たまに18歳未満の人や心臓の弱い人にはお勧めできない情報が含まれることもあるかもしれない、甘くなくて酸っぱくてしょっぱいチラシの裏。RSSによる簡単な更新情報を利用したりすると、ハッピーになるかも知れませんしそうでないかも知れません。
の動向はもえじら組ブログで。
宣伝。日経LinuxにてLinuxの基礎?を紹介する漫画「シス管系女子」を連載させていただいています。 以下の特設サイトにて、単行本まんがでわかるLinux シス管系女子の試し読みが可能!
タイトルは服を着るならこんなふうにのパクリです。
書き手と編み手の Advent Calendar 2019をご覧の皆様、初めまして。ライターとしてプログラミングやなんかのIT解説記事を執筆する事がある、Piroと申します。ライター・編集者向けのアドベントカレンダーなのに、何故マンガ?と思った方向けに、最初にちょっと背景を説明したいと思います。
自分はUnix系環境のシェルのコマンド操作やシェルスクリプトをマンガで解説するという連載記事を、シス管系女子というタイトルで日経Linux誌にて2011年から描いています。導入の1~2ページだけマンガという形式ではなく、毎回6ページのマンガだけで解説するという形式で、原作から作画まで1人での制作です。実際の内容は日経xTECHでより抜きエピソードが公開されていますので、そちらを見て頂くと「ああ、こういうやつね」とお分かり頂けるかと思います。
このエントリでは、こういうガッツリ系解説マンガを作るにあたっての
を語ってみます。というか、そういう点を深く意識しないままに描き始めて後から「ああ、あのときこうしておけば良かったのに」と後悔したことが色々あり、それを振り返ってまとめてみたという感じです。
「自媒体にマンガ形式の記事を載せたい・マンガ形式の解説書を出したいが、マンガのことはよく分からない」という編集者の方や、「マンガで解説を書くことになったがどう書けばいいか分からない」という原作・作画の方の参考になれば幸いです。
去る2018年4月22日、東京・秋葉原UDXにて開催された技術同人誌オンリーイベント技術書典4に、サークル「シス管系女子会」として参加してきました。無駄にパトロン枠での参加でした。
毎度、シス管系女子の草の根的な営業活動とファンサービス、あと〆切を設けることで何か新作を作るモチベーションにするという目的で参加していますが、今回も結果のほどを記しておこうと思います。なお、技術書典、技術書典2の結果、および技術書典3の結果は過去記事をご参照下さい。
今回の数字は以下の通りでした。一般的な技術同人誌のサークルというよりも、一般書店で購入可能な商業出版物メインの企業参加者の例という感じで見て頂いた方が良いと思います(申し込みは自分が個人的にやっていますが、商業出版物は日経BPの委託販売という形で、売り上げもそっくりそのまま渡しています)。
技術書典2の時に作成した、サンプルを兼ねたチラシ形式のリーフレットも持ち込んではいました。ただ、こちらは前回に引き続き今回も積極的にばらまかなかったので、数としてはほとんど出ていないと思います。
今回特筆すべきは、本の持ち込み分が早々に完売してしまったという事です。特に「シス管系女子3」は、当初持ち込み分60部は11時の開場から12時50分頃までの間に払底してしまい、途中で日経Linux編集部にあったという19部を急遽追加してもらいましたが、14時30分の頒布再開後14時58頃までの間になくなってしまいました。本が無くなって以後も何度か「3を……えっもうないの」的な反応を頂いていて、数だけは多く用意できるはずの商業出版物であるにも関わらず、せっかく来ていただいたのに申し訳ない限りです。一応、Amazon等の通販や書泉ブックタワー等会場近くの書店でも普通に入手できる旨は案内させていただきましたが……
シス管系女子3、技術書典4会場持ち込み分完売してしまいました……本自体はヨドバシの上の書店や書泉ブックタワー等でお買い求め頂けます〜 pic.twitter.com/27pYMf4fN7
- Piro/Linuxコマンド操作漫画連載中 (@piro_or) 2018年4月22日
持ち込み部数は前回までの実績を踏まえて検討した結果だったのですが、晴天に恵まれてのべ参加者数が倍増した事と、今回の新刊である「シス管系女子3」が4月19日発売でこれ目当てに来て下さった方が相当数いらっしゃったようだという事から、全く想定外の売れ行きとなりました。新刊が多めに出るのは想定の範囲内でしたが、既刊も前回参加時より多く出ており、全ての本が15時台にはなくなってしまいました。やはり天候の効果は大きかったようです。グッズも、ステッカーは頒布価格が高めだったので10〜20ほど出ればいいくらいかなと思っていたのですが、気がつくと半分程なくなっていました。タイツは……元々あしピタが本命の物なので、まあこちらは想定の範囲内ですね。
今回は商業誌3冊に加えてグッズも並べる必要があったのですが、今までのやり方だと確実に場所が足りなくなるので、どうにか縦方向にディスプレイする方向で工夫してみました。
スペースできた pic.twitter.com/Qspx06BDMS
- Piro/Linuxコマンド操作漫画連載中 (@piro_or) 2018年4月22日
まず本を縦にディスプレイする方法ですが、既製のイベント展示用の雛壇を調達しました。できれば何度も使える耐久性の高いプラスチックや金属や木の物を調達したかったのですが、ちょうど良さそうな物は品切れだったり、微妙にサイズが合わなかったりしてなかなか良い物が見つからず、最終的に選んだのはIGARASHI PROというメーカーの段ボール製組み立て式雛壇でした。本来はイベント毎に使い捨て前提の製品のようですが、それは勿体ないので、両面テープで固定する部分をマジックテープで置き換えてバラして持って帰れるように改造しました。また、結構奥行きがあってこれを置くと平積みのスペースを確保できないため、一番手前の段を潰すことにしました。
調達したダンボール製陳列棚。平積みと併用したいけど机の奥行きが足りないので、一番手前の一段を潰して平積み用のスペースを確保しようかなと。切らずに折ってるだけなので一応元の形(4段)にも戻せる……はず。 pic.twitter.com/IHTelNY87y
- Piro/Linuxコマンド操作漫画連載中 (@piro_or) 2018年4月18日
タイツは普通に置くと滑り落ちて危ないので、普通の店舗でワゴンセールになってる物のように縦にしてケース(たまたま家にあった未使用の不織布製収納グッズ。ある程度の柔軟性がある)に詰めて、その後ろに背の高いディスプレイでサンプルを展示する形にしました。高さを出すための物は最初は段ボール工作を考えていたのですが、もえじら組の最初のイベント参加の時に買ったスチレンボードの残りが出土された(10年以上前の物……)ので、それを切り貼りして適当に作りました。
スチレンボード工作のこれは……なんと言えばいいんだ……? タイツ四種を貼り付けて縦にディスプレイしようかなと。 pic.twitter.com/ni7zaXnGeV
- Piro/Linuxコマンド操作漫画連載中 (@piro_or) 2018年4月18日
後ろ側は紙製の簡易スタンド(同人誌の見本や値札を立てかけるために使われるような物)ですが、高さがある分倒れやすいので、後ろの方に足を延長してバランスを取ってみました。
トップヘビーになって倒れてしまったので、足だけちょっと延長してる(ホチキス使用) pic.twitter.com/giSxH6G8rN
- Piro/Linuxコマンド操作漫画連載中 (@piro_or) 2018年4月19日
POPは、タイツがネタグッズなのでそれに合わせる形でヴィレヴァン風POPの作り方を参考にそれらしい物を作ってみました。手書きでやる自信が無かったので、青地の部分をたぬき油性マジック、それ以外の部分をふい字Pで「手書き風」にしました。ロゴは、フォントの形状がヴィレヴァンのロゴの物に似ているとして紹介されていたHelvetica Ultra Compressedベースで作成しています。
本物のヴィレヴァンPOPには値段は書かれていないようですが、今回は値段も一緒に入れてしまっています。
「完売しました」のお知らせをその場で書いたりするのに、何も書かれていない白紙の状態の物も用意しておけばよかったなあ……と思いましたが、後の祭りでした。
技術書典への参加目的の1つは何か作る事へのモチベーションを高めるという事なのですが、今回はちょうど「シス管系女子3」の作業とタイミングが重なったため、これをモチベーションに作業を進めていました。
