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たまに18歳未満の人や心臓の弱い人にはお勧めできない情報が含まれることもあるかもしれない、甘くなくて酸っぱくてしょっぱいチラシの裏。RSSによる簡単な更新情報を利用したりすると、ハッピーになるかも知れませんしそうでないかも知れません。

萌えるふぉくす子さんだば子本制作プロジェクトの動向はもえじら組ブログで。

宣伝。日経LinuxにてLinuxの基礎?を紹介する漫画「シス管系女子」を連載させていただいています。 以下の特設サイトにて、単行本まんがでわかるLinux シス管系女子の試し読みが可能! シス管系女子って何!? - 「シス管系女子」特設サイト

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「もっと考えろよ」「想像力なさすぎだろ」みたいな言い方を僕はしたくないなっていう話 - May 06, 2020

IQが20違うと会話が成立しない、みたいな話は昔からよく聞くけど、そもそも「自分自身が一般よりIQが高い天才です、一般人と会話が通じなくて困ってます」って当事者になってることがあんまり無いと思うので、実際そうなのか?ってのはよく分からない人の方が多いんじゃないかと思うんですよね。僕もそのクチで。

ツイッターみてたら、そういう場面において、一般よりもIQが高く「ギフテッド」と呼ばれる人の側が当事者として実際どう感じているのか、をご自身の体験から詳しく説明されている記事が流れてきて、読んでみたら、前々から「きっとこういうことなんだろうなあ」と考えてた事とわりと合致する話が書かれてたんですよ。

というのも、これって「自分がアニオタで、アニメにまったく興味がない人に話が通じない」みたいな場面にすごく似てるなって思ったんですよね。

  • 自分はその作品にも、作品が生まれた背景にも、今のオタク業界にも色々詳しくて、業界用語もめっちゃたくさん知ってる。オタク仲間同士なら呼吸をするように自然に会話が成立する。
  • でも、そういう前提を共有してない人と話すとなるとものすごく大変。好きな作品の好きなキャラの事を語ろうとしても、作品の説明に時間がかかるし、キャラの説明に時間がかかるし、「◯◯という作品の××というキャラのように……」みたいに言うとその「◯◯」や「××」自体も詳しく説明しないと分かってもらえないし……

こういうの、すごく身に覚えがあるんですよね。「オタク知識」の話でなくても、社会人だったら自分の業務分野・専門分野の知識とか、自分は滅茶苦茶詳しくてお客さんは全然詳しくないので説明に苦労するってのはすごくありふれた話だと思うんです。自分も今まさに、テクニカルサポートの業務でお客さんに説明する場面でそういう事はよくあるし、Linuxのシェルコマンドの解説漫画を描く上で大変な事もまさにそういう事だし。

で、「自分側が知識がありすぎて、知識が無い側の人に話が通じなかった」体験をそういう風に想起できる一方で、「自分側の知識レベルや頭の回転速度が低過ぎて、有能な相手がする話の内容がまるで理解できなかった」体験もまた、自分には想起できるんですよね。学校で先生の言う話が分からなくて授業についていけないとか、仕事の上で先輩の話しに全然ついていけないとか。むしろこっちの方が多いくらい。

なので、自分としては「IQが20も違うと会話が成立しない」という話の両方の当事者の感覚を想像しながら、先の記事を読んだんです。

それで思ったのが、「この記事を書かれた方(ギフテッドの人)には、もしかして、自分の話を相手に理解してもらえなかった経験はあっても、相手の話が自分には理解できなかった経験が無かったりするんだろうか?」という事で。

そもそも記事自体が「IQが高い側の弁明」という体裁だから敢えてそう書いたのかもしれないんですが、「やばい、相手の言ってることがまるで自分には理解できない。どんなに説明されてもチンプンカンプンだ」という感覚が、あまりその記事からは感じられないような気がして。

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Tech系Podcast「しがないラジオ」ゲスト出演しました - Jul 03, 2018

「SIerのSEからWeb系エンジニアに転職したんだが楽しくて仕方がないラジオ」略して「しがないラジオ」というネットラジオ(Podcast)があり、マンガでわかるGit等で知られる湊川さんが出演されていたことで僕はその存在を知った(というか「Tech系Podcast」という物の存在自体この時知った)のですが、その後「インフラガール」で知られるナツヨさんも出演されたと知って、(マンガのペン入れなどの言語野を使わない)作業の時にBGM代わりに聞くようになり、いいなあ自分もこういう所に出てみたいなあと思いながらチラチラと感想ツイートを繰り返すなどの小賢しい消極的アピールを続けていた所に、シス管系女子3の発売というタイミングが重なりまして、「それで今日は何かお知らせがあるということで?」「はい、実は最近こういう本を出しまして……」みたいな定番のアレをやるなら今しかないと思って「出たい!」と自己申告し、押しかけでゲスト出演させていただきました。

自分はFirefoxやThunderbirdの法人サポートを業務でやっていますが、エンドユーザーからの問い合わせを直接受けるのではなく、SIerの方やBtoB/BtoC企業のシステム管理部門の社内SEの方がエンドユーザーから受けた問い合わせのエスカレーション先として回答する立場で、Podcastのタイトルからすると脱出を図られる方の分野に近しい所にいると言えます。IT業界への就職や転職を考えている方でSIerかウェブ系かという二者択一で考える人は結構多い印象がありますが、その二者択一に含まれない選択肢もあるんですよ、そんなにキラキラしてないIT業界でも命を磨り減らさずに自分にできる事で生きていく例はあるんですよ、という事を前半では話してみたつもりです。

(Show Noteの注記にあるとおり、クリアコードの立ち上げ時のメンバーは、Podcast中で言っている「3人」ではなく「4人」です。よりにもよって社長をカウントし忘れておりました。直前のタイミングで実施した社内ミーティング(社長欠席)の様子を思い浮かべながら話していたので……事前に準備していない話題をふられると弱いという事が露呈していますね。)

後半では、OSSにコントリビュートするってそんな難しい事じゃないし、やると得られる物がいろいろありますよ、OSS Gateに来て挑戦してみてね、という話や、シス管系女子を制作する時に心がけている事、分かりやすく説明するためのコツやその逆の「べからず」について、あと、自分が(技術のコミュニティ等で)老害にならないためにはどういう事に気をつけたらいいんだろうね、というような事を話しています。とりとめのない話を思いつくままにしているようで、それらの話題が根底では繋がっている、という事が最後まで聞くと明らかになる構成に図らずもなっていて、結構面白い話になっているのではないかと思います。

パーソナリティのgamiさんとzuckeyさんは僕より10歳くらい若くて、過去の出演者陣の中でも僕(35)は最高齢一歩手前なのだそうです。クリアコードは全員合わせても10人しかいないという零細なので特に「昇進」のような概念が無く、「上司」然として部下を率いるような立場になった事が無いので、いつまでも下っ端気分で若いつもりでいてしまいがちなのですが、こうしてはっきり数字で見えてしまうとドキッとしますね。自分が26とかの頃を思うと、10歳とか離れてる上の人は「大先輩のおじさん」みたいな感覚で、緊張して思うように喋れなかったものです。後編では「老害にならないためには」みたいな話をしていますが、いつまでも若いつもりでコミュニティに居座り続けて(経験の差から)俺TUEEEEEして悦に浸るというのもまた老害の別の形ではあると思うので、重々気をつけねばいけないという思いを新たにしました……

 

