Dec 02, 2020
高級生食パンの先駆け「乃が美」の食パンと量産型高級食パン屋の食パンを同時に買ってきて毎日食べ比べた
高級生食パンの乃が美と、量産型高級食パン専門店のひとつの真打ち登場を4日ほどかけて食べ比べて、自分にははっきりした優劣は感じられなかったので、今後は(も)単純に店に行きやすい方で買って食べることになるだろう、という思いを新たにした。というのが結論で、以下は余談です。
「高級食パンがブームだ」という話はテレビで時々目にしてはいたものの、別世界の出来事だな、と思っていたら、近くにそういう店ができちゃったんですよね。それで興味本位で買ってみたら、確かにおいしいっすねと感じまして。
そもそも、脂肪と糖が多く含まれてればそれを美味と感じるバグが人間にはあって、「高級」食パンゆうても結局はバターたっぷり牛乳たっぷりブチ込んでそのバグを衝いてるだけに過ぎない、というのはブームになり始めた頃に度々聞き及んでましたし。
そういうシンプルな仕組みだから模倣も容易なのか、それで高級食パンのプロデューサーなる怪しげな人があちこちでヘンテコな名前の量産型高級食パン屋をプロデュースしている、という話も聞いてましたし。
その量産型高級食パン専門店のうちの一店が近くにできて、なんだかなあと思いはしつつも、これはこれで流行り物のエンタメかなと思って、たまに無性にパンを食べたい気分になったら買ってくる感じで、それなりに楽しんでおりました。
そんな折、
- 件のプロデューサーの量産型食パンの店舗一覧を見ると、「本物」がある地域には出店していない、量産型の店ができてるのは「本物」が出店を見合わせてたような民度の低い地域だけだ。
- 町の美観を損ねる目障りな店が増殖していて目障りだ、それほど美味しくもないのに。
- 美味いのは焼きたて当日だけ。翌日には固くなってた。
- 肝心のパンは不味いんだろう。
- やっぱり乃が美一択だ。
みたいな言説を立て続けに目にしたんですよね(いやはっきりそう言ってはいない物を勝手に僕が曲解しただけかもしれないんですけど。そういう文脈であるように僕は感じたのです)。
確かにドギツイ色と珍妙な店名はどうかと思うけど、出店された地域の側を貶されたり、食って満足してる人間の舌を馬鹿にされたりというのは、いい気分がしません。
もちろん、美味い不味いは主観なので、量産型を不味いと思う人がいても、自分にとって美味いと感じられるなら何も問題は無いはずです。
けれども、僕はすっかり呪いをかけられた気分になってしまいました。
「本物」を食べた事もないのに、量産型だけ食べて美味いと言っている、「本物」は格段に美味いかもしれないのに、それより格段に劣るかもしれない物を、安くない金額で買っているなんて、ああなんと哀れな事だろう、と。
そんな呪いの言葉が頭をチラつくせいで、僕はそれまで平気で食べられていた量産型を買いにくい気分に、すっかりなってしまったのです。
直接自分個人に向けられたわけでもない揶揄のせいで、ジレンマを感じてしまうなんて、馬鹿馬鹿しい話です。
買いたいと思って買うにせよ、買いたくないと思って買わないにせよ、自分のしたい行動をしたいように取れればそれでいいのに、それができないなんて。
この呪いを解くには、「本物」と持ち上げられてる物と量産型とを実際に食べ比べるしかない。
どうせ、そんな何万円とするような買い物でもあるまいし。
食べきれなくても、冷凍すれば保たせられるし。
無理せず買える程度のお金が手元にあって、買いに行ける距離に店舗があるのだから、とっとと白黒付けてしまった方がスッキリできます。
気をつけたいのは、食べ比べるにあたって「どちらが真に美味かを客観的に評価する」「すべての量産型の味を評価する」ことは目的にしないということです。前述の通りの個人的な屈託を解消するために、「本物」とされる物と、「量産型」とされる物の中でも自分が買う可能性がある物の味の差を体感して知り、自分の意志で判断を下せる状態になることだけを目的にします。
仮に量産型が本物より著しく不味いと感じられたとしても、「それでも近いから買おう」なり「値段に見合わないから買わないでおこう」なりの判断を下せるようになるなら、それは目的が果たされたうちに入ります。
逆に、自分が買いに行く可能性が無い量産型の物をいくら食べた所で、当初の目的の達成にはつながりません。
網羅的に調達するとか、厳密に条件を揃えるとか、二重盲検法だとかいった、データの客観性を高めるための努力をするつもりは最初からありませんでした。
というわけで買ってきたんですよ。
量産型側は、先述の近所にできた店。例のプロデューサーが手がけた店はめちゃめちゃたくさんあり、経営母体もそれぞれ異なっているので、店によっても味のクオリティに差があるのかも知れませんが、既に述べたとおり「すべての量産型と比較すること」は目的でないので、実際に買って食べる可能性が今後もあるこことだけの比較にしました。