元々は、この1週間後くらいの発売予定で作業スケジュールが組まれていたのですが、そうなると技術書典の直前くらいは作業の大詰めで何も他の事ができそうになく、技術書典合わせの何かコピー本を用意するという事ができない&「シス管系女子3」も間に合わないという最悪の事態になってしまう事が予想されたため、〆切を早めてもらって発売日をイベントの前に変更、イベントにも新刊として持ち込むことができました。冒頭のプロローグの構成をギリギリで変更する事になったり、目立つ所では裏表紙の大野先輩のスカートのテクスチャが抜けた状態になってしまっているなど詰めの甘い箇所が残ってしまったりと、心残りもいくつかありますが、本来の価値である技術の本としては申し分ない物にできたのではないか……と自画自賛しています。
また、〆切が手前にずれた関係でイベント直前に2週間ほどの余裕が生まれ、コピー本は無理でしたがグッズを用意することができました。
なお、グッズ類は現在BOOTHで通販もしています。会場に来られなかった方や、会場で見落とされていた方は、こちらからご注文いただければと思います(あんしんBOOTHパック利用のため、こちらに個人情報が伝わる事はありません)。グッズがなければBOOTHを使ってみる事もなかったので、これも技術書典がきっかけで活動の幅が広がったという事だと言えそうです。今後は、過去に少数だけ生産したブックエンドもラインナップに加えられたらなあと思っています。
毎度書いている気がしますが、会場では読者の方に何度もお声がけをいただき、大変ありがたかったです。紙媒体の商業出版物でしか読めない連載ということもあってか普段あまり感想を見聞きする機会が無く、こういう場で「1も2も持ってます」「3をずっと待ってました」のようなありがたいお言葉を頂けると、大変励みになります。
また会場外でも、今回の「シス管系女子3」についてはWeb上、というかTwitter上で今までにない量の反応を頂けている印象があります。2年前にWebサイトやTwitterアカウントの運用を開始して以降、自分にできる範囲で地道なプロモーションとも言えないようなプロモーションを続けてきましたが、その間湊川さんや沢渡あまねさん、ビタワンさん、ナツヨさん(※今回イラスト内のキャラクターの使用許可を頂いた方々)、他にも数多くのフォロワーの方々に度々告知やアピール文を拡散していただけていて、その影響がこうして目に見える形で表れてきたという事なのではないかと思っています。皆さんのご厚意に感謝するばかりです。
正業の傍らでの短いページ数の連載、しかも掲載媒体の日経Linux誌が月刊から隔月刊になったということで、今まで以上にページ数が溜まるスピードが落ちる事が予想され、次の本が出るとしたら一体どのくらい先になってしまうのか全く見えない状況ではありますが、今のこの気持ちを忘れないで、腐らず歪まず続けていければと思っております。皆さん本当にありがとうございます。(……と感謝の意を激しく表明すると「最終回」っぽさが漂ってしまいますが、別にそんな事はなく実際これから次の回の作業に入らなくてはいけないので、今後とも見守っていただけましたら幸いです。)
どういう訳か、スペースにお越しの方に「マンガで分かるGitのスペースはどこですか」と訊かれてしまいました。それは僕じゃなくて湊川さんなんです……タイトル似てますが別作品です……
去る2017年10月22日、東京・秋葉原UDXにて開催された技術同人誌オンリーイベント技術書典3に、企業サークル「シス管系女子会」として参加してきました。
シス管系女子の草の根的な営業活動とファンサービス、あと〆切を設けることで何か新作を作るモチベーションにするという目的での参加でしたが、結果のほどを記しておこうと思います。なお、技術書典、技術書典2の結果は過去記事をご参照下さい。
今回の数字は以下の通りでした。
ポスター等は前回の使い回しなので、今回新たにかかった費用はイベント参加費(企業扱い)と新刊コピー本の費用くらいです。
当日は台風直撃かつ衆議院議員選挙とも重なるという、前回・前々回を上回る悪条件でしたが、主催者発表によると来場者数は2700人ほどだったとのことで、来場者数に対するムックの販売実績としては前回を上回る比率となったと言えます。
前回の技術書典2では積極的に声かけを行い、サンプル代わりのリーフレットをチラシのように積極的にばらまいていましたが、今回はそこまでの積極的な声かけはせず、スペース前で足を止めて下さった方に「よかったらこちら無料なのでどうぞお持ち帰り下さい」と勧める程度に留めました。これは、リーフレットを増産していなかったためばらまいていると足りなくなると思ったのと、技術書典2までに参加した人にまた配ってもウザイだけだろうと思ったのとが理由です。
新刊が間に合うかどうかすら危うかったので事前のアピールをほとんどしておらず、会場内でもほとんどずっと座ったままだったので、数字は前回からかなり後退するのではと考えていたのですが、商業出版物と新刊の頒布数的には全然そんなことありませんでした(コピー本に至っては昼過ぎになくなってしまいました)。 近くにキンコーズがあるので追加で刷ってこようかとも思ったのですが、宣伝活動と考えたときにこれ以上お金をかける意味があるのかよく分からなくなってしまったため、そのまま増産無しで閉会まで居座っておりました。
今回、技術書典3というイベント自体の新たな試みとして「立ち読み専用スペース」「戦利品確認用スペース」という物が用意されており(自分は行かずじまい)、サークル参加者は見本誌とは別に本を立ち読み用に提出することでそちらにも置いてもらえるようになっていました。
どれくらい効果があるのか?については未知数の状態でとりあえず提出してみましたが、会場内でスペースまで足を運んで頂いて本をお買い上げ下さった方の中に、「上の立ち読みスペースで読んで気になったので」とおっしゃって下さった方がいらしたので、まったく効果無しということはないようです。
今回のイベント参加に当たり、元々はシス管系女子BEGINSの0.3話として新作を用意しようと思っていたのですが、
ということで、突貫作業でWSLの紹介の特別編を制作し、新刊としてリリースしました。 元々、イベントが終わったら公開するつもりだったのですが、昼過ぎの時点で頒布物の在庫が無くなりそうということが見えてきたため、早々に会場内からTwitterにも投稿しました。
ただいま技術書典3参加中❢ 新作特別編の無料コピー本では、なんとあたしがWindowsでLinuxコマンドを使っちゃう⁉「まんがでわかるWindows Subsystem for Linux シス管系女子」全編をここで公開しちゃいます✨ pic.twitter.com/x8pFX3uW0o
- 利奈みんとbot/マンガでLinux! (@sysadgirl_mint) 2017年10月22日
「まんがでわかるWindows Subsystem for Linux シス管系女子」の続き❗ これでWindowsユーザーのあなたも本編中の便利テクニックを活用できちゃう⁉ (※技術的に不正確な部分があったのを訂正しました💦) pic.twitter.com/bU7CQf3KM9
- 利奈みんとbot/マンガでLinux! (@sysadgirl_mint) 2017年10月22日
コピー本として頒布したバージョンと最初に公開したバージョンでは、最後のページでWSLのことを「準仮想化」と表現していたのですが、Twitter上でご指摘を受け、冷静に考えると間に挟まるレイヤーが薄いという点では準仮想化に似ているけれども仮想マシンがいるわけではないのだから「仮想化」と言うのは間違いだったと思い至り、帰宅後に最終ページの内容を大幅に更新してTwitterに再投稿しました。 結果として、前半4ページ分と後半4ページ分のそれぞれのツイートのうち後半の方が多くRTされるというヘンテコな状況が発生してしまいましたが、それだけWSLと他の競合技術との違い・使い分けに皆さん関心があるということなのでしょう。
また、まったくの副作用として、この話を描くにあたって色々調べ直したことで自分自身のWSLへの理解が深まりました。一応Cygwin・MinGW(とMSYS/MSYS2)・PowerShell・仮想マシンとの違いは何となく分かっていたつもりではあったのですが、漫画にするにあたって「どういう絵にすればより適切な表現になるのか?」を考えたことで、今までよりもそれぞれの違いをより具体的に言い表せるようになったと思っています。技術発表や紹介記事はそれを読むだけよりも自分で書く方が勉強になる、ということを改めて実感しました。
例によってTogetterの当日のまとめ等も見てみたのですが、戦利品報告として写真を公開されている方の戦利品ラインナップを見ると「ものすごいディープな内容・商業誌では扱われていないような内容の技術同人誌」が主で、今回のコピー本が写り込んでいる物はほとんどありませんでした。シス管系女子のような「解説対象が枯れた技術で、且つ、ものすごく技術的に高度な事をやっているわけではない、初級者向け(中級者以上へのステップアップ用)の内容」というのは、やはり、技術書典というイベントに台風の中わざわざ足を運んで戦利品報告までするようなアグレッシブな方にとっては魅力的ではないということなのだと思います。