自分の声を聞く事はあまりないので、終始「ドュフフフフwwww」みたいな感じだったらどうしようと戦々恐々としていたのですが、いい録音機材で録っていただいたお陰なのか、音質調整が巧みなのか、そこまで赤面する事も無く安心して「いやーいい事言ってるなあこの人。誰だ。あっ僕だ」と新鮮な気持ちで聞き返す事ができました。パーソナリティのお二人にうまく誘導していただいた事もあり、終始気持ちよく喋らせていただいて、気付けば朝の集合から4時間近く喋り通しでした。調子に乗ってマウンティングじみた俺TUEEEEE話をペラペラ喋るという、これはこれでまた老害っぽさがものすごい事になっていないか心配だったりもしますが、楽しい時間を過ごさせていただき、自分は大いに満足しております。改めて、この機会を頂きありがとうございます。

技術書典4に参加して「まんがでわかるLinux シス管系女子3」とかグッズとか頒布しました - Apr 23, 2018

去る2018年4月22日、東京・秋葉原UDXにて開催された技術同人誌オンリーイベント技術書典4に、サークル「シス管系女子会」として参加してきました。無駄にパトロン枠での参加でした。

毎度、シス管系女子の草の根的な営業活動とファンサービス、あと〆切を設けることで何か新作を作るモチベーションにするという目的で参加していますが、今回も結果のほどを記しておこうと思います。なお、技術書典、技術書典2の結果、および技術書典3の結果は過去記事をご参照下さい。

数字的なこと

今回の数字は以下の通りでした。一般的な技術同人誌のサークルというよりも、一般書店で購入可能な商業出版物メインの企業参加者の例という感じで見て頂いた方が良いと思います(申し込みは自分が個人的にやっていますが、商業出版物は日経BPの委託販売という形で、売り上げもそっくりそのまま渡しています)。

技術書典2の時に作成した、サンプルを兼ねたチラシ形式のリーフレットも持ち込んではいました。ただ、こちらは前回に引き続き今回も積極的にばらまかなかったので、数としてはほとんど出ていないと思います。

今回特筆すべきは、本の持ち込み分が早々に完売してしまったという事です。特に「シス管系女子3」は、当初持ち込み分60部は11時の開場から12時50分頃までの間に払底してしまい、途中で日経Linux編集部にあったという19部を急遽追加してもらいましたが、14時30分の頒布再開後14時58頃までの間になくなってしまいました。本が無くなって以後も何度か「3を……えっもうないの」的な反応を頂いていて、数だけは多く用意できるはずの商業出版物であるにも関わらず、せっかく来ていただいたのに申し訳ない限りです。一応、Amazon等の通販や書泉ブックタワー等会場近くの書店でも普通に入手できる旨は案内させていただきましたが……

持ち込み部数は前回までの実績を踏まえて検討した結果だったのですが、晴天に恵まれてのべ参加者数が倍増した事と、今回の新刊である「シス管系女子3」が4月19日発売でこれ目当てに来て下さった方が相当数いらっしゃったようだという事から、全く想定外の売れ行きとなりました。新刊が多めに出るのは想定の範囲内でしたが、既刊も前回参加時より多く出ており、全ての本が15時台にはなくなってしまいました。やはり天候の効果は大きかったようです。グッズも、ステッカーは頒布価格が高めだったので10〜20ほど出ればいいくらいかなと思っていたのですが、気がつくと半分程なくなっていました。タイツは……元々あしピタが本命の物なので、まあこちらは想定の範囲内ですね。

スペース設営のこと

今回は商業誌3冊に加えてグッズも並べる必要があったのですが、今までのやり方だと確実に場所が足りなくなるので、どうにか縦方向にディスプレイする方向で工夫してみました。

まず本を縦にディスプレイする方法ですが、既製のイベント展示用の雛壇を調達しました。できれば何度も使える耐久性の高いプラスチックや金属や木の物を調達したかったのですが、ちょうど良さそうな物は品切れだったり、微妙にサイズが合わなかったりしてなかなか良い物が見つからず、最終的に選んだのはIGARASHI PROというメーカーの段ボール製組み立て式雛壇でした。本来はイベント毎に使い捨て前提の製品のようですが、それは勿体ないので、両面テープで固定する部分をマジックテープで置き換えてバラして持って帰れるように改造しました。また、結構奥行きがあってこれを置くと平積みのスペースを確保できないため、一番手前の段を潰すことにしました。

タイツは普通に置くと滑り落ちて危ないので、普通の店舗でワゴンセールになってる物のように縦にしてケース(たまたま家にあった未使用の不織布製収納グッズ。ある程度の柔軟性がある)に詰めて、その後ろに背の高いディスプレイでサンプルを展示する形にしました。高さを出すための物は最初は段ボール工作を考えていたのですが、もえじら組の最初のイベント参加の時に買ったスチレンボードの残りが出土された(10年以上前の物……)ので、それを切り貼りして適当に作りました。

後ろ側は紙製の簡易スタンド(同人誌の見本や値札を立てかけるために使われるような物)ですが、高さがある分倒れやすいので、後ろの方に足を延長してバランスを取ってみました。

POPは、タイツがネタグッズなのでそれに合わせる形でヴィレヴァン風POPの作り方を参考にそれらしい物を作ってみました。手書きでやる自信が無かったので、青地の部分をたぬき油性マジック、それ以外の部分をふい字Pで「手書き風」にしました。ロゴは、フォントの形状がヴィレヴァンのロゴの物に似ているとして紹介されていたHelvetica Ultra Compressedベースで作成しています。

(POPのひとつ。「ステッカー MacBookでなくても貼ってええねんで? 800yen」の表記あり。)

本物のヴィレヴァンPOPには値段は書かれていないようですが、今回は値段も一緒に入れてしまっています。

「完売しました」のお知らせをその場で書いたりするのに、何も書かれていない白紙の状態の物も用意しておけばよかったなあ……と思いましたが、後の祭りでした。

物を作るモチベーション維持のこと

技術書典への参加目的の1つは何か作る事へのモチベーションを高めるという事なのですが、今回はちょうど「シス管系女子3」の作業とタイミングが重なったため、これをモチベーションに作業を進めていました。

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元々は、この1週間後くらいの発売予定で作業スケジュールが組まれていたのですが、そうなると技術書典の直前くらいは作業の大詰めで何も他の事ができそうになく、技術書典合わせの何かコピー本を用意するという事ができない&「シス管系女子3」も間に合わないという最悪の事態になってしまう事が予想されたため、〆切を早めてもらって発売日をイベントの前に変更、イベントにも新刊として持ち込むことができました。冒頭のプロローグの構成をギリギリで変更する事になったり、目立つ所では裏表紙の大野先輩のスカートのテクスチャが抜けた状態になってしまっているなど詰めの甘い箇所が残ってしまったりと、心残りもいくつかありますが、本来の価値である技術の本としては申し分ない物にできたのではないか……と自画自賛しています。

また、〆切が手前にずれた関係でイベント直前に2週間ほどの余裕が生まれ、コピー本は無理でしたがグッズを用意することができました。

なお、グッズ類は現在BOOTHで通販もしています。会場に来られなかった方や、会場で見落とされていた方は、こちらからご注文いただければと思います(あんしんBOOTHパック利用のため、こちらに個人情報が伝わる事はありません)。グッズがなければBOOTHを使ってみる事もなかったので、これも技術書典がきっかけで活動の幅が広がったという事だと言えそうです。今後は、過去に少数だけ生産したブックエンドもラインナップに加えられたらなあと思っています。