乃が美の方は商品ラインナップとしてハーフサイズがあるようなんですが、僕が行ったときにはもうその日の分は売り切れてたので、フルサイズです。
量産型の方は最初からフルサイズしか取り扱いがないので、合わせて2斤……いや4斤ですか。どちらも同じ800円、消費税込みで864円。2つ合わせて2000円しませんでした。
付いてくる説明書きもよく似てて、「1日目と2日目は生のままで、3日目と4日目は加熱して、それ以上は冷凍保存で」という案内まで共通してる。少なくともこの店については、本物と同等の食べ方をされてもいいと言えるくらいに質に自信があるようでした。
意外だったのは、乃が美の方には「1日くらい置いた方が味が落ち着いて美味しくなる」という旨の説明があったこと。「本物」はそもそも、冷蔵・冷凍なしの常温保存で数日かけて食べることが前提になってるんですね。興味深いです。
食べ方については、季節柄空気が乾燥していてカビる心配もなさそうなので、説明どおりに常温で置いておいた物を都度スライスして食べていくことにしました。この形態のパンを買うときは、いつもは面倒なので一気に全部スライスしてしまう(その後冷凍庫に突っ込む)んですが、今回はそれだと断面積が増える分劣化が進みそうな気がしたので。
以下、画像無しでお送りします。
1日目、買った当日。早速両方切って食べてみました。
量産型の方は当然ながらいつも通りで、スーパーで普通に安く売ってる食パンとは大きな差を感じさせる、脂肪と糖の罪の味です。素直に美味しいと感じました。
問題は、今回初めて食べる乃が美の方。事前に見かけていたベタボメの言説から、そんなに明らかに差があるのか?と思いながら食べましたが……率直に言うと、量産型と同程度に美味しいという印象でした。
一応、外見的には耳の部分の仕上がりに見た目の違いがあるので、区別しようと思えばできましたが、「特別な塩を使ってる」とか「特別な小麦を使ってる」とかの違いを味で感じることは僕にはできず、耳を切り落として白い所だけ出されたら分からないな、というのが素直な感想でした。
妻が「強いて言うならこっちが少し甘いような……」と言っていたのと反対の感想を自分は持ったので、塩加減もぼくらには差が分からなかったようです。
2日目、購入翌日。スライスしてそのまま食べましたが、どちらもまだまだ全然フワフワで美味しいと感じました。すぐ固くなったと書いた人の保存の仕方が悪かったのか、それとも、これが量産型の中で特に出来がいい部類だからなのか、真偽のほどは不明ですが、自分には味の劣化はどちらも感じ取れませんでした。妻に聞いてみても、「どっちも同じでは」と……
3日目。このくらいから、両者とも電子レンジなりトースターなりで加熱して食べる事が推奨されていたので、魚焼きグリルでトーストにして食べました。どちらも、焼き目が付いた表面はサクッ、その内側はフワッ、という感じで、フワフワなだけだった生状態とはタイプの異なる美味しさだと感じました。妻も、どちらも区別無く美味しく食べていたようです。
4日目。前日同様の食べ方で、感想もまったく同じでした。妻も同じく。
朝晩に加えておやつにも食べるという無茶をやった結果、4日で全部食べきった(摂取カロリー量がとんでもないことになっていそう……)ので、冷凍した場合の味の確認は無しで、これにて今回の確認は終了です。
僕はかねてから、一定以上の美味さになると自分にはそれらの間での優劣は分からないと考えているのですが、今回もまさにそれで、両者共にその「一定」を超えていて、1日目でもう比較は不可能だなと感じていました。もしかしたら、「本物」と「量産型」では、焼きたてでは差が無くても、時間が経つにつれて劣化速度に差が出てくるのだろうか? とも思っていたのですが、違いが出ていたとしても、少なくとも僕らの舌では分かりませんでした。
というわけで、今後僕は、買いやすい量産型の方を屈託無く買えると思います。皆さんも、飲み会に1回行くくらいの出費でできる遊びなので、1回くらいやってみて各自の結論を出してみるといいんじゃないでしょうか。
ちなみに、この直前くらいに、別の近くのパン屋(恐らく個人経営)で、単価的には乃が美より少し高価なことになる食パンを買って食べましたが、乃が美や量産型と比べると、特に耳の焼き上がり加減にムラがあるように感じました。何だかんだで、これらの店は「高級」と銘打っても恥ずかしくないくらいには品質管理がきちんとなされているのだな、と感じた次第です。
追記。食べ比べるならヤマザキゴールドソフトでは? というコメントをもらったんですが、要予約とか買える日が限られてるとか聞くと、美容院の予約が億劫でズルズル引き延ばした結果半年も放ったらかしになってしまった自分の性格には合わなさそうな気がしてます。多少割高でも、思いついたときにフラッと店に行けば買える利便性は、自分にとっては「高級食パン専門店」のありがたい所ですね。
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