宣伝活動としては、直接会場でリーチできる層以外に、その外側・イベント外にも拡散されるような場を選ぶのが効率的なのですが、「シス管系女子」というコンテンツにとってのそういう場所は一体どこにあるのか、そもそも「ある」のかどうか、むしろ拡散されるに足るコンテンツとしての価値は本当にあるのか、まだ答えは見つかっていない感じです。
以上の通り、商業出版物の広報活動としては今回もあまりパッとしない結果に終わってしまいましたが、上記のような悪条件下にも関わらず多くの方が来場して下さり、また、シス管系女子会のスペースまでお越し下さり、暖かい声援の言葉をおかけ頂けました。普段Webではあまり感想・反応を見かけないため、このように直接「ちゃんと読まれている」ということを実感できる機会は自分にとって非常に大きな意義があり、他の何にも代えられない喜びです。お声がけ頂いた皆様、本当にありがとうございます。
今回、事前の準備を疎かにしていたため頒布物は無料のコピー本だけだったのですが、次回以降の参加に際してはファンサービス的な面にもっと注力し、グッズ類の制作にも手を広げていきたいと思っております。
ということで、技術書典3のご報告でした。
サークル「シス管系女子会」のここまでの活動の振り返りです。 技術書典と技術書典2、コミティア119、あとデブサミのDevBooks 2017にサークル参加して得られたデータや思った事を書き留めておきます。
最初にお金の絡む話から書いていきます。
技術書典とコミティアは商業誌の販売が可能とのことだったので、シス管系女子1と[2]を持っていった他、技術書典と技術書典2では無料頒布のフリーペーパーやリーフレットも持っていきました。先に大まかな数字を出しておくと、かかった費用と実績は以下のような感じでした。
イベント参加費と技術書典・DevBooksのコピー本、あと技術書典2のリーフレットの印刷費は日経BP持ちで、ムックの販売は中間マージン無しの委託販売の体裁として、ムック売上額はそっくりそのまま日経BP社に渡しています(oh, ボランティア……)。1日人を張り付ける人件費を考慮に入れなければ、多分黒字にはなっていそうな気がします。
技術書典1ではコピー本を無料配布し、技術書典2ではリーフレットを無料配布しました。 ただのチラシを配ってもどうせ見てもらえないと思ったので、中身は漫画になっています(シス管系女子BEGINSの前後に「いかにも宣伝」という感じの漫画を足した)。通り過ぎる一瞬で目を留めてもらうのは無理でも、持って帰ってじっくり読んでもらえるといいな……という魂胆です。この辺は、イベント以外の場でも買える商業出版物ならではの割り切りですね。
元々、技術書典2でもコピー本の体裁の物を無料配布する事を考えていたのですが、思ったよりページ数が増えて表紙込みで24ページになってしまった結果、どう作っても1冊あたりの原価が100円近くになってしまう事が分かった(なのでDevBooksでは一応100円での頒布としました)ため、A4サイズ3つ折りのリーフレット両面を使った縮刷版という体裁にしました。苦肉の策でしたが、これだと印刷枚数次第ではフルカラーでも1枚20円を下回るくらいになるので、結構アリな気がしています。
最初の技術書典では当初は、スペースに置いておいて立ち寄って話を聞いてくれた方や希望者に手渡すつもりだったのですが、「どうせ無料で配布するのなら通りかかった人にどんどん渡しても同じなのでは?」とツッコまれて、それもそうかと思って「無料配布のサンプルです」と声をかけて渡していくスタイルに切り替えたのでした。
通行中の人への声かけは同人イベントではマナー違反とされている事が多いようで、COMITIAに至っては「呼び込み禁止」とはっきり明記されています。技術書典では「商業出版物を取り扱う場合は企業参加扱い」というレギュレーションで、特に明示的に禁止するようなルールの記載も無かったので「企業ならこのくらいはやってもバチは当たるめぇ」と開き直って声を出していましたが、迷惑行為と言われてしまうとグウの音も出ないので、チラシ撒きともども、やるならせいぜい前を通りかかる人に届く程度の声量に留めた上で、恨まれる&出禁になる覚悟でやりましょう。とだけ書いておきます。
元々、シス管系女子会としてのイベント参加は以下のような目論見で始めました。
結論から言うと、このうち1と2は実現され、3は目立った結果には繋がっていないという印象です。
1は、前述の通り会場でのムック売り上げがそこそこあり、その際にシリーズ2冊をまとめ買いしてくださる方が多かったという事から、やはりまだまだリーチできていない潜在読者がいるという事の証明にもなっていると思います。
2は、元々出版社サイドに何度か「試し読みになるように本編の一部を公開したい」という事を打診しているのですが、「原稿料を支払って下請けに制作させたコンテンツを、何故下請けが勝手に外に出したがるのだ?」という意識があるのかないのか進展が無いので、だったら原稿料もらわなくていいから自分で好きに使えるように勝手に描くわという事でコンテンツを制作したという事です。実際にこれを動機として特別編を制作し公開に繋げられていることから、〆切駆動型の自分には確かに効果的でした。
3は、その後のイベントレポートやTwitterでの反応を見る限りでは、「このイベントで初めて知った」「この試し読みで初めて意識した」みたいな新規開拓の方の反応はあまり見られませんでした。また、全一般参加者の方のうち1/5~1/6にリーフレットを受け取って頂けた計算になりますが、イベントレポートの写真等で「会場で入手した物」の一覧に写っている例は少なかったように思いました。
理由は色々考えられますが、成果を上げるためにはまだまだ工夫が必要そうです。
初回の技術書典の話はその時のエントリをご参照下さい。以下は技術書典2の感想です。
技術書典2当日のTwitterの反応まとめを見ると、来場者が多すぎて入場が遅々として進まない事へのコメントが多く、参加を諦めた人も多かったというのは終わった後で知りました。方や会場内では、サークルによっては開場1時間や2時間で完売の拍手が上がっていました(6時間あるイベントの序盤での在庫切れというのは相当な読み違えがあったということになります)。「技術書オンリー」「同日に別の場所でも同人イベントが開催されており、その中にはけものフレンズのオンリーイベントも含まれていた」「天気は雨」など、来場者が少なくなる方向の材料ばかりがあったにも関わらずこの盛況さということで、当日に至ってすらも来場者数の読みが極めて難しい状況でした。
前回は会場が建物内の地下と2階に分断されていた上に、入場が整理券制になっていたことから、全体の様子というのは正直見えにくかったのですが、今回は他の同人誌即売会イベントに近いレイアウトだったので、全体の混雑具合などが俯瞰しやすかったです。そこで抱いた率直な感想は、まさに普通の同人誌即売会だなという事でした。
これは、コミケやコミティアなどに行った事のある自分からすると驚くべき事です。というのも、これらのイベントで評論・技術ジャンルのスペースを訪れると、他の混雑具合とは一転してびっくりするぐらい人がいないからです。そんなガラガラ具合のジャンルのサークルだけを集めるわけですから、本当にイベントとして成立するのか?という心配の声が運営サイドからすらも上がっていたのも頷けます。
別にアンケートや聞き取り調査をやったわけではないのでただの想像ですが、実はみんなこういう「知の共有」に焦点を当てたイベントを求めていたということなのではないでしょうか。
既存のイベントで技術同人が参加できるイベントといったら、基本的にはオールジャンル(取り扱う内容のジャンルを問わない、なんでもあり)のイベントですが、それらのイベントでは技術同人以外のサークルはほとんどが漫画やイラスト、エンターテインメント作品をメインにしていますし、比較的近いジャンルのオンリーイベントと思われる文学フリマであってもメインは小説や評論です。そういう状況では、技術同人に興味がある人でも、行く苦労や金銭的コストに対して得られる物が少ない、つまり「割に合わない」と判断されて、行ってみようという気が起こりにくいのではないかと思います。例えて言うと、アニメイトの一角で技術書籍のコーナーが設けられていたとして、技術者を自認する人がわざわざそこまで買いに行くのか? あるいは、アニメイトに来る客が技術書コーナーまで見て回るのか? っていう話です。
その点、技術書典は最初から技術書オンリーと銘打っていますから、「当たり」に出会えるだろうという期待値はグッと高まります。来場者が多いのは、他に類似のイベントが無いからそういうニーズがここに一気に集中してしまっているという事なのではないか。というのが、僕なりの予想です。
