Home > Latest topics

Latest topics 近況報告

たまに18歳未満の人や心臓の弱い人にはお勧めできない情報が含まれることもあるかもしれない、甘くなくて酸っぱくてしょっぱいチラシの裏。RSSによる簡単な更新情報を利用したりすると、ハッピーになるかも知れませんしそうでないかも知れません。

萌えるふぉくす子さんだば子本制作プロジェクトの動向はもえじら組ブログで。

宣伝。日経LinuxにてLinuxの基礎?を紹介する漫画「シス管系女子」を連載させていただいています。 以下の特設サイトにて、単行本まんがでわかるLinux シス管系女子の試し読みが可能! シス管系女子って何!? - 「シス管系女子」特設サイト

Page 4/248: « 1 2 3 4 5 6 7 8 »

ツリー型タブでタブのツリー構造を高速に復元できるようにしたりPDFでも「自動でタブバーを隠す」できるようにしたりした - Dec 14, 2011

Tree Style Tab 0.13.2011121401で、長年の課題だった点に対する改善を入れてみた。現実逃避です。

まず1点、ツリーの復元にすごく時間がかかるという問題。

今まではSSTabRestoringイベントのタイミングでツリー構造を復元してたんだけど、これだとタブがちょっとずつしか復元されないせいでツリーもちょっとずつしか復元されない→ツリー全体が復元されるまで場合によってはものすごく時間がかかる、という問題があった。でもSSTabRestoringイベントが発行される前の時点ではnsISessionStoreのsetTabValue()で保存した情報を取り出せないからどうしようもなくて、ずっと放置してた。

これが最近のバージョンのFirefoxではSSTabRestoringより前でもセッションに保存された情報を取り出せるようになってたので、じゃあってんで、真っ先にツリー構造だけ復元するようにしたという次第。

前のエントリではnsIObserverでメッセージを拾うとか何とか書いたけど、結局その方法はやめた。最終的にどうやったのか、という事を簡単に書いておく。

おさらいとして、Firefoxが備えているセッション復元機能は以下のような流れで処理を行っている。

  1. SSWindowStateBusyイベントが発行される。
  2. 必要な数のタブを開く。タブを使い回す時は、今読み込んでいるタブの内容を破棄する。
  3. セッションの情報に基づいてタブを初期化する(表示・非表示の切り替え、タイトルの設定など)。この時SSTabRestoringイベントが発行される。
  4. セッションの情報に基づいて履歴を復元する。この時SSTabRestoredイベントが発行される。

問題は、1と2の間に割り込んで、2で使い回される事になるタブのツリー構造を一旦リセットしないといけないけど、そのためのAPIが無い(どのタブが使い回される事になるのか、を知る方法が全く無い)っていう事。

  • __SS_tabStillLoadingとか__SS_restoreStateとかを見たら分かるんじゃないか?と思ったけど、これを使っても、「Bar Tab相当の機能」によって待機状態のままになってるタブと、これからセッションが復元されようとしている状態のタブとを見分けられない。
  • プロパティアクセスやDOMノードへの属性値の設定を監視するのはコストが大きそうだし、他のアドオンやFirefoxの機能を壊してしまいそう。
  • タブを使い回す直前にnsISHistoryのPurgeHistory()というメソッドが呼ばれていて、nsISHistoryにはnsISHistoryListenerインターフェースを備えたリスナを登録できるようだったので、これを使えばいけるか!?と思ったけど、nsISHistoryには1個しかリスナを登録できなくてアドオンでリスナを追加するとFirefox自身が追加したリスナが失われてしまって、全体的に動作がぶっ壊れてしまった。
  • nsSessionStoreはJavaScriptコードモジュールではなくXPCOMコンポーネントなので、プロトタイプやシングルトンとして動作してるインスタンスに対してフックを仕掛ける事もできない。

とかなんとかああでもないこうでもないといじり回していて、もう最後の手段という事で、<browser/>stop()を置き換えてフラグを立てたり下ろしたりするようにした。nsSessionStoreは1と2の間で、使い回す予定のタブをプライベートメソッドのrestoreHistoryPrecursor()に渡してそれらの内容を初期化するという事をやってて、その中で必ずstop()を呼んでいたので、stop()が呼ばれた時にJavaScriptのスタックを辿って、restoreHistoryPrecursor()から呼ばれていたら「このタブはこれから使い回されようとしている」というフラグを立てるようにしたrestoreHistoryPrecursor()は他の場所からは絶対に呼ばれないから、これが一番確実だと思う。

そうすると、

  1. SSWindowStateBusyイベントを拾って、「これからツリーが復元されようとしている」ことを検知して、「ツリーが復元されようとしている」フラグを立てる。
  2. restoreHistoryPrecursor()のタイミングで、「これからセッション情報が復元されようとしているタブ」にフラグが立つ。
  3. 復元されるタブの1個目に対してSSTabRestoringイベントが発行される。この時、「ツリーが復元されようとしている」フラグが立っていたら、2でフラグが立てられたタブだけを収集してきてツリー構造を復元する。
  4. 2つ目以降のタブのSSTabRestoringイベントが発行される。以下略。

という具合にして、個々のタブのセッションの復元完了を待たずに一気にツリー構造を復元できるようになるわけです。

この改善は、Firefoxのセッション復元APIを使ってるSession Managerとの併用でもちゃんと活かされる。Tab Mix Plusみたいに独自のオレオレセッション復元機能を持っててそれを使ってる環境は……知らない。多分動かないだろうけど対応する気力無い(そもそも、僕自身Session Managerは使っててもTMPは使ってない)。