会場での反応のこと、新刊への反応のこと、今後のこと

毎度書いている気がしますが、会場では読者の方に何度もお声がけをいただき、大変ありがたかったです。紙媒体の商業出版物でしか読めない連載ということもあってか普段あまり感想を見聞きする機会が無く、こういう場で「1も2も持ってます」「3をずっと待ってました」のようなありがたいお言葉を頂けると、大変励みになります。

また会場外でも、今回の「シス管系女子3」についてはWeb上、というかTwitter上で今までにない量の反応を頂けている印象があります。2年前にWebサイトTwitterアカウントの運用を開始して以降、自分にできる範囲で地道なプロモーションとも言えないようなプロモーションを続けてきましたが、その間湊川さんや沢渡あまねさん、ビタワンさん、ナツヨさん(※今回イラスト内のキャラクターの使用許可を頂いた方々)、他にも数多くのフォロワーの方々に度々告知やアピール文を拡散していただけていて、その影響がこうして目に見える形で表れてきたという事なのではないかと思っています。皆さんのご厚意に感謝するばかりです。

正業の傍らでの短いページ数の連載、しかも掲載媒体の日経Linux誌が月刊から隔月刊になったということで、今まで以上にページ数が溜まるスピードが落ちる事が予想され、次の本が出るとしたら一体どのくらい先になってしまうのか全く見えない状況ではありますが、今のこの気持ちを忘れないで、腐らず歪まず続けていければと思っております。皆さん本当にありがとうございます。(……と感謝の意を激しく表明すると「最終回」っぽさが漂ってしまいますが、別にそんな事はなく実際これから次の回の作業に入らなくてはいけないので、今後とも見守っていただけましたら幸いです。)

余談

どういう訳か、スペースにお越しの方に「マンガで分かるGitのスペースはどこですか」と訊かれてしまいました。それは僕じゃなくて湊川さんなんです……タイトル似てますが別作品です……

技術書典3に参加して「まんがでわかるWindows Subsystem for Linux」をリリースしました - Oct 25, 2017

去る2017年10月22日、東京・秋葉原UDXにて開催された技術同人誌オンリーイベント技術書典3に、企業サークル「シス管系女子会」として参加してきました。

シス管系女子の草の根的な営業活動とファンサービス、あと〆切を設けることで何か新作を作るモチベーションにするという目的での参加でしたが、結果のほどを記しておこうと思います。なお、技術書典、技術書典2の結果は過去記事をご参照下さい

数字的なこと

今回の数字は以下の通りでした。

  • 技術書典3 Webサイト上での被チェック数:79
  • 持ち込み部数:
    • ムック「まんがでわかるLinux シス管系女子」30部(うち1部を立ち読みスペース用に提出)
      • ムック「シス管系女子2」は出版社にすら在庫が無い状態のため、持ち込み部数は0でした。
    • 新刊コピー本 「まんがでわかるWindows Subsystem for Linux シス管系女子」 102部(うち1部を見本誌として提出、1部を立ち読みスペース用に提出、1部をサンプルとしてスペースに常設)
    • シス管系女子BEGINS 0.1+0.2リーフレット版 部数不明(恐らく200くらい?)
  • 頒布実績:
    • ムック「まんがでわかるLinux シス管系女子」26部(1700円×26=44200円)
    • 新刊コピー本 「まんがでわかるWindows Subsystem for Linux シス管系女子」 99部すべて頒布(13時頃に在庫切れ)
    • シス管系女子BEGINS 0.1+0.2リーフレット版 100部ほどを頒布(実数不明)

ポスター等は前回の使い回しなので、今回新たにかかった費用はイベント参加費(企業扱い)と新刊コピー本の費用くらいです。

当日は台風直撃かつ衆議院議員選挙とも重なるという、前回・前々回を上回る悪条件でしたが、主催者発表によると来場者数は2700人ほどだったとのことで、来場者数に対するムックの販売実績としては前回を上回る比率となったと言えます。

前回の技術書典2では積極的に声かけを行い、サンプル代わりのリーフレットをチラシのように積極的にばらまいていましたが、今回はそこまでの積極的な声かけはせず、スペース前で足を止めて下さった方に「よかったらこちら無料なのでどうぞお持ち帰り下さい」と勧める程度に留めました。これは、リーフレットを増産していなかったためばらまいていると足りなくなると思ったのと、技術書典2までに参加した人にまた配ってもウザイだけだろうと思ったのとが理由です。

新刊が間に合うかどうかすら危うかったので事前のアピールをほとんどしておらず、会場内でもほとんどずっと座ったままだったので、数字は前回からかなり後退するのではと考えていたのですが、商業出版物と新刊の頒布数的には全然そんなことありませんでした(コピー本に至っては昼過ぎになくなってしまいました)。 近くにキンコーズがあるので追加で刷ってこようかとも思ったのですが、宣伝活動と考えたときにこれ以上お金をかける意味があるのかよく分からなくなってしまったため、そのまま増産無しで閉会まで居座っておりました。

立ち読みについて

今回、技術書典3というイベント自体の新たな試みとして「立ち読み専用スペース」「戦利品確認用スペース」という物が用意されており(自分は行かずじまい)、サークル参加者は見本誌とは別に本を立ち読み用に提出することでそちらにも置いてもらえるようになっていました。

どれくらい効果があるのか?については未知数の状態でとりあえず提出してみましたが、会場内でスペースまで足を運んで頂いて本をお買い上げ下さった方の中に、「上の立ち読みスペースで読んで気になったので」とおっしゃって下さった方がいらしたので、まったく効果無しということはないようです。

新たに制作したもの

今回のイベント参加に当たり、元々はシス管系女子BEGINSの0.3話として新作を用意しようと思っていたのですが、

  • 直前の10月18日にWindows Subsystem for Linuxが一般向けの機能として解放されたWindows 10 Fall Creators Updateの提供が開始されたニュースを見ていて「あれっそういえばこれLinuxって付いてるから『まんがでわかるWindows Subsystem for Linux シス管系女子』ってタイトルにできるんじゃね? むしろ旬の話題じゃね?」と思った。
  • 連載は枯れた技術の紹介を主にしていて、時事ネタは取り扱わない方針なのだが、これは本編ではない広報資材なので、むしろ時事ネタの方が拡散してもらいやすいのではないかと思った。
  • 技術書典(第1回)の時以降細々と実施していたWebアンケートで、読者の方の過半数が普段使いの環境はWindowsであることが判明していた(今さらかよ!という感じですが、当初の連載のテーマ決めの時に見せてもらった本誌がUbuntuのデスクトップ環境推しだったため「そういうものなのか」と思ってみんとちゃんの環境もUbuntuに設定してしまったのです……)ので、WSLの使い方を紹介すればWindows環境でも本編で解説している内容を役立ててもらえるのではないか、「Windows環境でも役に立つ一通りの知識」というパッケージとして見せられるのではないかと思った。

ということで、突貫作業でWSLの紹介の特別編を制作し、新刊としてリリースしました。 元々、イベントが終わったら公開するつもりだったのですが、昼過ぎの時点で頒布物の在庫が無くなりそうということが見えてきたため、早々に会場内からTwitterにも投稿しました。

コピー本として頒布したバージョンと最初に公開したバージョンでは、最後のページでWSLのことを「準仮想化」と表現していたのですが、Twitter上でご指摘を受け、冷静に考えると間に挟まるレイヤーが薄いという点では準仮想化に似ているけれども仮想マシンがいるわけではないのだから「仮想化」と言うのは間違いだったと思い至り、帰宅後に最終ページの内容を大幅に更新してTwitterに再投稿しました。 結果として、前半4ページ分と後半4ページ分のそれぞれのツイートのうち後半の方が多くRTされるというヘンテコな状況が発生してしまいましたが、それだけWSLと他の競合技術との違い・使い分けに皆さん関心があるということなのでしょう。

また、まったくの副作用として、この話を描くにあたって色々調べ直したことで自分自身のWSLへの理解が深まりました。一応Cygwin・MinGW(とMSYS/MSYS2)・PowerShell・仮想マシンとの違いは何となく分かっていたつもりではあったのですが、漫画にするにあたって「どういう絵にすればより適切な表現になるのか?」を考えたことで、今までよりもそれぞれの違いをより具体的に言い表せるようになったと思っています。技術発表や紹介記事はそれを読むだけよりも自分で書く方が勉強になる、ということを改めて実感しました。

イベント外への広がりのほどは?