IT技術者をやっていると、よく「技術カンファレンスや勉強会は、発表する人が一番勉強になる」「雑誌の記事や本は、著者が一番勉強になる」なんて話を聞きます。
知見やノウハウは、自分だけが見るメモ程度であればいくらでも書けますが、他の人にも共有できるレベルの内容に引き上げるのには手間がかかります。話を一般化したり、あやふやだった所を調べ直して根拠をはっきりさせたり、話題を整理したり……こういう事が面倒で、メモのまま放置されてしまう情報や、メモすら残されないまま忘れられてしまう情報というのは結構あります。
1コマの発表内容だったり1冊の本だったりといった「パッケージ」の形にまとめる時には、必然的にそういった作業が発生します。「イベントに参加するので」「そこで新刊として発表するので」という風に〆切を設定する事で、情報を精錬するための動機が生まれ、より価値の高い情報が出てくる、そういう動機になるというのは、技術書典というイベントの重要な意義の1つと言えるでしょう。
イベント終了後、技術書典2での刊行物をベースに商業出版する事になったという話を見かけました。同人誌で活躍していた人が商業誌で活躍するようになるというのはマンガ・ゲーム業界にはよくある話で、出版社の人が会場内を見て回って、有望そうな人に声をかけるという事が、技術書でも起こっているということのようです。
会場内で実際に売れ行きが良ければ商品化する好材料になるというのはもちろんあるでしょうが、そもそもこういうイベントに物を出している時点で「〆切を設定して」「それに間に合うように」「情報を整理してパッケージ化して」同人誌として世に出すという事ができている訳で、ネットでブログに断片的な情報を書き散らかしているだけの人に比べれば、商業出版物の原稿を書くという仕事にちゃんと取り組んでくれそうだと期待できるのではないかと思います。
最後に、これは同人誌即売会一般の話ですが、対面での頒布は「読者の方と直接触れ合える」という事が最大の特長でしょう。
先のまとめで「ネットでええやん」という感じのコメントをいくつか見かけましたが、VRでないただのインターネットモールを想定しているのであれば、それは「欲しい物を事前に決めて、買いに行って、買う」という事以上の意義をイベントに対して見出していないという事なのではないかと思います。同人イベントには、会場で作者に直接感想やお礼を言いに行く人もいれば、会場で読者が喜び興奮している様子を見たくて出展する人もいます。
自分の場合は、Webでない紙媒体で連載をやっていて、読者層がWebでアクティブな人達の層とは微妙に違うらしいという日経Linux誌での連載であることから、いつもはあまり「読者の方々に実際読まれている」という実感を持てずにいます。そのため、目の前にいる方に「持ってる」とか「読んでる」とか言って頂けるのは素直に嬉しかったです。普段なかなか認識できない「読者の実在」を意識することができて、励みになるのは間違いないです。
あと、対読者というのとはちょっとズレますが、ご同業の方と話せる機会としても自分にとっては有意義でした。技術書典2ではお隣のスペースがマンガで分かるWebデザイン/マンガでわかるGitの湊川さんのスペースだったため、イベント中やイベント終了後の合同打ち上げでこの仕事の事やそれ以外の事など色々話せたのがとても嬉しかったです。
そういえば個別にレポートを書いていなかったので、DevBooksの事についてもここに書き留めておこうと思います。
恐らく技術書典の成功を受けてだと思いますが、今年はDevelopers Summit 2017の会場内の1室に小規模な同人誌即売スペースが設けられていました。商業出版物の頒布は不可というレギュレーションだったので、直前のコミティア119での在庫放出と技術書典2向けの頒布物のプレお目見えだけできればいいかと思って参加してみました。
で、参加してみた感想なのですが、とにかく精神的にキツかったです。
というのも、通常の同人イベントだと全時間を通じて人の流れがありますが、DevBooksはデブサミの1コーナーという性質上、セッションとセッションの合間にどっと人が来るもののそれ以外の時間はガラッガラで、もう暇で暇でしょうがなかったです。一人での参加だったので、誰かに店番を任せてセッションを見に行くという事もできませんでしたし……
あと、「シス管系女子」というコンテンツとイベントの来場者層がマッチしていなかったようだという事も感じました。デブサミはどちらかというと流行りの技術に強い関心のある方が多いようで、DevOpsとかと真逆の方向を向いている「シス管系女子」は訴求力が無いのでしょう……多分。
ということで、もし2回目以降があるとしたらですが、「元々デブサミのセッションに興味があって」「技術同人もやっている」「当日は店番の手伝いをしてくれる人がいる」という条件を満たせる方が、会場内での荷物置き場確保も兼ねて参加するのが良いのではないかと思います。
まあ何というかタラタラ書いてきましたが、オフラインのイベントはやっぱ良いですよ。オンラインでオンデマンドでいつでも欲しい情報が手に入る、どころか、欲しくない情報まで洪水のように押し寄せてくるのが当たり前の今だから、身体感覚を伴うライブな体験の価値がより際立つ。などという言い方も実に月並みですが、その月並みな体験をした上で「やっぱり月並みだね」と言うのと、体験しない状態で想像で物を言うのとでは違うと思いますので、未体験の人は体験してみて欲しいです。直近では4月29日に幕張メッセで「超技術書典」というのが開催されるので、まずはここから。
続き:技術書典3のご報告
昨年、このツイートを見たんですよ。
夏コミでポルリン(@porurin0 )さんと湊川あい(@llminatoll )さんとお会いしました!
— もっちー黒蜜きな粉フレンズ (@singen_motti) 2016年9月2日
おふたりとも、とてもいい方でした!これからも応援してます٩( ๑╹ ×╹)۶
カフェちゃんとHTMLちゃんの共演でーすwww pic.twitter.com/RlgmYf1PU6
それで「うらやましすぎる!!!」とテンション爆上がりになってしまった勢いで妄想グッズの絵を描いてしまったりなんかしまして。
作者さんが「カフェちゃんブックエンド https://t.co/kYaHsUBNHj いいなあ、見てたら #シス管系女子 もブックエンド作りたくなってきた! 」って言って妄想画像作られたみたいですよ〜😲💦 まさかの実用的グッズ⁉ pic.twitter.com/1iYo4hF3D0
— 利奈みんとbot/マンガでLinux! (@sysadgirl_mint) 2016年9月10日
いやね、元々シス管系女子も何かグッズ作りたいなあとは思ってたんですよ。でも、ステッカーとかマグカップとかの比較的すぐ作れそうな物で読者の方に喜んで頂けるイメージがわかなくて。
思えば、以前Mozilla JapanのFirefoxマーケティング活動のお手伝いをしてた頃にストラップや紙袋やフォクすけぬいぐるみのデザインをやらせてもらった時も、やれ「印刷のペラいのじゃなくてちゃんとしたラバーストラップの方が絶対満足感ありますって!!」だの「紐の色と紙袋本体のコントラストが大事なんですよ!!」だの「もっと鼻の所がツンと出てた方がカワイイですって!!」だのと好き勝手駄目出しして、自分が素直に欲しいと思える物を他人のお金で作ってもらうというヤクザなことをしていたのでした(ぬいぐるみは根来さんの駄目出しもすごかったけど)。
でも、Firefoxならロゴマークがかっこいいからそれだけで満足感あるけど、自作の美(少)女イラストとなると、まず美(少)女という時点で照れの方が勝ってしまうし、そもそも自分の絵自体がそんなに上手なわけじゃないし……と色々考えてしまって、何作っても素直に自分で使える気がしなかったのです。
そんな折に見かけたのが冒頭の写真。見た瞬間に「これだ!!!っていうか自分が欲しいわ!!!!」と思いましたね。
だってシス管系女子って一応技術の本で学習(解説)マンガですやん。「これ使って本棚が技術書で埋まるくらいにいっぱい勉強しましょう!」っていうの、シャレが効いててよくないすか? 作品コンセプトにめっちゃマッチしてません? いや「今どき紙の本かよ」って呆れられそうですけども……
あと、仕様上どうしたって単色にならざるを得なくて、でもそれが却ってポップでかっこよくね?とも思いましたし。自分の絵ってそんな上手な方じゃないから丁寧に描いたり塗ったりすればするほどアラが目立って死にたい気持ちが増してくるけど、デザイン的に処理すれば見る側の脳内で勝手に補って見てもらえて実物以上に良く見えそうだし。
そう思ったらもう止まらなくて、妄想絵だけじゃ満足できず、実現できないものかと水面下でなんやかや動いていたのです。日経BPからは予算が出ない自主制作で、完全に趣味の世界です。
そしてついに実現された試作品がこちら!!! まさにイラストの通りの仕上がり!!!! 素晴らしい!!!!
