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昔の自分の気持ちを忘れてしまった田舎弁士による恩の押し売り - Sep 16, 2005
金子氏のはてなダイアリーへのコメントに書いた話。
なぜ、非童貞は童貞に対して「童貞だからってどうということはないよ」なんて軽々しく言えるのか。童貞を捨てたくて捨てたくてたまらない童貞のときの気持ちをどうして忘れてしまうのか。
なぜ、大人は子供を頭ごなしに叱りつけるのか。子供の目線に立てないのか。
僕はこれは、パラダイムシフトが起こるからだと思っている。向こう側に行ってしまったら、もう二度とこっち側には帰ってこれないのだ、と。
プログラミングに例えれば、オブジェクト指向に慣れ親しんでしまった今、GOTO文を多用する手続き型の手法で自分の思うところを表現できなくなってしまった（表現するのが非常に困難になってしまった）、という感じで。
N88BASICを使ってGOTO文の使いかたで悩んでいて苛ついている過去の自分に、オブジェクト指向のことを教えても、きっと「わけわかんねーこと言ってんじゃねーよそもそも俺はこの言語で困ってんだよ他の言語になんて乗り換えたくねーよ」とキレることだろう。
こっちとしてはひたすら善意で「いやGOTOとか非効率的だしダメだよ、クラスとか作った方が絶対楽だって」とアドバイスしても、彼にとっては、今、彼に見えている世界が全てなのであって、それ以外の世界は存在しないも同じ、荒唐無稽な絵空事に等しい。彼が知りたいのは、外の世界に飛び出してワープするなんていう（彼にとって）SFじみた妄想の方法ではなく、彼が今いる世界のルールで目的を達成する（彼にとっての）現実的な方法なのだ。
彼の目線に合わせるためには、色々な知識を捨てなくてはならない。普通の人にはそれはとても難しい。それができる人が、「優れた教師」だ。そして、それに（良い塾に通わせたり、私立の進学校に通わせたり、といった風に）対価を払う人がいる程に特別な能力なのだから、誰もがその能力を有しているわけではないということも分かる。
だから、ぶっちゃけ、ただの素人に「なんで俺の目線に合わせて物を言わないんだ」とキレたって、しょうがないんだ。それは、ただの素人に家を建てさせて「なんでこんなに手抜き工事なんだ」と怒るようなものだ。
ただ、問題は、建築士の資格を持っていないのに家を建てようとする、教員免許を持っていないのに人に物を教えようとする、非モテの気持ちに完全に目線を合わせるという特殊な能力を有していないのに非モテにアドバイスしようとする、押しつけがましい素人が多いということだ。非モテの話題には、建築や教育のような免許制がないから、その人にそのことを語る資格があるのかないのか客観的に知る術が無い。だから僕みたいな連中が田舎弁士のくせして俺も俺もとこぞって一席ぶちたがるんだ。一席ぶつことで、話す資格のある人間なのだ、話せるだけの含蓄があるのだ、と自分を誇示したいんだ。
田舎弁士には、二つの道がある。懲りずに田舎弁士を続けるか、恥を知って口をつぐむか。僕は懲りずに書き続けている。ネットで公開日記なんか書いてる時点で、口をつぐむつもりなんて結局ないんだろう、僕らは。
追記@2005.9.17
脱非モテに伴う優位性の相対化と相対化に伴う優劣の再生産について。あるいは「モテる者は非モテ達に非モテ達はモテる者に何を言えるのか何を残すのか」にて言及アリ。
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