例によってTogetterの当日のまとめ等も見てみたのですが、戦利品報告として写真を公開されている方の戦利品ラインナップを見ると「ものすごいディープな内容・商業誌では扱われていないような内容の技術同人誌」が主で、今回のコピー本が写り込んでいる物はほとんどありませんでした。シス管系女子のような「解説対象が枯れた技術で、且つ、ものすごく技術的に高度な事をやっているわけではない、初級者向け(中級者以上へのステップアップ用)の内容」というのは、やはり、技術書典というイベントに台風の中わざわざ足を運んで戦利品報告までするようなアグレッシブな方にとっては魅力的ではないということなのだと思います。

宣伝活動としては、直接会場でリーチできる層以外に、その外側・イベント外にも拡散されるような場を選ぶのが効率的なのですが、「シス管系女子」というコンテンツにとってのそういう場所は一体どこにあるのか、そもそも「ある」のかどうか、むしろ拡散されるに足るコンテンツとしての価値は本当にあるのか、まだ答えは見つかっていない感じです。

おわりに

以上の通り、商業出版物の広報活動としては今回もあまりパッとしない結果に終わってしまいましたが、上記のような悪条件下にも関わらず多くの方が来場して下さり、また、シス管系女子会のスペースまでお越し下さり、暖かい声援の言葉をおかけ頂けました。普段Webではあまり感想・反応を見かけないため、このように直接「ちゃんと読まれている」ということを実感できる機会は自分にとって非常に大きな意義があり、他の何にも代えられない喜びです。お声がけ頂いた皆様、本当にありがとうございます。

今回、事前の準備を疎かにしていたため頒布物は無料のコピー本だけだったのですが、次回以降の参加に際してはファンサービス的な面にもっと注力し、グッズ類の制作にも手を広げていきたいと思っております。

ということで、技術書典3のご報告でした。

技術書典4の結果はこちらからどうぞ。

書評:まんがでわかるLinux シス管系女子 - May 02, 2017

発売から2年経ってニュース性がなくなっており、新規にレビューされることももはやなさそうなので、自分で読者の気持ちになってレビューしてみようという謎企画です。ダイマです。露骨ですね。それではいってみましょう。


まんがでわかるLinux シス管系女子 (日経BPパソコンベストムック)
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本書は端的に言えば、「Linuxサーバーをコマンドで操作する事はあるが、決まりきったコマンド以外は使えずにいて、他にどんな事ができるのかわからないでいる人」「コマンド操作の訳の分からなさに挫折して、すっかり敬遠するようになってしまった人」のための本と言えます。

タイトルに「入門」とありますし、「マンガで分かる何々」と言うと全くの初心者向けの本という印象を受けますが、本書はむしろ全くの初心者にはハードルが高いくらいかもしれません。初心者から中級者へステップアップしようとしている人、ステップアップの仕方が分からず躓いている人向けのケーススタディ集というのが、本書の適切な位置付けでしょう。

技術解説するマンガ

世の中の「マンガでわかる何々」な本には大きく分けて2つの種類があります。1つは直前にレビューしたわかばちゃんシリーズのような、初心者の抵抗感を減じる導入・緩衝材としてマンガを使う物。もう1つは学研の「~のひみつ」シリーズや「マンガで分かる心療内科」のように、解説そのものがマンガになっている、解説のための表現手法としてマンガを使う物。実用書では前者のタイプが多いですが、本書は後者です。

本書はLinux初心者の「みんとちゃん」を主人公に立てて、みんとちゃんが遭遇する様々なトラブルや困った事態に対する解決策をメンターの「大野先輩」に教わる、という形でLinuxのコマンド操作を解説する構成になっています。前の話で紹介されたコマンドを後の話で使うという事はありますが、カリキュラム通りに学んでいくレッスン形式ではなく個別のケーススタディ形式で、マンガとしても4~8ページごとに1話完結のオムニバスとなっています。

それ故に本書は構成上のゴールが無く、スタイルとしては「技術雑誌の連載マンガの単行本」と言った方が適切でしょう(実際、本書は月刊誌である日経Linuxでの連載の最初の2年分をまとめた物で、次の2年分をまとめた物が続刊として出ています)。「1冊の技術書として通読することで何かを達成する、という性質の本」ではないことを把握しないまま読むと、尻切れトンボな最後で面食らってしまうかもしれません。

絵柄や絵の巧拙については、好みもある話なのでなんとも言えませんが、「これは何の事を描いているのか?」が分かる・解説として読む妨げにならない程度の水準は満たしているのではないかと思います。

解説の内容・質はどうか

本書で解説されている話題は、sshによるリモート操作からシェルスクリプトの基本までというLinuxの一般的な操作についてです。舞台設定やタイトルは「システム管理」を想起させますが、Webサービスの運用や組み込み機器の開発など、Linuxをコマンドで操作する際には共通して必要になる範囲の知識と言えます。コマンド操作を使い始めた頃に躓きがちな「あるある」な場面が多く、各トピックはいずれも実践的です。

また、紹介されているコマンドやツールは古くから今に至るまで現役で使われ続けている物がほとんどで、発売から2年が経過(※2017年現在)したものの、内容は陳腐化していません。一度読み込んでおけば、その後長く役に立つ知識が身に付くタイプの本と言えるでしょう。

ただ、本書の知識が長く役立つと言える理由は、単に解説されているツールが伝統的な物だからだけではありません。

コマンド操作が敬遠される理由の1つに、「覚えるのが辛い」というのがあります。コマンドの数は無数にあり、またそのそれぞれが多数のオプション指定を受け付けるため、組み合わせは膨大な数になり、とても覚えきれるものではありません。しかし実際には、中・上級者でもコマンドやオプションをすべて丸暗記しているわけではなく、よく使うコマンドがどのように作用し・どう相互に連携して・どんな結果になるのか、ということを頭の中で想像して適宜組み合わせて目的を達成している場合の方が多いです。

本書ではコマンドやファイルといった「登場人物」達を擬人化し、時にはナビゲーターであるみんとちゃん達自身をその図の中に飛び込ませることで、熟達した人達が頭の中で思い浮かべている主観的な「コマンド操作の向こうで起こっている事」のイメージをマンガとして描いています。文章での説明や抽象的な図よりもずっと生の感覚に近い「(擬似的な)映像体験」を得て、「そうか、先輩達にはコマンド操作の世界がこう見えているんだ!」と思うことができれば、抵抗感も薄れるのではないでしょうか。

全体を通して解説が24トピックというのは少ないように見えるかもしれませんが、個々の話題を丁寧に描いているので情報量自体は多く、実際に読むと物足りなさは感じないと思います(というか、自分は通読してものすごく頭が疲れました)。