次、2点目。タブで開いてる内容がPDFだったりFlashだったりすると「タブバーを自動で隠す」が機能しないという問題。

ポインタの位置に応じて自動的にタブバーを表示したり隠したりという事をやるためのベタなやりかたは、Firefoxのウィンドウ(XULドキュメント)でキャプチャリングフェーズでmousemoveイベントを監視するという方法だ。ポインタがタブバーの近くに来たらタブバーを表示して、コンテンツ領域の上に載ったら(タブバーから離れたら)タブバーを隠す、という感じ。AutoHideというアドオンはそうしてたし、ツリー型タブもそうしてる。

ところが、何度か中野さんが解説されてた気がするけど、Firefoxはプラグイン(FlashとかPDFとか)の描画領域の上で発生したクリックやら何やらのイベントは全部プラグインが握りつぶすようになってる。そのため、普通にmousemoveイベントを監視してても、プラグインの領域にポインタが載ってる間は何もイベントが発生しない。ポインタがタブバーから離れた事はmouseout等で検知できても、コンテンツ領域に載ったという事を検知する事ができない。

(ちなみに、ツリー型タブではタブバーの「近く」にポインタがあるときはタブバーを隠さないで、ちょっと離れたら初めてタブバーを隠す、という風にしている。そうしないと、タブバーの幅を変えるためにスプリッタをドラッグしようとしても、ちょっとポインタがぶれただけですぐタブバーが隠れてしまってストレスが溜まってしょうがない。なので、mousemoveでポインタの座標を監視するという方法に頼らざるを得ないのです。)

同じ理由で、マウスジェスチャ系のアドオンもプラグインがあるとジェスチャがまともに動かないという事が結構あるみたい。そこをどうにかしようとすると、CとかC++とかでコンポーネントを作ってもっとプラットフォーム寄りの所でポインタの位置を拾うしかなくて、「プラグインの上でもジェスチャできる」が売りのMonkey Gesturesは実際そのようにしてたと思う。

ネイティブなコンポーネントを書くというのは嫌っていうかそんな手間かけたくなかったので代わりにどうやったかっていうと、すごく単純な話で、background: rgba(0,0,0,0.01) !important; -moz-appearance: none !important;にした<panel/>をコンテンツ領域の上に重ねて開くようにした。たったそれだけ。そうするとXULの要素の上だから普通にmousemoveイベントが発生して、ポインタの正確な位置を取れるようになった。

透明なポップアップを表示する時には、セオリーというか注意点がいくつかある。

  • background: transparent !important;で完全な透明にしてはだめ。完全に透明な<panel/>は何のイベントも拾ってくれない。なので、rgba(0,0,0,0.01)(ものすごく薄い半透明の黒)のように、何かとにかく色を付けておく必要がある。
  • Linuxでは半透明のpanelは表示できない(Geckoが対応してなくて、ピクセルごとに完全透明か完全不透明かのどっちかしかできない)。なので、background: transparent !important;で完全透明にしつつborderでちょっとだけ線を表示して、<panel/>の中に不透明な部分を作ってやる。
    • ただ、それだとcompiz等ではpanelに影ができてしまってかっこわるい。不透明な部分が矩形になってると影ができて、矩形以外の形だと影ができないっぽい(ロケーションバーのfaviconの所に出るドアハンガーUIに影が表示されないのもこれが理由)ので、<panel/>の左右にだけ枠線を付けるという風にして、領域が矩形にならないようにする。

透明な<panel/>を使う方法にはいくつか弊害があって、今まではそれを気にして採用を避けてた。が、今回のアップデートではそれぞれ「できる所までは頑張ろう、どうしても無理な所はもう知らん」というスタンスで割り切ることにした。

  • ユーザがコンテンツ領域の中をクリックしたつもりで<panel/>がクリックされてしまうと、「クリックしたのに何も起こらない」という状況が発生してしまう。
    • →タブの内容がプラグインで表示されてるかどうかを見て、必要な時だけ透明な<panel/>を使うようにした。タブバーが隠れて<panel/>が閉じられた後でなら普通にクリックできるので、タブバーが隠れる前にコンテンツ領域をクリックするようなせっかちな人の事はもう諦める事にした。
  • 透明な<panel/>以外の部分(ツールバーボタンなど)をクリックすると、環境によっては、透明な<panel/>が閉じられるだけで終わってしまう。
    • popupBoxObject.setConsumeRollupEvent(Ci.nsIPopupBoxObject.ROLLUP_NO_CONSUME)ある程度は抑制できるっぽい(Ubuntu 10.04LTSのcompizだと、Firefoxのウィンドウの中に対してはclick-throughが通用するようになったが、他のアプリケーションのウィンドウをいきなりクリックした時は相変わらずだった)。どうしても駄目な時については、もう、諦める。

なんで方針を変えた(安全に完璧に提供できない弊害の多い方法は使いたくない→弊害があっても使う)かというと、「同じ要望がもう数えるのも嫌になるくらいしょっちゅう来ててウンザリしたから」っていうのが最大の理由だ。

いや、つまり「PDFとか表示してるとタブバーが隠れてくれない」問題は、割と誰でもぶち当たってしまう問題なわけですよ。それに対して、実際に調べたわけではないけど、多分上に挙げたような「弊害」が実際に致命的な問題になるような人は多分そんなに多くないだろうと思うわけですよ。どっちの人を大事にしたらいいかっていう事で天秤にかけて、前者を救う事にした。という話なのです。

そういう意味では、TMPの独自のセッション復元機能を使ってる人を見捨てるってどうなんっていう言い方もあるだろうけど、あんなもん(TMP独自のセッション復元機能)ぶっちゃけ捨てていいですよ。Firefox本体のセッション復元機能に勝ってる部分、ありますか? ないですよね? いやよく調べないまま書いてるんだけどさ。

Compatibility problem with Tab Mix Plus - Feb 07, 2011

I got a mail from Tab Mix Plus developers team. So I updated compatibility codes in Tree Style Tab for the latest dev-build of TMP. After that I got another mail again, and he said that the latest TST doesn't work with the last public release of TMP. This is the reply:

Hello, onemen.