ですがひとつ難点が。
単色の場合はまだマシで、絵が入ってきちゃうと もうワケが分からないことに…… これは正直盲点でした。デザイン画の時点で表紙画像と合わせたりすれば一発で分かる事だったのに、それを怠ったばかりに、試作品で実物を見るまでこの問題に全く気付いてなかったという。
なので泣く泣く一からやり直しました。 明暗反転版です。 といっても、単純に図案の明暗を反転するだけだとパーツが宙に浮いてしまう箇所が結構ありました。そこで、妄想イラストの単純化された図案から「元絵」にあたる線画を起こして、そこから改めて各所の線を拾い上げる形で図案化するという事をした結果がこれです。
これなら、多少うるさい内容の表紙と合わせても顔がちゃんと判別できます(真っ白の紙でも、本の表紙に対してブックエンド自体の影が落ちるので)。
しかも、タイツの部分を抜いたので、本の表紙の色や柄がそのままみんとちゃんのタイツの色や柄になります。つまりタイツの履き替え遊びができます。試しに手元の本をいくつか合わせてみました。 濃い色はもちろん合いますし…… 文字が入っててもへっちゃら。 帯部分だけ色が違うのも良いですね。 オライリー柄とか。 英字柄とか。 淡い色もいいですね。
試作2号で勝利が見えたので、これをベースに微修正した物を最小ロットで量産して、シス管系女子Advent Calendar 2016にご参加頂いた皆様にお礼として贈答した残りを4月9日の技術書典2に持っていこうと思ってます。利益をほとんど載せない状態でも数千円にはなってしまいます(少数生産だとどうしても割高になってしまう……かといって個人で何百個もこんなかさばる物を発注しても手に負えませんし)が、もし良かったら手に取ってみて頂ければと思います。
以下、デザインするときに分かったこととかコツとかをメモしておきます。
基本的には切り絵の要領なんですが、切り絵の中でも全パーツが繋がってるタイプの形になってないといけないというのがポイントです。
試作1号の図案の時は顔の肌部分を抜いて輪郭を残すデザインにしようとしたのですが、そうすると普通に絵を描くと鼻と口がどうしても輪郭に繋がらないパーツになってしまいます。なので、顔の角度やポーズを工夫してそれらのパーツに髪や目や膝が接するようにすることで、どうにか浮かない形でパーツを残すことができました。
明暗反転版では鼻や口のように短い線は逆に穴を開けるだけなので簡単だったのですが、顔全体を残して輪郭を穴にする場合、輪郭を全部繋げないでちょっとだけ橋渡しする部分を残してやらないといけません。あまり橋をかけすぎると見た目が悪いと思って、目立たない所(普通に線画を描く時に輪郭を途切れさせるような所)に絞って橋をかけてみました。ただ、試作2号では数を絞りすぎて頭の曲線部分が完全に枠から切り離されてしまい、枠が歪むと頭の方が飛び出てしまうようだったので、強度を増すために量産版では頭と枠の間に2箇所橋を増やそうと思ってます。
ということで、ご報告という体裁でのただの見せびらかし記事でした。
2016年4月2日でに始めて、途中からペースダウンしつつも同年12月25日に100枚を達成したので、これを一区切りとして振り返ってみます。
シス管系女子 イラスト100枚まとめ❗/2016春 シス管系女子 イラスト100枚まとめ❗/2016夏 シス管系女子 イラスト100枚まとめ❗/2016秋・冬
背景事情の要点を整理すると、
そんな感じで、現状分析も甘ければ効果測定の方法も定義できないまま、とにかく数を増やさねばという焦燥感にのみ駆られて始めたのでした。
広報的な成果は、期待したほどには無かったように思います。
タイムラインによく艦これ等のラフなイラストが流れてきていたので勘違いしてしまっていましたが、あれは作品のファン同士のコミュニケーション、あるいは神絵師とそのフォロワーの方々のコミュニケーションという文脈のものであって、すでにある巨大なコミュニティからこぼれ落ちる雫のようなものなのですよね。焦りと「これくらいならやれるかも」という妥協とで完全に見誤ってしまっていました。
それに、シス管系女子というコンテンツの最も大事な価値は解説する事にこそあるわけで、日常の一コマを切り取ってもプレビューになりません。宣伝としてやるなら1枚絵ではなく、本編同様の解説絵にするべきだったのだと今となっては思います。1枚絵で喜んで頂けるのは既存のファンの方だけですし、落描きレベルの雑なイラストではそれすらも……
自分の中で絵を描く事の心理的ハードルが下がったのは、収穫と言えると思います。学生時代にはノートの隅に落描きをしていましたが、社会人になってからはその機会がなくなり、なにか特別な理由がないと絵を描かないようになってしまっていました。1日に1時間だけでも無理やりにでも絵を描く時間を設けたことで、季節のイラストもそれほど気負わず描くことができました。
副次的な効果として、絵描きの方との交流のきっかけになったのも良かったです。絵を描く事のハードルが下がったことで、他の人へのお祝いイラストや、オリジナルキャラの絵等を描きやすくなりました。億劫がっていたら、気に入った絵の描き手の方にご挨拶すらできないままだったでしょう。
また、なるべく手をかけずに見栄えのする絵を描くノウハウが多少は身に付いたとも思っています。例えば、自分の場合はペン入れ工程が最も時間を食うため、それをスキップするやり方を取るようになりました。また、背景や小物などについて、今まではいつも律儀に線画を仕上げてから塗っていたのを、いきなり塗りから始めるというやり方を取れるようになりました。夏に描いたヒマワリや七夕の笹、仙台七夕の飾り等は、このやり方でなければもっと時間がかかっていたでしょう。
総評としては、よく頑張ったけどピントがずれてたね、というあたりでしょうか。
来年以降は、無理の無い範囲までペースを落としつつも、当初の目的である広報に繋がるように、解説を主にしたイラストの割合を増やしていきたいです。
技術書典に参加してきましたので、MozLondonの技術面以外の話をほったらかして先にこっちの話を書いておきます。
個人や小規模の団体などによる自費出版物=同人誌の即売会には「オールジャンルイベント」と「オンリーイベント」の2種類があります。「コミックマーケット」はオールジャンルイベントの代表例で、マンガ小説評論写真集その他色々な種類・内容の作品が取り扱われています。一方のオンリーイベントでは、取り扱われる作品が「艦これオンリー」や「弱虫ペダルオンリー」のように特定のタイトルのファンアートだけだったり、「耳キャラオンリー」のように特定のキーワードに関係する作品だけだったりという風に、イベント全体が特定のジャンル性を帯びています。
オールジャンルイベントには電子工作の話だったりプログラミングの話だったりという技術的な話題を扱う作品も出展されていることがあり、これらは大まかに「技術系ジャンル」という括りになっています。このジャンルの(おそらく初の)(自分が知らなかっただけで前例はあったようです)オンリーイベントが、今回の「技術書典」というわけです。
そういう文脈なので、イベントの体裁は自分が見たところまさしく「同人誌即売会」という感じでした。他のオンリーイベントとの違いというと、そこに「企業ブロック」という扱いで、OSCの会場で見かけるような翔泳社やオライリーといった技術書に強い出版社の販売ブースが普通のサークルと机を並べて存在していたという点でしょうか。
今回は、自分は「シス管系女子」の名前で企業として参加しました。企業参加とはいっても日経BP主導ではなく、僕個人が技術書典の情報を見つけて「参加したい!」と言ってゴネて、頒布物作りや当日の作業は自分でやるということでスポンサードして頂いた感じです。基本的に商業出版物は企業参加で申し込むようにというレギュレーションもありましたし。
シス菅系女子!!!#技術書典 #通運会館 #2F pic.twitter.com/pl7prmf4Ev
— 戸倉彩@C90日曜日(西4f38a) (@ayatokura) 2016年6月25日
(写真を撮り忘れたので戸倉さんのツイートを引用)
頒布物は新作描き下ろし(ただし下描きクオリティ)の8ページのコピー本と、既刊のムック2冊でした。 コピー本の内容はpixivにまるっと上げてあります。 そのうちシス管系女子の特設サイトにも載せるつもり。
<script src="http://source.pixiv.net/source/embed.js" data-id="57590783_33fd1695fde5334093fd08b34d503ac6" data-size="medium" data-border="on" charset="utf-8"></script><noscript>
シス管系女子BEGINS 第0.1話 by Piro on pixiv
</noscript>最初は普通にスペースに置いておいて、本を買って下さった方に渡したり、見てくれた人に「無料です」と言ってそのまま持って行ってもらったりというつもりでいたため、100部持ち込んで(コミケの技術島だったら「多すぎやろ」レベルの数)余ったらOSC等の会場でチラシのスペースに置いてもらうとかすればいいかなーと思っていたのですが、ヘルプで入ってもらった売り子さんの提案で「どうせ無料ならどんどん配った方がいいのでは?」という事になって、配り始めたらあっという間に足りなくなってしまいました。幸い、会場から徒歩で行ける距離にキンコーズがあったため、なくなりそうになったら行ってセルフコピーで200部増刷するという事を2回繰り返して、閉会30分前くらいの時点で合計500部を配りきりました。 (イベント側でも当日増刷システムなどの試みをしていたようですが、自分は制作フォーマットが違った&毎度の通り作業がギリギリになってしまって申し込めなかったので、自力解決したという次第……)