残念な所

誉めるべき所がある一方で、技術解説の書籍としての本書には難点もあります。

まず前述した通り、「入門」というタイトルとは裏腹に、本書には基本的なファイル操作のコマンドなどに対する説明が含まれていないため、そのレベルでLinuxの知識が無い人には本書はおすすめできません。事前に最低限、cdlscprmといったファイル操作の基本コマンドの使い方は把握している必要があります。

(ちなみに、Web上で無料公開されている特別編ではその辺りの基本知識が解説されています。いまいち自信が無い場合は、本書を読む前にまずそこから目を通しておくと良いでしょう。)

文字を読む印刷物として、スクリーンショットの中で文字の色がグレーになっていて背景との判読が難しい箇所があるのも地味に辛いです。読みやすいように文字の色を調整したり、文字はすべてフォントで入れなおしたりといった工夫が欲しかった所です。

また、根本的な所で、手元のPCがWindowsである場合の事が全く考慮されていないというのも、初心者を対象とした本と考えると重大な問題です。Linuxのデスクトップ環境やmacOSであればターミナルからの操作で問題無いのですが、Windowsの場合は、Windows 10の開発者向けの機能であるUbuntu on Windowsや、MSYSCygwin、もしくは仮想マシンにLinuxをインストールするといった準備をしないと、本書の内容そのままの実践はできません。Tera Termなどのシェル環境一式を伴わない端末エミュレータを使う場合は、本書の内容をすべてサーバー間の話(Tera Termからの接続先が本書中の「みんとちゃんの手元のPC」に相当する)として読み替える必要があります。これは恐らく、連載の掲載誌である日経Linux誌が「Windows XPからUbuntuへの移行」といった記事を多く扱っており、Linuxのデスクトップ環境を使うのが当たり前という雰囲気があることから、それに引きずられたのでしょう……

まとめ

上記のような難点はあるものの、本書にユニークな価値があるのは確かです。

クラウド、SaaS、DevOpsといった最近の技術的な潮流では、サーバーを操作するために自分でLinuxのコマンドを操作するという場面は減っていっています。しかし、障害発生時のトラブルシューティングや、サービス開発時のデプロイ手順の確立など、シェル上でのコマンド操作の知識が必要な場面は依然としてあります。

丸暗記でもコマンド操作は使えるには使えますが、コマンドや構文の意味を理解していないままだと応用が利かず、パターンから外れた途端にお手上げになります。また、コマンドの使い方をその都度検索しても、やりたい事に合致する例がすぐに見つかるとは限りませんし、最悪の場合、闇雲に実行したコマンドでファイルが消えてしまったなんて事も起こります。でも「自分が今何をしようとしているのか」を正確にイメージできるようになれれば、自信を持ってコマンドを組み合わせて、時には組み合わせを変えて、自在に使えるようになるはずです。本書は、そのようなレベルに自分自身を引き上げて、コマンドリファレンスなどの網羅性の高い情報ソースを活用できるようになるための、手がかりとなる1冊と言えるでしょう。

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ということで、読者目線でのセルフレビューでした。

直前に読んだのがパッケージとして非常にまとまりの良いわかばちゃんのGit本だったので、それと読み比べると「シス管系女子」のパッケージとしての不完全さがどうしても目についてしまい、気が付くと「ここがダメ、そこがダメ」という事ばかり書きたくなってしまうのが辛い所です。でも、書評は駄目な所をあげつらうだけの物ではなく、その本の持つ価値を必要としている人のもとにちゃんと届くよう補助線を引く物でないといけないと思い、実用書としての評価をするよう努めてみました。

本書を薦められた人が「馬鹿にされた」と感じて拒絶してしまうという話を見ると、ああやっぱりピンクとオレンジがまずかったのかなあとか、タイトルがチャラそうなのが良くなかったのかなあとか、もっと成年誌っぽい絵柄だったらよかったかなあとか、詮無い事をつい色々考えてしまいます。レビュー内ではその辺りの事にあまり触れなかったのですが、実際どのくらい評価に影響するものなのでしょうか。気になります。

技術書典2への参加で得た物、思った事 - Apr 16, 2017

サークル「シス管系女子会」のここまでの活動の振り返りです。 (技術書典2でのスペースの様子) 技術書典と技術書典2コミティア119、あとデブサミのDevBooks 2017にサークル参加して得られたデータや思った事を書き留めておきます。

商業出版物を同人イベントで取り扱うという観点から

最初にお金の絡む話から書いていきます。

ペイしたのかどうか

技術書典とコミティアは商業誌の販売が可能とのことだったので、シス管系女子1[2]を持っていった他、技術書典と技術書典2では無料頒布のフリーペーパーやリーフレットも持っていきました。先に大まかな数字を出しておくと、かかった費用と実績は以下のような感じでした。

  • 技術書典
    • 参加費:10000円
    • 無料配布物の実績:コピー本印刷費18000円、500部全て配布
    • 商業本の販売実績:各20冊前後だったか?
  • コミティア119
    • 参加費:6400円(5800円+オンライン申し込み手数料)
    • 商業本の販売実績:各10冊の計20冊(持ち込み分全て)、計34000円
    • 同人誌の頒布実績:新刊コピー本85部、計8500円
  • DevBooks 2017
    • 参加費:無料
    • 商業本の販売実績:0(そもそも販売無しだったので)
    • 同人誌の頒布実績:コミティア新刊の在庫11部と今回新刊のコピー本15部、計2600円
  • 技術書典2
    • 参加費:15000円
    • 無料配布物の実績:リーフレット印刷費約18000円、900部中640〜670部ほどを配布
    • 商業本の販売実績:計53冊、計90100円
    • 同人誌の頒布実績:コミティア新刊の再発行分18部とブックエンド4個、計9800円
    • その他費用:A0ポスター印刷費約1万円(半分に切ってA1ポスターとして使用)

イベント参加費と技術書典・DevBooksのコピー本、あと技術書典2のリーフレットの印刷費は日経BP持ちで、ムックの販売は中間マージン無しの委託販売の体裁として、ムック売上額はそっくりそのまま日経BP社に渡しています(oh, ボランティア……)。1日人を張り付ける人件費を考慮に入れなければ、多分黒字にはなっていそうな気がします。

無料配布物について

技術書典1ではコピー本を無料配布し、技術書典2ではリーフレットを無料配布しました。 (技術書典2で無料配布したリーフレット) ただのチラシを配ってもどうせ見てもらえないと思ったので、中身は漫画になっています(シス管系女子BEGINSの前後に「いかにも宣伝」という感じの漫画を足した)。通り過ぎる一瞬で目を留めてもらうのは無理でも、持って帰ってじっくり読んでもらえるといいな……という魂胆です。この辺は、イベント以外の場でも買える商業出版物ならではの割り切りですね。

元々、技術書典2でもコピー本の体裁の物を無料配布する事を考えていたのですが、思ったよりページ数が増えて表紙込みで24ページになってしまった結果、どう作っても1冊あたりの原価が100円近くになってしまう事が分かった(なのでDevBooksでは一応100円での頒布としました)ため、A4サイズ3つ折りのリーフレット両面を使った縮刷版という体裁にしました。苦肉の策でしたが、これだと印刷枚数次第ではフルカラーでも1枚20円を下回るくらいになるので、結構アリな気がしています。