First, I really think TMP helps very huge people from poor tabbed browsing features of Firefox itself. It is a great thing. So, I hope my addons including TST work with TMP correctly.

However, I'm afraid I can't support both versions of TMP (the latest dev-build and the last public version) anymore, because I believe that they are too different to support simple hacks. I already removed many codes based on the latest dev-build of TMP by this commit, so I can't believe TST works with the last public release only with minor changes only about symbols (function names). And, if I restore codes for old TMP, then both old and latest TMP will override them again and re-introduce many unexpected problems. That is too terrible.

To be honest, it was very painful to read dynamic-eval codes in TMP and TST itself because they are many tree-times eval-ed codes (defined by TMP => overridden by TST => overridden by TMP again). So I don't want to do such a painful work again for the last public release...

Yes, I apologize that I'm also using many eval() to hack TMP. So I believe that both addons TMP and TST should remove all eval-based hacks for each other and make themselves plaggable via their public APIs. TST already defines some public APIs. I agree that they are too less APIs to make compatible TMP with TST now. I'll add new APIs to do it if they are really required for high compatibility. I'll make efforts to keep stable those APIs in future versions. I don't know what APIs are required for TMP, so, I hope to listen your idea.

On the other hand, I hope that TMP provides some public (and stable) APIs for addon developers, like:

  • An API to add extra properties for TabmixSessionData
  • Custom DOM events for TMP specific features

If there is any public document already, could you tell me the URI?

regards,

I can't believe that I keep the current method (eval-based dirty hacks) to make them compatible.

XBLとアドオンとDOMツリーの切り貼りとツールバーカスタマイズの危険な関係 - Jan 23, 2011

ツリー型タブPersonal Ttitlebarと併用できるようにするためにずいぶん骨を折った。

Firefox 4のタブバーの仕様

Firefox 4ではタブバーとtabbrowser要素がDOMツリー的に切り離されて、tabs要素がカスタマイズ可能なtoolbarの中に置かれるようになった。この話は以前に勉強会で発表した(この資料の日付を見て「うわーもうあれから1年近く経とうとしてるのか、Firefox 4の開発どんだけ遅れとんねん」とか「そんな昔のことを『ちょっと前に発表しましたが』とか書こうと思ってしまった自分ってどないやねん」とか思ったのですがそれはどうでもいいです)んだけど、その時こんな話をした。

  • 今まではorientとordinalやdirectionで簡単にタブバーの位置を右や左や下には動かせたが、それができなくなった。
  • Tab Mix Plusは、タブバーのtabs要素をDOMツリーから一旦切り離してtabbrowser要素の下にappendChildで再挿入することで、タブバーの位置を変えるようにしたようだ。
  • ツリー型タブでは、DOMツリーは触らずに、toolbarの表示位置をposition:fixedで動的に位置を合わせることで擬似的にタブバーの位置を変えたように見せかける方法を採ることにした。
    • この話をしたら会場から失笑の渦が巻き起こった。「無茶しよるなー」的な。

その時も特には説明しなかったんだけど、何故僕はそうまでしてDOMツリーの変更を避けたがるのか。今回Perosnal Titlebarとの衝突を解決するためにここで散々悩まされたので、改めてここに記しておこうと思う。

Firefoxのツールバーと絡むアドオンを作る時に注意する事

Firefoxのツールバーの各機能は、ユーザが任意にドラッグ&ドロップで並べ替えたりアイテムを追加・削除したりできるようになっている。この時内部的には当然だけどDOMツリーが動的に切り貼りされている。

この時、ツールバーから削除されたボタンに対してDOMのイベントを監視し続けるのは変だし、そのボタンへの参照をアドオンの中の変数でずっと持ったままだと、いわゆるメモリリークが起こることもある。なので、僕はツールバーにボタンを追加するアドオンについては、ツールバーのカスタマイズに入る前に一旦「ボタンの終了処理」を行って、ツールバーのカスタマイズが終わった時点でもう一度「ボタンの初期化処理」を走らせるようにしていることが多い。

ちなみに、こういう事をするためにDOMイベントが使えればいいんだけど、Firefox 3.6までのバージョンではそんな配慮は全然無い不親切な設計なので、カスタマイズを開始する関数の BrowserCustomizeToolbar() とかカスタマイズ終了時に呼ばれる BrowserToolboxCustomizeDone() とかツールボックスの customizeDone() メソッドだとかを上書きして処理を挟み込んでやらないといけなかった。Minefieldではいつの頃からか beforecustomization とか aftercustomization とか customizationchange とかのイベントが発行されるようになったので、こういうダーティなことはやらなくても済むようになった。もっと早くからこうしてくれていればよかったのに……いやそれは今はどうでもいい。

自分で追加したツールバーのボタンについてそういう事が必要なのと同様に、例えば標準のWeb検索バーの挙動を変更するセカンドサーチのような「既存のツールバーボタンの挙動を変える物」も、同じような事をしないといけない。特に、既存のボタンにXBLで追加されたメソッドを後から上書きしているようなケースでは。セカンドサーチの例で言うと、こういう感じだ。