ムックの方は各30部ずつ持ち込んで、それぞれ残り5~6冊くらいになるまでは出ました。という所から売り上げはすぐに計算できるのですが、まぁ企業として動くには明らかに赤字なので、今回は日経BPサイドにはプロモーションと割り切って頂いた感じです。
見ていた感じだと、手に取っていただいた方には「初めて知った」という人が多かった印象で、費用対効果はさておき「今まで到達できていなかった人に認知してもらう」という事はそれなりに実現できたのではないか?と思っています。 内容の質にはわりと自信がありますので、今後もこんな感じで、今まで届けられていなかった方に届けられる方法を考えていきたいです。
あと、今回スケブ依頼は無かったのですが、会場では何人かの方にサインのご依頼を頂いたので書かせて頂きました。焦りもあって線が結構ヨレヨレになってしまいました……すみません。
着いてみると結構会場が狭くて、開会直後から行列がすごいことになっていたようですが、早々に入場方式を整理券方式に切り替えたらしく、会場内の人口密度が一定以上にならないようコントロールされていました。そのため、外の「何時間待ち」といった情報とは裏腹に、中は割合ゆったりとした雰囲気が保たれていたのが印象的でした。 技術系の同人誌は試し読みをするにもじっくり読む必要のある物が多いと思われるので、これは本当に良い判断だったと思います。運営のファインプレーですね。
自分も比較的ゆっくり会場を回って他のスペースの頒布物を見て回ることができ、会場の空気にあてられて結構買い込んでました。 技術系の同人誌は分厚かったり部数が少なかったりで製造原価が高いために、頒布価格の相場が結構高いのが、普段自分がコミケ等で参加するマンガ系ジャンルとは違うものなんだなあ……と今更実感。
前例の無いイベントということで一体どれくらいの人が来るのか全く予想ができず、もしかしたら会場内のサークル参加者同士でお互いに見て回って終わりくらいの規模になるのかもと思っていたのですが、主催者発表によると一般入場者が最終集計で1300人に達していたとのことで、想像を遙かに上回る盛況ぶりに参加者として驚くばかりです。
商業出版物の流通経路に載せるほどの売り上げは見込めないけれども、この事について書きたいんだ!とか、こういう技術本を作りたいんだ!というような作り手側の思いから作られた作品達。 そういった物が集まり、読み手は作り手から直接その思いを聞けて、作り手は読み手の反応をダイレクトに得られる、というのはオフラインイベント独特の魅力だと改めて感じました。 技術書典 当日の様子でも次回開催を望む声が多く見られますし、小説・評論ジャンルのオンリーイベント「文学フリマ」が回を重ねるのみならず地方開催も行っているように、技術書典も「技術ジャンルのオンリーイベント」として確かな地位を確立していってくれるといいなあ、と思います。
続き:技術書典2のレポート
萌えキャラの設定体重が軽すぎる、という話を時々目にする。今日見たのは碧志摩メグがらみのやつ。
この手の議論で僕の見たことのある非難のポイントはだいたい以下の2つだった。
1つ目の方は、適当にイメージで設定した数字が突拍子もなかったという作り手の落ち度と、絵のリアリティレベルを無視して無粋なツッコミを入れている受け手の落ち度の両方のケースのどっちもあるけど、まあ、結局の所は巨大ロボットの設定重量はどうあるべきかというのと同じ話なんで……
ややこしいのは2つ目の話。これは「フィクションを真に受けるなよ」と言っておしまいにはできない。フランスで、痩せ過ぎのファッションモデルに影響されて一般の女性が無理なダイエットをして健康を害するというのが問題になって、痩せ過ぎのモデルを使ってはならないなんて規制が設けられた事例が実際にある。「女性の理想的なスタイル」をどう表現するかは、製作者や消費者だけの問題とは言えないという面がある事は否定できない。
自分自身、シス管系女子という漫画(の形式の技術記事)を描いてて、意識的・無意識的に女性キャラに自分の好みを反映させている所はあるので、自分の好みを軽々しく表明することが社会的に問題ありと言われると……というか、「おまえそんな女なんか現実におらんのじゃこのクソキモオタ童貞が!!! おまえがゲスな欲を丸出しにするせいで女は迷惑しとんのじゃ!!!」みたいに言われると、申し訳なく思いつつ、しかしカチンとも来る。そんなに悪し様に言われるほど悪いことしてるか?って。
んで思ったんだけど、こういうのって、「見た目」と「体重」という実は関係が薄い物を、作り手も受け手も、関係が深いと誤解してることから悲劇が生まれてる部分があるんじゃないか?って。
ダイエットというか体作りの話で、見た目の体型の良し悪しは身長体重BMIよりも体脂肪率の方が影響が大きい、という話を教えてもらった。検索してみると、そういう記事や画像が結構見つかる。
(LifestyleSupportのタイムラインより引用)
見た目の良さは体重やBMIでは測れない。何故か?
じゃあ何を見れば体型の見た目の良さを数値化できるのか? それが体脂肪率だ、という事らしい。
自分が体重を落とした経緯を振り返ったり、周囲の人の事を聞いたりした感じでは、この話は結構信憑性が高いと思ってる。 数字の上で体重だけ減っても、筋肉が無ければ見た目は相変わらず貧弱なままだから、見た目を良くしたいなら筋トレもしなきゃダメなんだなー、と。 で、脂肪が落ちると同時に筋肉が増えてくると、見た目に体が引き締まってきてるのは分かるんだけど体重はあんまり変わらないという、不思議な平衡状態が発生するというのも身をもって体験しまして。
ともかく、見た目の体型は体脂肪率で決まると仮定するなら、キャラの設定は身長と体重ではなく、身長と体脂肪率と筋肉量を記載した方が各方面に誤解が無くて良いんではなかろうか?というのが、僕の提案したい事なのです。
ちなみに、シス管系女子の登場人物達の身長体重は特に設定してないのですが、先の記事にある写真 (女性が3ヶ月で腹筋を割る方法 | スチームパンク大百科Sより引用) で言うと、みんとちゃんは体脂肪率21%くらいとされている写真、大野先輩は26%くらいとされている写真がイメージに近くて、筋肉量については2人ともそんなに筋肉質ではないだろう……と思ってます。
僕自身の好みで痩せ型の想定なのは否定できないけど、このくらいの体脂肪率ならあり得ないほど不健康に細いってことはないんじゃないでしょうか?
――ということを書いていたらこういう不思議ちゃんキャラのような設定にしとけばいいんでは? というご意見を頂いたのですが、これ、ボケ方にめっちゃセンスが要求される奴や……!
ちなみにこれ関連の話題としては、進撃の巨人のキャラクターの身長体重がある。 Wikipediaの記事には、一部出典不明だが以下の通り記載されている。
彼らは極限まで脂肪を削ぎ落とされた筋肉質の鋼の肉体に尋常じゃない密度の骨を併せ持っているから体重が重いのだ、ということだそうで。(作者の諫山氏が格闘技ファンであることも影響していそう)
2020年10月5日追記。
マリーとか初期のアトリエではキャラプロフィールに体重設定があったのだけど、総じて「重い」という意見をよくもらった。これはみんな冒険者で筋肉質だからという理由でそうしていた。(僕がTRPG畑の人間だったからというのもあるけど)
- 吉池真一 (@yoppy_never) October 4, 2020
これを見て検索したら、冒険者でもあるマルローネは158cm・49kg、親友で病弱なシアは152cm・40kgという情報が出てきて、よく考えられてたんだなあと思ったというメモを残しておきます。
日経Linux誌にて連載4年目に突入した「シス管系女子」ですが、本が出ます!(やっと) 表紙はこんな感じで、収録されているのは無印「シス管系女子」1から13話と「#!シス管系女子」1から11話、描き下ろしのプロローグに、各話間のおまけイラストなどが加わってだいたい200ページ弱くらいになってます。
(※「シス管系女子」ってなんやねん?という方は、ITPro 記者の眼の記事(担当編集記者の方による紹介)をご覧下さいませ。)
この通り、Amazonでもすでに予約可能になってます。2月18日(今月)発売予定。また、まだサイト上には登録されていないようですが、ほぼ同時にKindle版も出ます(Kindleの方がちょっと安くなるらしいです)。 本屋さんでは、技術書のコーナーか日経Linux本誌がある技術雑誌のコーナーかのどちらかに置かれるものと思われます。
「書籍」ではなく「ムック」ということで微妙なラインではありますが、これも一応「単著」とは言えるでしょうか。「単著も無いくせに」なんて煽りが流行った頃もありましたが、その時はまさか自分の最初の単著がマンガとは思いもしませんでした……
卒業以来行ってなかったんだけど、母校であるところの大阪電気通信大学の大学祭に行ってきた。サークルのプチ同窓会的な趣旨。
それで、僕らが創設した後も今に至るまでずっと続いているサークル「コミックアート」の今を見たくて、サークルの展示に顔を出した。 落描きコーナーがあったので、しれっと描いてみたりもした。