最初の技術書典では当初は、スペースに置いておいて立ち寄って話を聞いてくれた方や希望者に手渡すつもりだったのですが、「どうせ無料で配布するのなら通りかかった人にどんどん渡しても同じなのでは?」とツッコまれて、それもそうかと思って「無料配布のサンプルです」と声をかけて渡していくスタイルに切り替えたのでした。

通行中の人への声かけは同人イベントではマナー違反とされている事が多いようで、COMITIAに至っては「呼び込み禁止」とはっきり明記されています。技術書典では「商業出版物を取り扱う場合は企業参加扱い」というレギュレーションで、特に明示的に禁止するようなルールの記載も無かったので「企業ならこのくらいはやってもバチは当たるめぇ」と開き直って声を出していましたが、迷惑行為と言われてしまうとグウの音も出ないので、チラシ撒きともども、やるならせいぜい前を通りかかる人に届く程度の声量に留めた上で、恨まれる&出禁になる覚悟でやりましょう。とだけ書いておきます。

プロモーションの場としてはどうなのか

元々、シス管系女子会としてのイベント参加は以下のような目論見で始めました。

  1. 既存読者層やTwitterのフォロワー層以外の人(会場で初めて知った、という人)へ認知を拡大したい
  2. イベント用頒布物のために自主的に特別編を制作し、Webその他で自由に使えるコンテンツを増やすきっかけにしたい
  3. イベントに参加された方のブログ等から2次的・3次的に情報が拡散されて欲しい

結論から言うと、このうち1と2は実現され、3は目立った結果には繋がっていないという印象です。

1は、前述の通り会場でのムック売り上げがそこそこあり、その際にシリーズ2冊をまとめ買いしてくださる方が多かったという事から、やはりまだまだリーチできていない潜在読者がいるという事の証明にもなっていると思います。

2は、元々出版社サイドに何度か「試し読みになるように本編の一部を公開したい」という事を打診しているのですが、「原稿料を支払って下請けに制作させたコンテンツを、何故下請けが勝手に外に出したがるのだ?」という意識があるのかないのか進展が無いので、だったら原稿料もらわなくていいから自分で好きに使えるように勝手に描くわという事でコンテンツを制作したという事です。実際にこれを動機として特別編を制作し公開に繋げられていることから、〆切駆動型の自分には確かに効果的でした。

3は、その後のイベントレポートやTwitterでの反応を見る限りでは、「このイベントで初めて知った」「この試し読みで初めて意識した」みたいな新規開拓の方の反応はあまり見られませんでした。また、全一般参加者の方のうち1/5~1/6にリーフレットを受け取って頂けた計算になりますが、イベントレポートの写真等で「会場で入手した物」の一覧に写っている例は少なかったように思いました。

  • 「会場で無料配布のリーフレットを受け取るタイプの人」と「自分からイベントレポートを書くなどして情報を発信する人」は属性があまり重なり合わないということ?
  • 「なにこれwwwwうけるwwwww拡散しよwwww」みたいなまでに人を突き動かす程のフックの強さが無い、ネタとしての爆発力に欠ける、という事?

理由は色々考えられますが、成果を上げるためにはまだまだ工夫が必要そうです。

「技術同人オンリー」イベントとしての技術書典

初回の技術書典の話はその時のエントリをご参照下さい。以下は技術書典2の感想です。

技術同人に関心のある人ばかりが集まる希有な機会として

技術書典2当日のTwitterの反応まとめを見ると、来場者が多すぎて入場が遅々として進まない事へのコメントが多く、参加を諦めた人も多かったというのは終わった後で知りました。方や会場内では、サークルによっては開場1時間や2時間で完売の拍手が上がっていました(6時間あるイベントの序盤での在庫切れというのは相当な読み違えがあったということになります)。「技術書オンリー」「同日に別の場所でも同人イベントが開催されており、その中にはけものフレンズのオンリーイベントも含まれていた」「天気は雨」など、来場者が少なくなる方向の材料ばかりがあったにも関わらずこの盛況さということで、当日に至ってすらも来場者数の読みが極めて難しい状況でした。

前回は会場が建物内の地下と2階に分断されていた上に、入場が整理券制になっていたことから、全体の様子というのは正直見えにくかったのですが、今回は他の同人誌即売会イベントに近いレイアウトだったので、全体の混雑具合などが俯瞰しやすかったです。そこで抱いた率直な感想は、まさに普通の同人誌即売会だなという事でした。

これは、コミケやコミティアなどに行った事のある自分からすると驚くべき事です。というのも、これらのイベントで評論・技術ジャンルのスペースを訪れると、他の混雑具合とは一転してびっくりするぐらい人がいないからです。そんなガラガラ具合のジャンルのサークルだけを集めるわけですから、本当にイベントとして成立するのか?という心配の声が運営サイドからすらも上がっていたのも頷けます。

別にアンケートや聞き取り調査をやったわけではないのでただの想像ですが、実はみんなこういう「知の共有」に焦点を当てたイベントを求めていたということなのではないでしょうか。

既存のイベントで技術同人が参加できるイベントといったら、基本的にはオールジャンル(取り扱う内容のジャンルを問わない、なんでもあり)のイベントですが、それらのイベントでは技術同人以外のサークルはほとんどが漫画やイラスト、エンターテインメント作品をメインにしていますし、比較的近いジャンルのオンリーイベントと思われる文学フリマであってもメインは小説や評論です。そういう状況では、技術同人に興味がある人でも、行く苦労や金銭的コストに対して得られる物が少ない、つまり「割に合わない」と判断されて、行ってみようという気が起こりにくいのではないかと思います。例えて言うと、アニメイトの一角で技術書籍のコーナーが設けられていたとして、技術者を自認する人がわざわざそこまで買いに行くのか? あるいは、アニメイトに来る客が技術書コーナーまで見て回るのか? っていう話です。

その点、技術書典は最初から技術書オンリーと銘打っていますから、「当たり」に出会えるだろうという期待値はグッと高まります。来場者が多いのは、他に類似のイベントが無いからそういうニーズがここに一気に集中してしまっているという事なのではないか。というのが、僕なりの予想です。

より質の高い情報が精錬され形になる機会として

IT技術者をやっていると、よく「技術カンファレンスや勉強会は、発表する人が一番勉強になる」「雑誌の記事や本は、著者が一番勉強になる」なんて話を聞きます。

知見やノウハウは、自分だけが見るメモ程度であればいくらでも書けますが、他の人にも共有できるレベルの内容に引き上げるのには手間がかかります。話を一般化したり、あやふやだった所を調べ直して根拠をはっきりさせたり、話題を整理したり……こういう事が面倒で、メモのまま放置されてしまう情報や、メモすら残されないまま忘れられてしまう情報というのは結構あります。

1コマの発表内容だったり1冊の本だったりといった「パッケージ」の形にまとめる時には、必然的にそういった作業が発生します。「イベントに参加するので」「そこで新刊として発表するので」という風に〆切を設定する事で、情報を精錬するための動機が生まれ、より価値の高い情報が出てくる、そういう動機になるというのは、技術書典というイベントの重要な意義の1つと言えるでしょう。

青田買いの場として

イベント終了後、技術書典2での刊行物をベースに商業出版する事になったという話を見かけました。同人誌で活躍していた人が商業誌で活躍するようになるというのはマンガ・ゲーム業界にはよくある話で、出版社の人が会場内を見て回って、有望そうな人に声をかけるという事が、技術書でも起こっているということのようです。