  • セカンドサーチはWeb検索バーにXBLで追加されたメソッド handleSearchCommand() を上書きする。
    • このメソッドが上書きされていることを前提として、他の機能も成り立っている。
  • Web検索バーがDOMツリーから一旦取り除かれ、再度挿入されると、その時点でXBLの定義が再度適用される。そのためセカンドサーチが上書きしたはずの handleSearchCommand() メソッドも元に戻ってしまう
    • Web検索バーがツールバーからパレットに移動されなくてもそうなる。何故なら、ツールバーのカスタマイズ時にはすべてのカスタマイズ可能な要素が一旦DOMツリーから取り除かれた後、toolbarpaletteitem という要素にappendChild()されて、元の要素があった位置に挿入される、という処理が行われるから。
    • ツールバーのカスタマイズを完了する時はこの逆の操作が行われる。つまり、すべての toolbarpaletteitem 要素が削除されて、代わりに、その中にあった要素が toolbarpaletteitem があった位置に再挿入される。

Firefox 4でタブバーがツールバーに移動された時も、これと同じ事が起こるんじゃないかとちょっと思ってたけど、実際はそうならなかった。Firefoxの他の部分が「タブがある事」を前提に設計されているせいで、タブバーをツールバーカスタマイズでツールバー上から完全に取り除いたら、他の機能が色々と破綻してしまうから……という事なんだと思われる。なので今のMinefieldでは、タブバーのtabs要素はメニューバーと同様に「ツールバーの中にあるけど動かせない要素」という扱いになっている。

そういう事情で、Firefoxもタブバーまわりのコードは「DOMツリーが動的に編集されても動作するような堅牢に設計」にするための注意は払われていないし、他のタブ周りのアドオンもそういう設計にはなっていない事が多い。というか、そういうアドオンがあまりに多いからFirefox本体の側でもタブバーをカスタマイズで移動できないようにせざるを得なかったって事なんじゃないかと思うんだけど。

Personal Titlebarを使った時に起こる事

Personal Titlebarというアドオンは、Firefox 4の(Windowsでの)タイトルバーに任意のツールバー用のボタンを配置できるようにするという物だ。それだけでなく、タブバーすらカスタマイズで移動できるようにしてしまう。それが問題だった。

前述した通り、Firefoxのツールバーはカスタマイズのモードに入っただけでもDOMツリーが切り貼りされる。Personal Titlebarがあるとタブバーのtabs要素もそういう処理の対象になる。ツールバーのカスタマイズに入るだけでもタブバーの各プロパティが初期化されてしまい、ツリー型タブが上書きしたメソッドも元に戻ってしまって、表示がグチャグチャにぶっ壊れる。これが衝突の真相だった。

これを回避するためには、単純に考えれば「ツールバーのカスタマイズに入る前にすべてを元に戻し、カスタマイズが終わったら再度初期化する」ということをやればいいということになる。でも話はそう簡単にはいかなかった。

beforecustomization のタイミングでできる事には限りがある

beforecustomizationイベントは、普通の同期型のイベントとして発行されていて、このイベントを捕捉したすべてのイベントリスナの中で処理が終わった後、ツールバーカスタマイズのための本来の処理が始まるようになっている。「このアドオンの終了処理は無事に終わりました。ツールバーのカスタマイズを初めても大丈夫ですよ。」という事を、アドオンの側が明示的に通知する手段はない。単にイベントリスナの処理が終わったらその時点で「終了処理が終わった、もうカスタマイズを初めても大丈夫だ」と判断されるような単純な設計だ。

一方で、ツリー型タブはタブバーの表示を縦にしたり横にしたりとダイナミックな切り替えをする時に、タイマーを多用している。何故かというと、XULの属性値やCSSのプロパティを変更した後、そのイベントループ中では結果が適用されないままなので、現在のイベントループを一旦終了させた上で、setTimeout()で続きの処理を次のイベントループ内で行わないといけない、という場面が多いからだ。

なので、beforecustomization イベントを捕捉した時点でタブバーの「終了処理」を行おうとしても、現在のイベントループの中でできる事までしか終了処理を終わらせられない。中途半端な状態でツールバーのカスタマイズに突入してしまう事になるし、しかも、次のイベントループに回すための続きの処理がツールバーのカスタマイズに突入した後で走ってしまうから、もうあっちもこっちも色々前提が崩れててシッチャカメッチャカな事になる。

必要なのは「今のイベントループの中で終了処理を完結させる」「次のイベントループを待つ必要がある終了処理を行う」この矛盾した2つをどうにかして両立させる事だ。

DOMイベントが発行されるまで今のイベントループを強引に停止させる

結論から言うと、XPCOMのスレッドの機能を使えばできる。

doAndWaitDOMEvent : function TSTUtils_doAndWaitDOMEvent() {
  var type, target, delay, task;
  Array.slice(arguments).forEach(function(aArg) {
    switch(typeof aArg) {
      case 'string': type = aArg; break;
      case 'number': delay = aArg; break;
      case 'function': task = aArg; break;
      default: target = aArg; break;
    }
  });

  if (!target || !type) {
    if (task) task();
    return;
  }

  var done = false;
  var listener = function(aEvent) {
      setTimeout(function() {
        done = true;
      }, delay || 0);
      target.removeEventListener(type, listener, false);
    };

  if (task)
    setTimeout(function() {
      try {
        task();
      }
      catch(e) {
        dump(e+'\n');
        target.removeEventListener(type, listener, false);
        done = true;
      }
    }, 0);

  target.addEventListener(type, listener, false);

  var thread = Components
          .classes['@mozilla.org/thread-manager;1']
          .getService()
          .mainThread;
  while (!done)
  {
    thread.processNextEvent(true);
  }
},