連載とかでやると怒られそうなポーズ。 pic.twitter.com/ywLHEldXdb
— Piro/YUKI Hiroshi (@piro_or) 2014, 11月 1
もういちまい。厨二病爆発中のふぉくす子。 pic.twitter.com/WJjm6ZUWWc
— Piro/YUKI Hiroshi (@piro_or) 2014, 11月 1
それを渡す時に「実は初代なんすよ」と明かして、超かしこまってる現役生の皆様方に先輩風ビュンビュンに吹かせて、適当に思いつくままいろんな話をペラペラ喋ったんだけど、あまりに垂れ流しで喋りすぎて脈絡なさすぎたんで、帰りの道すがらちょっと自分の中で話を整理してみた。
展示の部屋に入って最初に思ったのは、「おお、ほんとに10年続いてるんだ……!」という感慨。
次に思ったのは、「でも、変わってない……っていうより、後退してるのかも……」という軽い落胆。
社会人感覚だと10年って意外とあっという間だし、人の入れ替わりがないことも結構あると思う。 自分がいるのが、毎年新卒をコンスタントに採用してますっていう事が無い小さい会社だからなのかもしれないけど。 そういう状況だと、こういう事は会社としてやりたくないとか、会社としてこういう風に進んでいきたいみたいなことは、一度合意した後はけっこうそのままブレずにいられる。 でも、そうして形成された文化を後から来る人達にどうやって伝えていけばいいのか?という問題はある。 人の入れ替わりが無いから伝える必要が無い、伝える必要が無いから問題も無い、というのでは、高齢化が進んで先細りしてしまうだけ。新陳代謝がない事自体も問題だし。 弊社の目下の課題は、そういう感じ。
大学(のサークル)だと、望むと望まざるとに関わらず、基本的には毎年人の入れ替わりが発生する。 だから新陳代謝という点では悩まなくてもいいんだけど、文化の継承の問題はやはりある。
今回、現役世代を見ていて思ったのは、ノウハウはある程度継承されているようなんだけど、その背景にあった思いはどこかで途絶えてしまったのかな……ということ。
僕らはサークルを創設した世代なんだけど、当時あった既存のオタク系サークルが「既存作品のファンの集い」的な性格が強くて(あと、漫画を専門としてやる感じでもなかったので)、それに絶望して「もっと真面目に絵を描くサークル活動がしたいんやー!!」って思って作ったサークル(会長達がサークルを立ち上げたところに、僕がその噂を聞きつけて後から参加した)で、自主的な活動だったから大学から下りてくる予算なんか当然無いし、伝統的に引き継がれてきたノウハウのような物も無かったし、ほとんどゼロから作り上げるしか無かった。 大学祭の時の展示をどうするか?とか、会誌はどうやって作ればいいのか?とか、そういう部分については僕が高校の漫研の時の文化を色々と持ち込んだんだけど、それ以外の部分、会則作りだったり、(作画技術やシナリオ制作技術などの)技能向上を目的とした「勉強会」の継続的な開催だったりとかは、ほんとに手探りだった。 とにかく、自分達がやらなきゃ誰もやってくれない、教えてもくれない、自分らがやらなかったら何にも進まない、そういう危機感が強かったと思う。 特に、当初の絶望の元だった「ああはなりたくない」「あそこには負けたくない」っていう思いが強かった。
世代を重ねて、10年が過ぎて。 僕が持ち込んだ「こうやれば展示の体裁は整う」「こうやれば本の体裁は整う」といったノウハウは引き継がれていたし、本の表紙がカラーになってたりしたし、アンケートも採ってたし、ノウハウが引き継がれているのは間違いなく感じた。 また、缶バッヂ作りのように、今まで無かったことにも手を広げているのも感心した。 メンバーも相当数に増えたらしいし、合宿はちゃんとした合宿所を借りてやっているという話も聞いたし、「すげえ! ちゃんとしてる!」って思った。
でも、熱は下がってるのかなって思った。 少なくとも、危機感的なものはあまりないのだろうなあと感じた。
というか、まあ、最初の世代の僕らの危機感が異常だったとも言えるんだろうけど。 最初の世代と、後の世代って、そういう物なのかもしれない。 僕らがあまりに「差し迫った危機感」ドリブンで色々やり過ぎたものだから、サークルの公認化やメンバーの増加などによって、差し迫った危機が去って危機感も薄れていったのかなあ。 だとしたら、差し迫った危機感の有無に頼らないで向上心を保ち続けるという文化を、僕達は作り、後の世代に託さなくてはならなかったのかもしれない。
あと、話していて、当時と今とでは色々状況も変わってるんだよなあっていう事は思った。 今はPixivなんていう便利なサービスもあるし、(今時流行らないかもだけど)いわゆる「公式サイト」を作るのにも、GitHub Pagesあたりを使えば、複数人でコミット権を持ってコラボレーションできる。 Circle.msを使えば同人イベント参加もオンラインで申し込めちゃう。 あの時これがあれば……っていうのは、改めて考えてみると、結構ある。
現役世代の人達もPixivは使っているとのことだったけど、それは多分「今のトレンドとしては、絵描きは当然のようにPixivを使うものだから」っていう事なんじゃないだろうか。 それはそれでいいんだけど、一般教養の授業で教わったアンケートの取り方の技術をアンケートの改善に活かしてみるとか、そういう「工夫」としての新しい技術の導入にも、取り組み続けていて欲しいなあ、と思う。
向上心といえば、僕ら世代が卒業する前くらいに、その(勝手に)ライバル視してたサークルの方でクーデターがあったとかで、それ以前に比べてすっごく真面目に取り組むようになったらしくて、最後の年にあっちが出してた制作物は、かなりレベルが高くなってたと記憶してる。 「あそこよりは勝ってるから大丈夫」みたいに思ってたらこりゃあアッという間に追い越されるぞ……!っていう思いで背筋がヒヤリとしたんだった。
僕らが一旦絶望した所でもそういう事が起こったくらいだし、自発的な改善が行われることは今後もあるだろう。 そのとき、そうして行われた改善を彼らがさらに後の世代に継承していけるかどうか、そこが重要なんだと思う。
色々偉そうなことを言ったんだけど、あんまり先輩世代がデカいツラするもんでもないよなあ、ってのは思う。
今回も、現役世代の人達があまりにかしこまってるのを目の当たりにして、逆にこっちが申し訳なく思ってしまったほどだった。 僕自身が上記のライバルサークルに仮入部した時の「先輩の意味の分からない横暴、体育会系的な上下関係」にウンザリした記憶を思い出してしまって、自分がああいう風になってしまってるのかなって思うと、すごく申し訳ない気持ちになる。
僕は「先輩がデカいツラして居座り続けること」による「現役世代の萎縮、負の文化の継承」をすごく恐れていて、だから一線を退いた者はさっさといなくなるべきと思ってる。 僕らの時は「上の世代」がいなかったから、そこら辺まったく気にしないで好き勝手できてたっていうのは、初代ならではの特権なんだよね。
この辺のこと、Mozillaがらみでも、後世代の人に言われたんだった。 後世代にしたら、「良い文化を継承しないまま居なくなられることの方が困る」って。 でも、「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉があるくらいに、良かれと思って焼いた世話がただの迷惑になってしまう事はあまりにありふれているし、何度か自分の知っていることを相手に伝えようとしてバーッとまくし立てて辟易させてきたことを思えば、僕自身が「できた先輩」になれるとは到底思えず、むしろ「よくいる駄目な先輩」の方としか思えず。 過干渉にならない程度の距離感って、難しい。
以前に初代会長が訪問したときに聞いた話だそうだけど、過去何人か、在籍者でプロの漫画家としてデビューした人はいるらしい。
いわゆるプロデビューを目指すようなレベルの意識・動機っていうのは、サークルの文化として育てていくような物でも無いんだと思う。 それはサークルに入ってくる時点で「持っている人」と「持っていない人」がいるという物で、その点についてサークルができる事は、動機を持っている人のやる気を削がないことくらいなんじゃないだろうか。
サークルとして積極的にできるのは、絵を描いたり話を考えたり漫画を描いたり本を作ったりっていう、ノウハウの伝達がせいぜいだと思う。 ノウハウを必要としている人がいた時に、伝達できるノウハウをサークルには維持していて欲しい、と僕は思う。 聞いた話では、今、勉強会の文化はあんまり引き継がれていないようだった。 技術向上を図るための勉強会を重視する、という事は僕らが拘っていたはずの部分なので、それが途絶えているのは悲しい。
現役生で、イラストレーターになりたいと思っていると言っていた人がいたと思うんだけど、今の画力がどうかっていうのと関係無く、それでやってくのは今は(これからは)すごい厳しいだろうなって思う。
今Pixivのトップページ見たら、美麗なイラストを描いてる人達が星の数ほど居るのが一目瞭然なわけで。 「今登録したら何々っていうレアカードが貰える!」ってCM打ってるようなオンラインカードゲーでイラスト描いてるような人達。 選手層はとんでもなく分厚い。 でも、そんなハイクオリティの絵でも(酷い会社には特に)安く買われてしまう。