会場内で実際に売れ行きが良ければ商品化する好材料になるというのはもちろんあるでしょうが、そもそもこういうイベントに物を出している時点で「〆切を設定して」「それに間に合うように」「情報を整理してパッケージ化して」同人誌として世に出すという事ができている訳で、ネットでブログに断片的な情報を書き散らかしているだけの人に比べれば、商業出版物の原稿を書くという仕事にちゃんと取り組んでくれそうだと期待できるのではないかと思います。

著者と読者が対面で話せる機会として

最後に、これは同人誌即売会一般の話ですが、対面での頒布は「読者の方と直接触れ合える」という事が最大の特長でしょう。

先のまとめで「ネットでええやん」という感じのコメントをいくつか見かけましたが、VRでないただのインターネットモールを想定しているのであれば、それは「欲しい物を事前に決めて、買いに行って、買う」という事以上の意義をイベントに対して見出していないという事なのではないかと思います。同人イベントには、会場で作者に直接感想やお礼を言いに行く人もいれば、会場で読者が喜び興奮している様子を見たくて出展する人もいます。

自分の場合は、Webでない紙媒体で連載をやっていて、読者層がWebでアクティブな人達の層とは微妙に違うらしいという日経Linux誌での連載であることから、いつもはあまり「読者の方々に実際読まれている」という実感を持てずにいます。そのため、目の前にいる方に「持ってる」とか「読んでる」とか言って頂けるのは素直に嬉しかったです。普段なかなか認識できない「読者の実在」を意識することができて、励みになるのは間違いないです。

あと、対読者というのとはちょっとズレますが、ご同業の方と話せる機会としても自分にとっては有意義でした。技術書典2ではお隣のスペースがマンガで分かるWebデザイン/マンガでわかるGitの湊川さんのスペースだったため、イベント中やイベント終了後の合同打ち上げでこの仕事の事やそれ以外の事など色々話せたのがとても嬉しかったです。

DevBooks 2017について

そういえば個別にレポートを書いていなかったので、DevBooksの事についてもここに書き留めておこうと思います。

恐らく技術書典の成功を受けてだと思いますが、今年はDevelopers Summit 2017の会場内の1室に小規模な同人誌即売スペースが設けられていました。商業出版物の頒布は不可というレギュレーションだったので、直前のコミティア119での在庫放出と技術書典2向けの頒布物のプレお目見えだけできればいいかと思って参加してみました。

で、参加してみた感想なのですが、とにかく精神的にキツかったです。

というのも、通常の同人イベントだと全時間を通じて人の流れがありますが、DevBooksはデブサミの1コーナーという性質上、セッションとセッションの合間にどっと人が来るもののそれ以外の時間はガラッガラで、もう暇で暇でしょうがなかったです。一人での参加だったので、誰かに店番を任せてセッションを見に行くという事もできませんでしたし……

あと、「シス管系女子」というコンテンツとイベントの来場者層がマッチしていなかったようだという事も感じました。デブサミはどちらかというと流行りの技術に強い関心のある方が多いようで、DevOpsとかと真逆の方向を向いている「シス管系女子」は訴求力が無いのでしょう……多分。

ということで、もし2回目以降があるとしたらですが、「元々デブサミのセッションに興味があって」「技術同人もやっている」「当日は店番の手伝いをしてくれる人がいる」という条件を満たせる方が、会場内での荷物置き場確保も兼ねて参加するのが良いのではないかと思います。

まとめ

まあ何というかタラタラ書いてきましたが、オフラインのイベントはやっぱ良いですよ。オンラインでオンデマンドでいつでも欲しい情報が手に入る、どころか、欲しくない情報まで洪水のように押し寄せてくるのが当たり前の今だから、身体感覚を伴うライブな体験の価値がより際立つ。などという言い方も実に月並みですが、その月並みな体験をした上で「やっぱり月並みだね」と言うのと、体験しない状態で想像で物を言うのとでは違うと思いますので、未体験の人は体験してみて欲しいです。直近では4月29日に幕張メッセで「超技術書典」というのが開催されるので、まずはここから。

続き:技術書典3のご報告

「技術書典」参加しましたれぽ - Jun 26, 2016

技術書典に参加してきましたので、MozLondonの技術面以外の話をほったらかして先にこっちの話を書いておきます。 (会場で掲示していた即席ポスターの写真)

技術書オンリーイベントとは?

個人や小規模の団体などによる自費出版物=同人誌の即売会には「オールジャンルイベント」と「オンリーイベント」の2種類があります。「コミックマーケット」はオールジャンルイベントの代表例で、マンガ小説評論写真集その他色々な種類・内容の作品が取り扱われています。一方のオンリーイベントでは、取り扱われる作品が「艦これオンリー」や「弱虫ペダルオンリー」のように特定のタイトルのファンアートだけだったり、「耳キャラオンリー」のように特定のキーワードに関係する作品だけだったりという風に、イベント全体が特定のジャンル性を帯びています。

オールジャンルイベントには電子工作の話だったりプログラミングの話だったりという技術的な話題を扱う作品も出展されていることがあり、これらは大まかに「技術系ジャンル」という括りになっています。このジャンルの(おそらく初の)(自分が知らなかっただけで前例はあったようです)オンリーイベントが、今回の「技術書典」というわけです。

そういう文脈なので、イベントの体裁は自分が見たところまさしく「同人誌即売会」という感じでした。他のオンリーイベントとの違いというと、そこに「企業ブロック」という扱いで、OSCの会場で見かけるような翔泳社やオライリーといった技術書に強い出版社の販売ブースが普通のサークルと机を並べて存在していたという点でしょうか。

シス管系女子のスペース

今回は、自分は「シス管系女子」の名前で企業として参加しました。企業参加とはいっても日経BP主導ではなく、僕個人が技術書典の情報を見つけて「参加したい!」と言ってゴネて、頒布物作りや当日の作業は自分でやるということでスポンサードして頂いた感じです。基本的に商業出版物は企業参加で申し込むようにというレギュレーションもありましたし。

(写真を撮り忘れたので戸倉さんのツイートを引用)

頒布物は新作描き下ろし(ただし下描きクオリティ)の8ページのコピー本と、既刊のムック2冊でした。 コピー本の内容はpixivにまるっと上げてあります。 そのうちシス管系女子の特設サイトにも載せるつもり。

<script src="http://source.pixiv.net/source/embed.js" data-id="57590783_33fd1695fde5334093fd08b34d503ac6" data-size="medium" data-border="on" charset="utf-8"></script><noscript>

シス管系女子BEGINS 第0.1話 by Piro on pixiv

</noscript>

最初は普通にスペースに置いておいて、本を買って下さった方に渡したり、見てくれた人に「無料です」と言ってそのまま持って行ってもらったりというつもりでいたため、100部持ち込んで(コミケの技術島だったら「多すぎやろ」レベルの数)余ったらOSC等の会場でチラシのスペースに置いてもらうとかすればいいかなーと思っていたのですが、ヘルプで入ってもらった売り子さんの提案で「どうせ無料ならどんどん配った方がいいのでは?」という事になって、配り始めたらあっという間に足りなくなってしまいました。幸い、会場から徒歩で行ける距離にキンコーズがあったため、なくなりそうになったら行ってセルフコピーで200部増刷するという事を2回繰り返して、閉会30分前くらいの時点で合計500部を配りきりました。 (イベント側でも当日増刷システムなどの試みをしていたようですが、自分は制作フォーマットが違った&毎度の通り作業がギリギリになってしまって申し込めなかったので、自力解決したという次第……)

ムックの方は各30部ずつ持ち込んで、それぞれ残り5~6冊くらいになるまでは出ました。という所から売り上げはすぐに計算できるのですが、まぁ企業として動くには明らかに赤字なので、今回は日経BPサイドにはプロモーションと割り切って頂いた感じです。