こんなユーティリティメソッドを作った。DOMイベントターゲット、そのターゲットに到達するはずのDOMイベント名、別のイベントループで実行されなくてはならない処理を含む関数、を引数として受け取り、渡された関数を実行して、今のスレッドの処理を止める。指定されたDOMイベントが発火したら、今のスレッドを止めるための無限ループから抜ける。これで、beforecustomization イベントのタイミングで複雑で長い終了処理を実行できるようになった。

まとめ

Personal Titlebarというアドオン1つとの衝突を解消する事だけ考えるなら、タブバーだけは移動できないようにPersonal Titlebarのコードに対してさらに変更を加えてしまうという手もあった。ただ、それでは「既にPersonal Titlebarでタブバーの位置が変更されていた所にツリー型タブがインストールされた」という場合には意味がないし、そもそもFirefox本体の側がタブバーをカスタマイズで位置変更できるようにする可能性もある(Add-on SDKベースで作るアドオンなら互換性が担保されるから、ということでSDKベースでない既存のアドオンをバッサリ切り捨てる事になるような変更もFirefox本体に入れやすくなるから)。なので頑張ってみた。

ただ、こういう事が起こる原因になるから、自分が作るアドオンの中では極力DOMツリーはいじらないようにしたいとは、今も変わらず思ってる。高速化のために最上位のDOMツリーをゴッソリ入れ換えるのもNGだし、ましてや、WebページのbodyのinnnerHTMLを文字列として一括置換するなんてのは論外だ(そういう事をしても既存のイベントリスナに影響を与えないといった風に仕様でちゃんと定められていて実装もそうなっているのなら問題ない。仕様や実装がそう変わったんだったら高速化のためにそういう工夫を取り入れるのはむしろ奨励すべき事だとは思う)。

Firefox本体の側で行われた変更なら他のアドオンも追従するだろうけど、僕個人でこうして細々と開発しているアドオンのためにまで、わざわざ他のアドオン作者の人が頑張って対処してくれるとは思えない。僕だって、他の知らないアドオンのために事前に対処はできない。僕にできる事は、「自分が作る物については、他のアドオンに与える影響を小さくするようなるべく配慮する事」、ただそれしかない。

ツリー型タブとマルチプルタブハンドラのイベント周りのAPIをちょっと変えた - Jan 11, 2011

Tree Style TabMultiple Tab Handlerを更新した。

今回のアップデートでも例によってMinefield対応のための修正をちょっとずつ入れてるんだけど、その中で1つ、なかなか気付いてなくてハマってた所があった。それはカスタムイベントを使ってた部分。

DOM2 Eventsではこんな風にして任意のDOMイベントを発行できる。

var event = document.createEvent('Events');
event.initEvent('MyCustomEvent', true, false);
event.status = 'current status';
event.tab = tab;
gBrowser.dispatchEvent(event);

受け取る側はこれをaddEventListener()で登録したリスナで拾うようにすれば、各々のモジュールの結合度合いを弱められる。なので僕は自分のアドオンでも積極的にこれを使ってる。

が、これがMinefieldでは使えなくなってた。

多分Compartment(JavaScriptのメモリ空間をスクリプトのオリジンだったかウィンドウだったかごとに分ける機能)が入ったからだと思うんだけど、Chrome URLのスクリプトで上記の例のように追加した任意のプロパティを、JavaScriptコードモジュール側のイベントリスナで参照できなくなってた。上記の例だと、捕捉したイベントのevent.tabundefinedになってしまってて、こういうやり方で情報を引き渡してた部分がエラーになってしまってた。wrappedJSObjectundefinedなので、生のオブジェクトを辿る事もできなかった。

MDCにある任意のカスタムイベントを実装する方法の詳しい説明によると、XPIDLでインターフェースを定義してC++で実装を書いてという事をやれば、今までと完全に同じAPIで任意のイベントを発行できるようなんだけど、それはちょっと重たすぎてやる気になれない。

なので次善の策として、汎用のデータを受け渡すためのイベント型があればそれを使おうと思って検索したら、Firefox 3以降ではDataContainerEventとかMessageEventとかの型のイベントが利用可能になってたという事を知った(今更)。

渡すデータがJSON文字列化できる物なら、WebSocketで定義されてるMessageEventがいいっぽい。

var event = document.createEvent('MessageEvent');
event.initMessageEvent('MyCustomEvent', true, false,
  JSON.stringify({ status : 'current status',
                   tab : tab.getAttribute('id') }),
  '', '', null);
gBrowser.dispatchEvent(event);

受け取った側はJSON.parse(event.data)でデータを復元できる。

DOM要素とかも渡したいなら、nsIVariant型でデータを受け渡せるDataContainerEventを使うしか無さげ。

var event = document.createEvent('DataContainerEvent');
event.initEvent('MyCustomEvent', true, false);
event.setData('status', 'current status');
event.setData('tab', tab);
gBrowser.dispatchEvent(event);

受け取った側はevent.getData('tab')のようにしてデータを取得できる。

ということで、プロパティアクセスにしてた所は全部DataContainerEventのやり方を使うように直した。ただ、後方互換性のためにプロパティアクセスでも情報はセットしてあって、同じCompartmentのスクリプトからなら多分今まで通りのやり方でも情報を受け取れると思う。

あと、DataContainerEventの存在を知る前に、MDCのドキュメントに書いてあった「イベント名がnsDOMで始まってない物は任意の情報は受け渡せないよ」という部分を読んでイベント名を「nsDOMTreeStyleTab...」という感じに変えていて、実際これでちゃんと動くようになった部分もあったんだけど、結局DataContainerEventにするようにしたからこれは結果的には余計だったかもしれない……

