Nov 19, 2008

Ubiquityの先にある未来についてAza氏と直接話せた

所用でMozilla Japanオフィスに行った際、とても幸いなことに、Aza氏と話すことができた。

ちょうどPCを持っていたので、XUL/Migemoのデモをお見せした。IMを使わずに日本語を検索できる様子というのは、なかなかインパクトがあった……っぽい。と思う。

結論から言うと、僕の理解は大筋ではそう間違っていなかったようだ。「translate "english sentence" to japanese, and email to jono」や「『別れたい』をググっマスダる」みたいな複数の「動詞」の組み合わせ(チェインとかパイプとかそういう感じのもの)は、Ubiquityの将来のバージョンで入れる予定があるとも言っていた。セカンドサーチLookpickinquisitorについては、悪くないけどいまいち、という風に言っていて(……だと思う。英語不得意なので曖昧)、Aza氏はむしろもっともっと先を目指しているようだった。「動詞」を人間がいちいち入力しなくても、例えばSocial IMEやGoogleやYahooがそうしているように、多くのユーザの行動傾向をベースにして統計処理により精度の高い推測を行うようにする、という風なことも考えているとのことだった。

UbiquityはFirefox上で動作するものだけれども、もっと言えばデスクトップ環境のどこでも動作するようにできれば一番イイ、とも言っていた。彼がUbiquityの前に作ったEnsoがまさにそうで、デモしてもらった様子を見たら、デスクトップ上で特定のホットキーを押すとUbiquityのような物が起動してUbiquityのようにコマンドを入力できる、という物だった。

そういった一連の話を経て僕が思い浮かべたのは、ATOKダイレクトだ。ユーザが語句の入力を行うフロントエンドにいつも存在していて、デスクトップ環境のどこででも動作して、おもむろに始めた入力操作から「乗り換え案内」や「辞書検索」といった多様な機能をシームレスに呼び出すことができる。(それに、日本語圏のユーザなら基本的にいつでもIMEを使っているから、UbiquityやEnsoのように「それを使うためにモードを切り替えるぞ!」という気負いをしなくていい。そういう意味で、こういった操作系に馴染みやすいのはもしかしたら日本人や中国人の方なのかもしれない。)

Aza氏は、ATOKがプロプライエタリな製品であるということを残念がっていた。僕はUbuntu上のATOK X3で変換候補から同音異義語の説明が出る様子を見せたけど、これがもっとオープンな物だったら……と彼は言っていた(この時僕は、PerlやRubyからATOKダイレクトAPIを簡単に呼べるということを完全に失念していたので、そのせいもあるとは思う)。オープンソースの環境で、完全にオープンなソフトウェアだけで、IMから追加コマンド(アドオン、プラグイン)まで全部まかなえれば、もっと自由度が高くなってイノベーションが産まれるかもしれない、と。

ATOKダイレクトのようにどこでもシームレスに使えて、Ubiquityのように簡単に機能を追加できて、Webの向こう側にあるサービスと連携できる。そういう物がAza氏の当面の目標なのかもしれない。

ただ、IMをこれから新しく作るというのは、特に日本語や中国語のユーザのためにそうするというのは、さすがに無謀だと僕は思う。Ubuntu環境では最初からSCIM Anthyが使えたにもかかわらず、Firefox 3 Hacksを執筆するにあたって、大量の文章を入力する時に誤変換によるストレスが尋常でなかったため、慌ててATOK X3を購入することにした。という自分のエピソードも引き合いに出して、日本語圏のユーザにとってIMは空気のように欠かせない存在であって、その品質が日常の生産性にダイレクトに影響する、だから生半可なIMでは使ってもらえない公算が高い、ということをつい熱く語ってしまった。まあ、やるとしても、Anthyのようなすでにある開発コミュニティと協力し合って進めるのがまだ現実的だろうと思う。

ところでATOK 2008を買いそびれてしまったためというのもあって僕は全然知らなかったんだけど、ATOKダイレクトって想像以上の物みたいだ。HowTo記事によると、プラグイン作るのも関数を1つ定義するだけでいいという簡潔さだし。ATOKダイレクト開発者ブログでは色々ユニークなプラグインが紹介されている。これは20日にでもAza氏に補足として伝えておかないといけないなあ。阿波徳島マジパネェ。

余談だけど、GIMPのGUIはほんとひどいな!という所でAza氏と意気投合できたのは愉快だった。実際にそのツールを使って何かをする人の立場に立って、実際に使う場面でのフィーリングを大事にする、ということの重要性をAza氏も気にしていた。日本語圏でUbiquityのような物を使おうとする時に、キーボードを使って言葉を入力するということ自体がもう大多数の日本人にとってとてもストレスフルだという事を思い、僕は、日本人のフィーリングに合うUIの設計の難しさというものを改めて実感した。

20日のアレに先んじて、抜け駆けのようになってしまったけれども……色々話せたのはとても良かったと思う。この時の会話で深まった理解を還元したくて、こうして書いてみた。

Ubiquityにも、コマンドを作る人というのよりももっと深いレベルでこれからコミットできればなあと思う。

エントリを編集します。

wikieditish message: Ready to edit this entry.











拡張機能