" "/dev/fb0"
Option "SwapbuffersWait" "true"
EndSection
日本語を既定の言語にする。
$ echo "Asia/Tokyo" | sudo tee /etc/timezone
$ sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive tzdata
$ sudo locale-gen ja_JP.UTF-8
$ sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive locales
$ echo "LANG=ja_JP.UTF-8" | sudo tee /etc/default/locale
日本語キーボードのレイアウトをデフォルトにする。
$ sudo vim /etc/default/keyboard
設定ファイルが開かれるので、以下のように変更する。
- XKBLAYOUT="us"
+ XKBLAYOUT="jp"
終わったら、ファイルを保存して、設定を更新する。
$ sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive keyboard-configuration
デスクトップ左下のボタンから開けるメニューを辿ってユーザーアカウントの管理画面を開き、普段使いの名前でユーザーを作る。
僕の場合はpiro
で作った。
ユーザの作成後は、詳細設定で適切な権限を与えた上で、グループの編集でsudo
とsambashare
グループに参加させる。
sudo
グループに入れるのを忘れると後で詰むので、これは絶対に忘れないように。
sudo
できるようになり、GUIから特権を必要とする操作をしようとしたらパスワードの入力を求められる事を確認できたら、初期ユーザだったubuntu
ユーザは削除しておく。
このあたりで、鍵認証を使っているのであれば公開鍵の登録をやっておく。 その後、sshdの設定を変えてパスワード認証を禁止しておく。
$ sudo vim /etc/ssh/sshd_config
以下の点だけ編集すれば、とりあえずはOK。
PermitRootLogin no # sshから直接rootでログインするのを禁止
PubkeyAuthentication yes # 鍵認証を有効化
PasswordAuthentication no # パスワード認証を無効化
設定の変更後は、デーモンを再起動しておくこと。
$ sudo service sshd restart
サーバ機として使うには、DHCPでIPアドレスが頻繁に変わられてしまうと不便なので、固定IPにしておく。
$ sudo vim /etc/network/interfaces
後半のeth0
の自動設定を定義している2行をコメントアウトし、以下の要領で設定を追加する(ネットワークが192.168.0.0
であると仮定)。
auto eth0
iface eth0 inet static
address 192.168.0.100
network 192.168.0.0
netmask 255.255.255.0
broadcast 192.168.0.255
gateway 192.168.0.1
dns-nameservers 192.168.0.1
ネットワークの新しい設定は、再起動したらそれ以後は反映される。
$ sudo reboot now
USB接続のHDDは、デスクトップ環境にログインするとマウントされるんだけど、ログインしてなくてもマウントされてて欲しい。ユーザのホームみたいにそれなりに多くのファイルが置かれる物は、外付けHDDの方に置いておきたいし。
まずはマウントポイントを作る。 バックアップの保存先のディスクと、普段使う方のディスクとで、2箇所マウントしたので2つ用意した。
$ sudo mkdir -p /mnt/main-external
$ sudo mkdir -p /mnt/backup-external
次に、外付けHDDを繋いで、各パーティションのUUIDを調べる。
$ sudo blkid
/dev/mmcblk0p1: SEC_TYPE="msdos" UUID="AB3E-B34D" TYPE="vfat"
/dev/mmcblk0p2: UUID="3aee2e0f-21f9-43c8-a4d3-e864f5d72d37" TYPE="ext4"
/dev/sda1: LABEL="backup-external" UUID="2fdef27e-8ad9-4f44-a46f-5799e5143489" TYPE="ext4"
/dev/sdb2: UUID="bc802910-f850-4685-90a4-9034d5d2d931" TYPE="ext4"
/dev/sdb3: UUID="d710499f-1ab6-4c63-98b7-c06bc08d501a" TYPE="swap"
/dev/sda1
がバックアップの保存先として使っていたディスクで、/dev/sdb2
は旧マシンのシステムのrootになってたパーティション。
ここで表示されたUUIDを参照しつつ、/etc/fstab
に自動マウント用の設定を書く。
$ sudo vim /etc/fstab
追記する内容は以下の要領。
UUID=bc802910-f850-4685-90a4-9034d5d2d931 /mnt/main-external ext4 defaults 0 0
UUID=2fdef27e-8ad9-4f44-a46f-5799e5143489 /mnt/backup-external ext4 defaults 0 0
指定が正しいか、実際にマウントして確認する。
$ sudo mount -a
僕はここでちゃんとマウントできない状態のまま再起動したせいで、起動中にエラーで止まってしまって、リカバリが効かなくてイメージの書き込みからやり直しになってしまった。
ここまでの手順の中で、ディスク上の専用パーティションではなく、ファイルをスワップ領域に使うようになっている。
が、microSDに頻繁に読み書きが行われるのはなんとなく寿命を縮めそうで怖い。 実測値的には半永久的に使えるレベルらしいので、今時こんな事怖がるのはおじいちゃんもいいとこなのかも知れないけど。
そういう気持ちの問題と、あとHDDの方にスワップ領域がそのまま残ってて、使わないのも勿体ないかなと思って、HDD上にあるスワップ領域を使うように設定し直すことにした。
$ sudo vim /etc/fstab