新しいタブとかウィンドウとかで「戻る」を押しても戻れねえよムキーッとなる問題を解消するアドオン「親のタブに戻る(Back to Owner Tab)」をリリースしたよ - Jan 07, 2011

Back to Owner Tabというアドオンを作ってみた。

例えば初心者ユーザにはこういう事がありがちだろう。

  • ブラウザのウィンドウを常に最大化して使っている。
  • タブとかウィンドウとかよく分かってない。「戻る」ボタンを押せば1つ前のページに戻れる、という事は(教わったので)知っている。
  • リンクをクリックした結果新しいページが表示されたとして、それがただのページ遷移なのか、新しいタブで開かれたのか、新しいウィンドウで開かれたのか、違いがよく分かってない。
  • 新しいウィンドウで開かれたページを見終わって「元のページに戻ろう」と思って「戻る」ボタンをクリックするが、ボタンをクリックしても何も起こらない。

こういう場面で、「戻る」をクリックしたらとにかく元のタブなりウィンドウなりに戻るようにするのが、このアドオンだ。

だいたい、ウィンドウを最大化してたりタブを表示しないようにしてたりすると、「戻る」で戻れるのかそうでないのかすぐには分からないから、初心者でなくてもこういう物には意味があると思う。

Firefox 3.5以降では browser.tabs.selectOwnerOnClose が true で且つそのタブが「新しいフォアグラウンドのタブ」として開かれた時にだけ「このタブの親はこのタブですよ」という情報が保持される。また、JavaScriptではwindow.openerでオープン元のウィンドウを辿ることができる。このアドオンは、これらの情報を手がかりにして「親のタブ」を検索するようになってる(ツリー型タブがあるならツリーの構造から親のタブを検出する)。

確かタブブラウザ拡張にもこういう機能を含めてた気がするんだけど、それらを単機能の拡張機能として再実装した時に取りこぼしてた。その後、ツリー型タブにこの機能を含めてくれという要望が何回か来てたんだけど、今だったら browser.tabs.selectOwnerOnClose があるから別にツリー型タブに依存した機能にしなくてもいいよなーと思ったので、こうして今回新たに1つのアドオンとして作ってみたというわけ。

Add-on SDKは使ってないけどBootstrapped Extensionsの形にしてあるので、Minefieldでは再起動無しでインストールできる。昨年の発表では「Bootstrapped Extensionsでは『戻る』ボタンの挙動をオーバーライドするみたいな事はできない」と言ったけど、やってみたらできてしまった。あと、そのために使った方法がFirefox 3.6では動作しなくてちょっと悩んだんだけど、Firefox 3.6ではそもそも絶対に再起動が必要だから「変化を可逆的にする」事にこだわらなくてもいいので、そこは横着してダーティなやり方を使ってる。

なんとなく既出のような気もしたけど、「back owner」とかその辺の単語で検索してもそういう物を見つけられなかったので、じゃあ作るか……と思って作ってみた。既出だったら恥ずかしい。

ちなみに、似たような目的のアドオンでTab Historyという物もある。こちらは「新しいタブを開く時に、元のタブの『戻る』『進む』の履歴を引き継ぐようにする」というアプローチを取っている。僕もTab Historyを使ってたんだけど、せっかく作ったので、しばらくはBack to Owner Tabを使って様子を見てみようと思ってる。

ツリー型タブがCSSの!importantを使いすぎているせいで他のアドオンと衝突する(Tree Style Tab conflicts Tab Utilities, ColorfulTabs, and other tab-related addons because it uses too many "!important" rule in its CSS.) - Dec 18, 2010

Q

With BOTH Tree Style Tab AND Tab Utilities enabled at the same time, the ColorfulTabs extension makes no difference - no tabs get colored. I have reported this to the author of Tab Utilities since it has worked properly in all previous versions of Tab Utilities. But here's his answer:

TU hacks the ColorfulTabs code to reduce its use of "!important", but Tree Style Tab still uses "!important" for tab background-color. I may revert TU's changes, but IMO it's Tree Style Tab who behaves improperly. It uses too many unnecessary "!important" modifiers in CSS rules, which also leads to the conflict with TU for the pinned tabs' position.

Can you fix this please?

ツリー型タブTab Utilitiesが同時に有効になっている時、ColorfulTabsは何の変化ももたらしません──つまり、タブに色が付きません。Tab Utilitesの以前のバージョンは正しく動いていたため、私はこの件をTab Utilitiesの作者に連絡しました。しかし彼はこう言っています:

Tab Utilitiesは「!important」の使用を減らすようにColorfulTabsのコードに手を加えていますが、ツリー型タブはまだ多くの「!important」指定をタブの背景色に指定しています。私はTab Utilitiesに加えた変更を取り消すかもしれませんが、しかし私の考えでは、ツリー型タブのやり方の方が間違っています。ツリー型タブはあまりに多くの不必要な「!important」指定をCSSの中で使っており、これはTab Utilitiesの「ピン留めされたタブ」の配置を壊す原因にもなっています。

この件について修正してもらえませんか?

A

Those "!important" are surely required, because appearance of tabs can be modified by third-parties' theme. For example, if a theme defines black background with white text, then partially applied styles from TST possibly make lighter background with white text -- yes, it is very hard to be read. To avoid these cases, I decided to use "!important" rules. Actually I got some "bug reports" like this. If I remove those "!important", I'll get similar bug reports again -- I'm very sorry but I don't want that.