僕が読んでるプロの小説家の人のブログで、小説教室の講師もされているそうなんだけど、その方は、教室の生徒さんで持ち込みとか営業とかを自主的にする人が少ないという事を書かれていたと記憶してる。 今回同行した初代会長も、イラストレーターで賞への応募や営業までしてくる人は全然いないという話をしていた。
Pixivで綺麗なイラストを上げているけれども自分からは応募したり営業したりはしない。 そういう人の中には、ゲーム制作会社や出版社でお金や権限を持ってる人に偶然見出されて評価されてデビューする、っていう流れに期待してる、待ちの姿勢の人が結構いるんじゃないだろうか。 そんな典型的な憧れ産業だから、搾取・買い叩きの対象にされてしまうんじゃないだろうか。
ちょっと話はズレるけど。 描いた絵はどんどん公開してフィードバック貰った方が上達するよ、だから学外に出てでもどんどん絵を人に見せていった方がいいよ、ということを現役当時の僕らは言っていたと思う。 「学外に出て行く」という事だけを見れば、Pixivに絵を公開している時点で、それはできていると言えなくもない。 でも、「人目にさらせてるか?」っていうと、疑問だと思う。 あれだけ美麗なイラストが溢れているPixivの片隅に絵をアップロードしたところで、一体どれだけの人の目に留まるだろうか。 トップページに並ぶようなクオリティの絵が膨大にある中で、自分の描いた絵は本当に人に「見てもらえている」だろうか。
僕の友人で、高校生当時はそれほど画力が高いわけでもなかったけれども、絵を専門に学び直して、その後プロの絵描きとしてゲーム業界で働いている人がいる。 彼は多分、学んだ成果の絵を持って回って就職活動したんだと思う。
本当の意味で仕事に繋げるためには、そういう自分からの効果的なアピールが重要なんじゃないだろうか。 運任せ、人任せにしないで、自分から主体的に掴み取りに行く。 Pixivに投稿して埋没したまま白馬の王子様が来るのを待ってても、チャンスはやってこない。 そういう事なんじゃないかと思う。
あと、待つにしても、見つけて貰いやすい待ち方というのもある。
Pixivのように既に大勢がいる中に、後からノコノコ参加したって、よっぽどの事が無い限りは埋没するだけだ。 ああいう場では、「絵が描けること」は「当たり前」でしかない。 その1次元の評価軸での激戦区に飛び込んで、既にプロで活躍している人達と張り合って目立つってのは、相当困難なことだと思う。
僕はPixivはロクに使えていなかったけど、「技術がそこそこ分かって」「漫画も描ける」という複数のキーワードに引っかかったことで、記者さんの目に留まったらしい。 連載が継続している今は、そこにもうひとつ「解説ができて」という評価も加わっているのかなと思う(というか、そうであって欲しい)。
絵の上手さや発表数の多さという評価軸では僕は上位にはいないけれども、他の評価軸も合わせることで、僕は浮かび上がって来れた。 1つのことだけやっていなかったということが、僕にとっての武器になったのだと思う。
僕みたいな半端者ではないちゃんとしたプロの漫画家として活動している別の友人も、メインの絵柄とは別の絵柄も練習していて、その毒気のない絵柄と、歴史関係に強い……というか、歴女というプロフィールの2つがあったことで、継続的な仕事に繋がったようだった。
既にみんながやってるのと同じ事をやるより、誰もやってないことをやる方が目立つ。 当たり前のことなんだけどね。
プロがどうとか色々描いたけど、当然だけど、誰もがプロを目指す必要は無いと思う。
スタンスとして、楽しく絵を描いていられればそれでいい、ってのは全然アリだと思う。 楽しく長く絵を描き続けていられれば、それに越した事はない。 辛くなってやめちゃうよりも、楽しく描き続けている方がいい。
というか僕自身、今まさに原稿料を頂いて漫画を描いているけれども、「プロの漫画家になろう」とは思っていなかったし。 それどころか、今こうしてやっている仕事も、どっちかっていうと「絵の比率が高い技術記事の執筆」だと思ってるくらいだし。 もえじら組の活動を細々とやれていればそれでいいかな、と、連載の仕事を貰う前は思ってた。
長く続けるためには、別に、メチャメチャ美麗で上手な絵を描ける必要ってのはないと思うんだよね。 ただ最低限、自分の絵に自信を持てるポイントがあった方がいいっていうか、自分の絵って絶望的にヘタクソだなって思わずにいられる程度にはなっていた方がいいっていうか、そういう風には思う。
描かれた物が何であるかが分かる程度の描写力。 右向きの顔を描くときに紙をいちいち裏返して確認しなくても大丈夫な程度のデッサン力。 何度も描いて消してを繰り返さなくても狙ったところに狙った線を引ける身体制御能力。 そういう地味な基礎画力があると、絵を描く事そのものを苦痛に感じる程度はだいぶ減じられると思う。 あと、そういうのができてない絵を見たときに「自分の方が基礎はできてる!」って思えるのも結構大きい。
僕自身は突き詰めると、自分が見たいけど他の誰も描いてくれない物を形にしたいっていうのと、「俺TUEEEEEEE」感を味わいたいっていう2点が、絵に関しての大きな動機だと思ってる。 自分の見たい物を形にするのなら、どうせやるなら、上手にできてた方が、観客としての自分が見てて嬉しいじゃないすか。 それでできれば「俺TUEEEEEEE」ってなりたいじゃないすか。 その方が楽しいじゃないすか。
苦手は克服した方が、より「俺TUEEEEEEEE」って思えるようになると思う。 何と言っても、「克服した俺SUGEEEEEEE」って思えるわけだし。その事実は揺らがないわけだし。 右向き描けないから左向きしか描かない、とか、背景描けないから背景描かない、とか、凝った構図は描けないから必ずバストアップしか描かない、とか。 自分で後から見てて、つまんないし情けないじゃないすか。 っていうかそんなの、自分自身が見たかった物じゃないでしょう? 自分が見たい物を手に入れるには、自分で描くしかない。 自分が上手くならなきゃ、自分が見たい物は見れない。 自分が上手くなれば、自分が見たい物を見れるようになる。
だからやっぱり、画力はあるに越した事はないと思うんだよね。 そういう喜びに繋がるためにも、勉強会の文化はあって欲しいなあって思う。
これは当日話した内容ではなく、後から「ああ、こういう話をしておけば良かったかなあ」と思った話題。
主に会誌を見てて、「読者を楽しませる努力はもっともっとしていいんじゃないか?」って事を思った。 僕らの世代がそれをできていたのかっていうのは完全に棚に上げて言っちゃうんだけど。
「大同人物語」で平野耕太氏が書かれていたんだったと思うけど、学校の部活やサークルの出す本、いわゆる「学漫」は、クソだと。 自分達が作りたいから作ってるだけで中身がない、読者がまったく楽しめない、お金を出して他の人に買って貰うには値しない、そういうジャンルだ、と。
前段で書いた事と矛盾してるんじゃないか、自分が楽しくなるようにすればいいんじゃないのか、っていう風に思われるかもしれないんだけど、そうじゃないんだよね。 独り善がりでただ作りたいから作るっていう事をしなさいって話じゃないんですよ。 作る事そのものが楽しいっていうのは、そんなもん当たり前なんですよ。 でもそれでは「作る人の視点」だけしかない。 そこに「読者の視点」も加えて、「自分が読んでも楽しめるような物、自分が欲しくなるような物を」作るのって楽しいでしょ、「読者を楽しませられる俺SUGEEEEEEE」ってなったら楽しいでしょ、って話なんですよ。
そういう風に思うのは、僕自身が大阪で育って、両親からの影響はなかったけど学校の同級生だったりテレビだったりから事あるごとに、「おもろいモンが正義。おもろくないモンはあかん。笑かしたら勝ち。スルーされたら負け。」という感覚を刷り込まれてしまってるからなのかもしれないんだけど。 その通りに実践できる・成功できる確率が低くても仕方ないとは思うけど、そうしようっていう思いは持ってて欲しいなあって思うんですよね。
あと、これも前段の話の繰り返しだけど、「今の自分で描ける物を描こうとする」んじゃなくて、「今自分が見たい(読みたい)物を描こうとする」って事は、ほんとに大事だと思う。
今自分ができる範囲でやろうとすると、何もスキルが身に付いてない段階だったら、表現の引き出しなんてそんなに無いじゃないすか。 斜め45°のバストアップの美少女しか描いたことありませんって人が、自分にできる範囲で物を作ったら、そんなもん、エロゲーの立ち絵が並んでるようなコマにしかならんくてあたりまえですよね。 そんな物を自分は見たかったのか? って話ですよ。 そうじゃないでしょ。好きな漫画みたいに、ダイナミックな構図だとかいろんなアングルだとかいろんなキャラだとかいろんな表情だとかを見たいに決まってるでしょ。
そういう「素直に自分が見たい物」を描けんのか? って話ですよ。 できないんだったら、描けるようになるしかないじゃないすか。 ……っていうのが、技術の上達に繋がるんじゃないかと僕は結構思ってる。
実際、僕も今でも、ラフ段階で微妙に今まで描いたこと無い物・やった事ない事が要求されるようなネーム切っちゃって、四苦八苦してうんうん言いながらそれを完成原稿まで仕上げて、って事を結構やってますし。
まったく目標や課題を定めずにただただ「画力を上げるんじゃ―――!!」って闇雲に努力するよりは、「今これを描けないけど描きたい・描かなきゃいけない」っていう状況を作ってしまった方が、頑張るための力を注ぐ方向を間違えにくく済むんじゃないだろうか。 というのが僕の思うところです。