UUIDを参照しつつ、以下の内容を追記する。
UUID=d710499f-1ab6-4c63-98b7-c06bc08d501a swap swap defaults 0 0
ファイルへのスワップ領域の割り当てを無効にする。
$ sudo dphys-swapfile swapoff
$ sudo apt-get remove dphys-swapfile
旧環境は自分で普通にインストールしたUbuntuだったんだけど、Ubuntuのインストールウィザードの中で作成した初期ユーザはuidが1000
になる。
しかし、上記イメージからセットアップしたUbuntuではuid 1000
はubuntu
という名前のユーザに使われていて、新たに作成した普段使い用のユーザはuid 1001
となる。
なので、旧マシンのHDDをそのまま使いまわす場合、所有者がズレて認識されてしまう。
これを修正するために、以下の要領で所有者を再設定する。
$ wrongr=1000
$ correct=piro
$ sudo find /mnt/main-external -user $wrong | while read file; do echo "$file"; sudo chown $correct:$correct "$file"; done
xargs
とか使った方が高速なんだろうけど、ミスしてた時に途中で止めやすいかと思って、この時はこうした。
microSDの上に色々ファイルを増やしていくと、すぐにディスクが一杯になるのが目に見えている。 なので、基本的にファイルの保存先の実態は外付けのHDDとしておいて、適宜シンボリックリンクを作って使う、というスタイルを取ることにした。
$ for dir in "/home/piro" "/opt" "/var/shared"; do if [ -d $dir ]; then sudo mv $dir ${dir}_; fi; sudo ln -s /mnt/main-external$dir $dir; done
ホームも実態を外付けHDDに置いておく……というか元のシステムでホームにしていたディレクトリをそのまま使うようにするわけだけど、前項で述べた通り外付けHDD(=旧マシンで使っていたディスク)のファイルは所有者の情報がズレているので、前項の手順で所有者情報を直しておくのを忘れないように。
ただ、さすがにroot
のホームまで シンボリックリンクにするのは怖かったので、こちらはファイルをコピーするだけに留めた。
$ sudo su
# cp -r /mnt/main-external/root/* /root/
ファイル共有のために、Sambaをインストールする。
$ sudo apt-get install samba
Sambaユーザーを作成して、パスワードを設定しておく。
$ sudo smbpasswd -a piro
次に、共有したいフォルダの設定を行う。
普通のUbuntuだとGUIから設定できるんだけど、Lubuntuのデスクトップ環境だとそれができないようだったので、自分でsmb.conf
を編集した。
$ sudo vim /etc/samba/smb.conf
共有したいフォルダごとのセクションを以下の要領で書いた。
[shared]
path = /mnt/main-external/var/shared
guest ok = no
read only = no
writable = yes
create mask = 0666
directory mask = 0777
browseable = yes
valid users = @sambashare
[piro-shared]
path = /mnt/main-external/home/piro/shared
guest ok = no
read only = no
writable = yes
create mask = 0600
directory mask = 0700
browseable = yes
valid users = piro
僕はシンボリックリンクを多用するので、便利なように、[global]
セクションに以下を追記してシンボリックリンクを辿るようにした。
wide links = yes
unix extensions = no
旧環境では/backup
にマウントした外付けHDDにファイルのバックアップを保存するようにしてたので、新しい環境でも同じ事をやることにした。
まずは、Ubuntuの「バックアップ」の実態であるDeja Dupをインストールする。
$ sudo apt-get deja-dup
これはまだエントリを書いてなかったんだけど、Deja Dupを使ってシステム全体や複数ユーザのホームをまとめてバックアップするために、僕はroot
でDeja Dupを起動していた。
$ gksu deja-dup-preference
ここまでの過程で旧環境から/root
以下の内容を引き継いでいるので、きちんとファイルをコピーできていれば、バックアップ先の指定などがそのまま読み込まれる。
とりあえずテストとして、バックアップを実行してみた。
バックアップ対象(ホームや共有ディレクトリ)が今の環境ではシンボリックリンクになっているので、ちゃんとバックアップできるか心配だったんだけど、処理が進行中の時のステータス表示を見てみた限りでは、シンボリックリンクの先を辿ってバックアップしてくれているようだった。
→なんやかやで、Deja Dupではなくその後ろにいるduplicityを使うようにしようと実験中です。
ということで、Raspberry Piと旧マシンから引き継いだHDDを組み合わせてファイル共有サーバを立ててみました。
本物のNAS製品に比べると性能だったり使い勝手だったりの面でかなわないとは思うんだけど、普通のPCをサーバにするのに比べれば場所を取らないし静か(なにせRaspberry Piには電源やCPUクーラーのようなファンが無い)だし、クラウド上のVPSの上にあるデータの自動バックアップなんかもcronjobでできるし、チャレンジがてら皆さんもお試しになってみてはいかがでしょうか。
の末尾に2020年11月30日時点の日本の首相のファミリーネーム(ローマ字で回答)を繋げて下さい。例えば「noda」なら、「2015-07-04_raspberrypi-nas.trackbacknoda」です。これは機械的なトラックバックスパムを防止するための措置です。
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