Instead, I made an option for "highly compatibile for other addons". See the configuration dialog of TST, "Appearance" panel. There is an option "Default (Specified by the Theme)" in built-in themes. If you choose the option, TST doesn't apply any "!important" rule for tabs. I believe that the option makes TST compatible with Tab Utilities and ColorfulTabs.

それらの「!important」指定は必要な物なのです。タブの外観がサードパーティ製のテーマによって変更される事があるのがその理由です。例えば、あるテーマが背景色を黒に、文字色を白に設定していた時、ツリー型タブのスタイル指定が部分的に適用されてしまうと、明るい背景色と白い文字の組み合わせになってしまうことがあります──これはとても読みにくいですよね。こういったケースの発生を防ぐために、私は「!important」指定を使う事を決めました。実際、私はそういう「バグ報告」を受け取った事があります。もしこれらの「!important」指定を削除したら、私は再びそういった報告を受け取る事になるでしょう──申し訳ありませんが、私はそれを望んでいません。

その代わりに、私は「他のアドオンとの互換性を高く保つ」選択肢を設けました。ツリー型タブの設定ダイアログの「外観」パネルを参照してください。ここでタブバーの表示スタイルとして「なし(テーマ本来の表示スタイル)」を選択すると、ツリー型タブは「!important」指定が付いたスタイル指定を適用しなくなります。これを選択する事で、ツリー型タブとTab UtilitiesやColorfulTabsの衝突は回避できるものと私は考えています。

タブをドメインごとにソートする機能が欲しい / Auto-sorting of tabs by domain (or other conditions). - Dec 08, 2010

Q

Could you add the option to Tree Style Tab or Multiple Tab Handler, to keep tabs with same domain/host in alphabetical order. In other words auto grouping by domain or host.

ツリー型タブまたはマルチプルタブハンドラに対して、同じドメインまたは同じホストのタブをアルファベット順で表示させる、というオプションを付けてもらえませんか? 言い換えるとつまり、ドメイン名やホスト名によるタブのグルーピングということです。

A

Group/Sort Tabs provides the feature, so try it please. However it doesn't work with my Tree Style Tab.

I have no plan to do it on the Tree Style Tab, because I believe that tree of tabs is a "visualized history of web browsing". In the concept, "tree of tabs" and "auto-sorting by domain" mix is like oil and water. (By the way Tab Kit provides both features, so it possibly become your favorite instead of TST.)

Group/Sort Tabsというアドオンがその機能を持っているので、試してみてください。しかし、このアドオンはツリー型タブとは併用できないようです。

私はタブのツリーを「ブラウズ履歴を視覚化した物」と考えていますので、ツリー型タブにこの機能を付ける予定はありません。このコンセプトにおいて「タブのツリー」と「ドメインによる自動的な並べ替え」は相性が悪いです。(ちなみにTab Kitはその両方の機能を提供します。ツリー型タブよりもそちらの方があなたにとって気に入るかもしれません。)

ツリー型タブとマルチプルタブハンドラとHTML5のドラッグ&ドロップ - Dec 02, 2010

Tree Style TabMultiple Tab Handlerのドラッグ&ドロップ周りのコードを色々書き直した。

Tab Utilitiesとの衝突

発端は、「Tab Utilitiesと一緒に使うとタブのドラッグ&ドロップが期待通りに動かない」という報告だった。しかし、「また衝突かよー」と思いながらメールの内容を読むと、想像していたのとはちょっと状況が違った。

僕はてっきり、Tab Utilitiesのイベント処理とツリー型タブのイベント処理がかちあって変な事になってるんだとばかり思ってたんだけど、そうではなくて、Tab Utilitiesが提供する「複数のタブを選択してまとめてドラッグ&ドロップする」機能で複数のタブを1つのタブの上にドロップしても、選択されていたタブのうち1つしかドロップ先のタブの子タブにならない、という状況だった。その人はすでにTab Utilitiesの作者にも問い合わせていたようで、Tab Utilitiesの作者の回答に「ツリー型タブにマルチプルタブハンドラのためのコードしか含まれていないのがそもそもの問題だ。ツリー型タブの方で修正してもらってくれ。」みたいなコメントがあったそうだ。

それでTab Utilitiesを見てみたら、確かに複数のタブを選択する機能があったんだけど、その時のタブの情報の受け渡しにHTML5のドラッグ&ドロップのイベント複数のデータの指定の仕組みが使われているようだった。

  • マルチプルタブハンドラを最初に作ったときはまだこんなAPIは無かった。
  • タブのドラッグ&ドロップの実装になるべく介入したくなかった。タブがドロップされた時に、そのタブが選択状態だったら、他の選択されているタブも一緒にドラッグされることが意図されていたと判断して、後から他のタブも追従して移動させる、という設計にしていた。

という事情があって、マルチプルタブハンドラではドラッグ操作のイベントそのものには介入しないようにしてたんだけど、Tab Utilitiesがそういう事をやってるんだったら、「複数タブのドラッグ操作」に特化したアドオンであるマルチプルタブハンドラが黙って見てるわけにはいかない。なので、マルチプルタブハンドラではバージョン0.6から、ついでにツリー型タブもバージョン0.11.2010120101から、タブをドラッグ&ドロップするときはドラッグしようとしているすべてのタブをデータトランスファーに渡すようにした。ついでにドラッグフィードバックイメージも自前で生成するようにして、複数タブのドラッグ時はドラッグ中のすべてのタブのサムネイルを重ねて表示するようにしてみた。

それで「ああやっと時代に追いつけたわ」と安心してたんだけど、Windowsでテストしてみたら、せっかく生成したドラッグフィードバックイメージがぜんぜん表示されないんでやんの。どうも、Windows版のFirefox 3.6以前は、mozSetDataAt()で複数のデータを指定するとドラッグフィードバックイメージが表示されないというバグがあるようだ。Ubuntu上のFirefox 3.6や、Windows上でもMinefieldでは問題なかったんだけど。頑張りの報われなさに切なくなった。