見ていた感じだと、手に取っていただいた方には「初めて知った」という人が多かった印象で、費用対効果はさておき「今まで到達できていなかった人に認知してもらう」という事はそれなりに実現できたのではないか?と思っています。 内容の質にはわりと自信がありますので、今後もこんな感じで、今まで届けられていなかった方に届けられる方法を考えていきたいです。

あと、今回スケブ依頼は無かったのですが、会場では何人かの方にサインのご依頼を頂いたので書かせて頂きました。焦りもあって線が結構ヨレヨレになってしまいました……すみません。

会場の様子

着いてみると結構会場が狭くて、開会直後から行列がすごいことになっていたようですが、早々に入場方式を整理券方式に切り替えたらしく、会場内の人口密度が一定以上にならないようコントロールされていました。そのため、外の「何時間待ち」といった情報とは裏腹に、中は割合ゆったりとした雰囲気が保たれていたのが印象的でした。 技術系の同人誌は試し読みをするにもじっくり読む必要のある物が多いと思われるので、これは本当に良い判断だったと思います。運営のファインプレーですね。

自分も比較的ゆっくり会場を回って他のスペースの頒布物を見て回ることができ、会場の空気にあてられて結構買い込んでました。 (買った物・頂いた物の写真) 技術系の同人誌は分厚かったり部数が少なかったりで製造原価が高いために、頒布価格の相場が結構高いのが、普段自分がコミケ等で参加するマンガ系ジャンルとは違うものなんだなあ……と今更実感。

前例の無いイベントということで一体どれくらいの人が来るのか全く予想ができず、もしかしたら会場内のサークル参加者同士でお互いに見て回って終わりくらいの規模になるのかもと思っていたのですが、主催者発表によると一般入場者が最終集計で1300人に達していたとのことで、想像を遙かに上回る盛況ぶりに参加者として驚くばかりです。

商業出版物の流通経路に載せるほどの売り上げは見込めないけれども、この事について書きたいんだ!とか、こういう技術本を作りたいんだ!というような作り手側の思いから作られた作品達。 そういった物が集まり、読み手は作り手から直接その思いを聞けて、作り手は読み手の反応をダイレクトに得られる、というのはオフラインイベント独特の魅力だと改めて感じました。 技術書典 当日の様子でも次回開催を望む声が多く見られますし、小説・評論ジャンルのオンリーイベント「文学フリマ」が回を重ねるのみならず地方開催も行っているように、技術書典も「技術ジャンルのオンリーイベント」として確かな地位を確立していってくれるといいなあ、と思います。

続き:技術書典2のレポート

シス管系女子の刊行物の関係まとめ - Mar 07, 2015

「シス管系女子」関係の刊行物が色々あって状況がカオスなので、図でまとめてみました。

シス管系女子の刊行物の関係まとめの図

「まとめ読み」は、日経Linux本誌の付録としてだいたい年に1回ペースで制作されている物です。「まんがでわかるLinux シス管系女子」は、「シス管系女子」第1話から第13話、「#!シス管系女子」第1話(通算第14話)から第11話(通算24話)に加えて描き下ろしを収録した物となっており、作者の主観的にはこれが「初の単行本」という認識です。

各話は「まとめ読み」に再録する段階で一部修正していて、「まんがでわかるLinux」再録の段階でもまた修正しています。そこにさらに描き下ろしが加わっているので、今お買い求め頂ける物ではまんがでわかるLinux シス管系女子が最も内容が充実していておすすめです。「#!シス管系女子 Season2」については、「まんがでわかるLinux」の売れ行きが良ければ、今連載中の「#!シス管系女子 Season3」と合わせてまた本になるんじゃないかなあ……と思います。

「シス管系女子」の本のおまけについて - Feb 09, 2015

シス管系女子の本の宣伝も兼ねて。

まんがでわかるLinux シス管系女子 (日経BPパソコンベストムック)

日経BP社 (2015-02-18)
売り上げランキング: 10,129

本の企画が動き出す前、本誌付録の「まとめ読み」を実際に見てみたときから、本編だけだとギュウギュウ詰め感あって読んでて辛いと思ったので、敢えて各話間に必ずおまけという名の緩衝材を入れることは僕の中でずっと決めてた。一般的な漫画単行本でも各話間におまけがあるのでそれを真似た、とか、ページ数が少ないのをごまかすための水増し、とか、そういう性質も無いとは言えないけど、それよりはやはり、読みやすさへの配慮という切実な動機が大きい。

おまけを入れることを提案した後、先方からは「全ページに何かしら役立つ情報を入れたい」という意向を聞いていたんだけれども、上記の通り緩衝材としての役割を強く意識しての提案だったから、「緩衝材が必要だ」とか「キャラクターを好きになってくれた人もいるはずだから絵のコンテンツにも需要はあるはず」とかなんやかやゴネて、最終的に、各話が終わった後の1ページ目には本編の内容に関係する補足情報や豆知識を、2ページ目には内容と関係無いイラストや蔵出しの設定画といった、お役立ちとはほど遠い情報で「ヌキ」を作るというスタイルに落ち着いた。

そこまではよかったんだけど、悩んだのは、その2ページ目の方に何をどこまで入れるのかっていう点で。

途中までは、裏話とかキャラの設定とか思いつく限り色々盛り込もうかって思ってたんだけど、仕上げに近い段階になって「やっぱやめよう」って思って、文字部分をだいぶ削除した。そのとき思い出してたのは、ずっと昔に「るろうに剣心」の単行本を読んで感じてた事。仮に誰が見ても明らかにそうだろうなってバレバレだったとしても、「このキャラのデザインは綾波レイの影響が~」とか、わざわざ言わないで欲しかった。読んでてすごく気持ち悪かった。今にして思えば、あれは読者が知りたいであろう事・見たいであろう物を読者向けのサービスとして提供していたのではなく、作者自身が語りたくてしょうがなかった事をあの場所で発露していたという事なんだろう。商品であるはずの物の中に垂れ流されていた自意識に、僕は「ウッ」てなってたんだと思う。自分自身が、人から認められたい欲の強い自意識過剰なタイプの、相手が興味なさげにしてるにも関わらず自分の喋りたい事をベラベラと一方的にまくし立ててしまうタイプの人間だという事を考えると、同族嫌悪のような物だったのかもしれない。(なので、そういうのは商品の中ではなくこういう所で垂れ流しておきます(垂れ流す事自体をやめるという選択肢が無いあたりが救いようのないポイントである))

正直、最終的にコンテンツとして入ってる物の中にはまだまだ、読者が見たかった物ではなく僕が見せたかっただけの物があると思う。見せたかったっていうか、むしろ、これしか見せられる物が無いんですみたいな。全部を描き下ろしで埋めるのは無理だったので、大変申し訳ないけれどもそこはどうかご容赦頂ければ幸いです……次の本は出るかどうかも含めて未知数だけど、2年目以降で衣装の着回しがほとんどになって新規に衣装の設定を起こしてないというのもあって蔵出しできる素材が圧倒的に少ないので、描き下ろしが増えるんじゃないかと思う。思うっていうか、多分そうしないと成立しない。最近はフキダシに入れてる顔アイコン的なやつを使い回すようにしてて、労力を削減した代わりに、絵を描くモードに頭を切り換えるまでのウォームアップができていない気がするので、ウォームアップがてらイラストを描くようにして少しでも描き溜めて、次に備えておきたく思う次第です。

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