ツリー型タブのリファクタリング

ツリー型タブの場合は、タブのドラッグ&ドロップでツリーを編集する場合があるから、マルチプルタブハンドラみたいにTabMoveイベントをトリガーとして後から必要な処理を行うということはできなかった。なので、Firefox自身のドラッグ&ドロップの処理に介入する形の設計にせざるを得なかった。

その後HTML5のドラッグ&ドロップのAPIが実装されて、Firefox 3.5ではFirefoxのタブのドラッグ&ドロップのためのコード自体もそれをベースに書き直された。これはまだFirefox 3.0と同じようなやり方でドラッグ&ドロップの処理に介入できる余地があった。

しかしFirefox 4ではタブのドロップとかドラッグオーバーとかの処理がXBLのイベントハンドラの中にベタ書きされるようになってしまって、メソッドの中に処理を注入するやり方ではドラッグ&ドロップの操作に介入できなくなってしまった。なので、仕方ないからdragstartとかdropとかのイベントにキャプチャリングフェーズで割り込んでツリー型タブの側で全部自分で処理するようにした。

という経緯があって、結果的にツリー型タブのドラッグ&ドロップ周りの処理はFirefox 3.0向けとFirefox 3.5~3.6向けとFirefox 4向けとで3種類の方法が同居してかなりシッチャカメッチャカな状態になっていた。あとタブバー自体のドラッグ&ドロップの処理もあって、それぞれがあちこちに散らばっててだいぶ訳のわからんことになってた。

そんな状態だったから、昨日のリリースでは案の定リグレッションしてドラッグ&ドロップが盛大にぶっ壊れてた。これはもう駄目かもわからんねと思ったので、Firefox 3.0向けのコードを全廃したついでにFirefox 3.5~3.6に対してもFirefox 4向けのやり方を使うようにして、ドラッグ&ドロップのコードを専用のクラスに集めて整理することにした。

安定性とメンテナンス性を取った結果、タブのドラッグ&ドロップのイベント処理はFirefox本体のものを完全に無視する形になっているので、他のアドオンとの機能の両立という点では残念なことになっているかもしれない。タブのドラッグ&ドロップに介入するためのきちんとしたAPIが整理されていれば、こんな思いをしなくて済むのになあ。

ツリー型タブ 0.11.2010112601で機能を足したり引いたりした - Nov 26, 2010

今まではTree Style Tabでタブバーを横置き(上または下にタブバーを配置するモード)にした時特有の機能というのは特に設けていなかった、というか横置きで階層化されたグループ化なんて全然使いにくいし誰も使わないだろと思って割となおざりにしてたら、案外使われてるみたいで時々このモード特有のバグ報告を貰ってたわけですが、Opera 11でタブスタッキングとかいう機能が加わるとかで「そんなんXULでもできるわい!!! つうかもっと前からやっとるわい!!!」とカッとなって、タブが重なってるっぽく表示するようにしてみた。 (スクリーンショット)

種を明かしてしまうと、元々「折り畳まれたタブ」はvisibility: collapseで見えないようにしてたのを、collapseにせずにvisibleのままで親のタブの下にz-indexを調整して重ねるようにしたというだけ。諸々の事情でMinefieldでしかこの表示にはならないようになってる(Firefox 3.6だと今まで通り)。

このようにしたおかげで、

  • ツリーの折り畳み状態(子タブがあるかどうか)について、今までは見分ける術がタブのラベルに表示される「(3)」のような文字列と小さなtwistyだけだったので、縦置きタブバーではすぐ分かるけど横置きタブバーだと識別が困難だった。しかし今回の変更によって、タブの外形の変化で状態を簡単に識別できるようになった。
  • 折り畳まれた状態のタブをクリックできるようになった(元々、背後にあるタブにフォーカスが来ても大丈夫なように設計していたので、そのための変更というのは特にはしていない)。

というメリットを図らずも得られてしまった。

しかしIDEA*IDEAの記事の小さいスクリーンショットと動画だけ見てこういう表示にしたんだけど、もっと大きなスクリーンショットだと、実際は全然違う形だった。まあ、今更だからこのままいくけどさ……

あと、このリリースから「リンクをクリックした時にそれを自動的にタブで開く」系の機能と「ロケーションバーからの入力で常にタブを開く」系の機能を別のアドオンに分割することにした。

既にあったOpen Bookmarks in New Tabと並べて「新しくタブを開く系3兄弟」的な。

  • ちょっと探してみた限り、ほんとにこの機能だけを提供してくれるというアドオンを見つけられなくて、こういうものはTab Mix Plusとかの統合型のタブ拡張の一機能としてしか提供されていないようだった。
  • 統合型のタブ拡張はどれもこれもこの機能を持ってるせいでツリー型タブと衝突してそうだった。
  • これらの機能があるせいで、ツリー型タブは便利機能全部入りの統合型のタブ拡張を指向してると思われて、あれが欲しいこれが欲しいという機能追加の要望を受けてしまっていたのではないか? 僕はツリー型タブをそういう物として作りたくはない。

といった理由があっての決定です。多機能なのがいい人はツリー型タブを捨ててTab Kitあたりに乗り換えるといいと思います。

Page 4/248: « 1 2 3 4 5 6 7 8 »

Powered by blosxom 2.0 + starter kit
Home

カテゴリ一覧

過去の記事

1999.2~2005.8

最近のコメント

最近のつぶやき