Dec 10, 2018
Goodbye, EdgeHTML(私的日本語訳)
MicrosoftがEdgeの次期バージョンをChromiumベースにすると正式に発表した事を受けて発表されたMozillaの声明文について、自分が風邪やら何やらでゲンナリしている間にGoodbye, EdgeHTML (日本語訳) - Qiitaという訳が既に出ていたので激しく今更なのですが、自分でもえっちらおっちら訳してみたので、せっかくだから置いておきます。
さようなら、EdgeHTML
Microsoftは公式に、インターネット用の独立した共有のプラットフォームの維持を断念しました。Chromiumの採用により、Microsoftはオンライン生活の支配権をより一層Googleに譲り渡します。
これは実利と無関係の情緒的な話のように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。「ブラウザエンジン」――GoogleのChromiumとMozillaのGecko Quantum――は、私達がオンラインで何をできるかの大部分を実質的に決定づける開発者向けのソフトウェア部品です。それらは、私達が消費者として目にする物、私達がコンテンツを見る時の安全性、Webサイトやサービスが私達に対して行う事(訳注:位置情報の取得、デスクトップ通知の表示、などの事か)をどれだけ制御できるかといった、基本的な能力を決定づけます。Microsoftの決定は、私達ユーザー個々人に何ができるかという事をベンダ側で一方的に決定してしまえる能力を、Googleに対してより多く与えるものです。
ビジネスの観点から、Microsoftの決定は充分に納得のいく物と言えます。Googleは私達のオンライン生活の基盤のコントロールをほぼ完全に握っており、この分野でGoogleに競合し続ける事はビジネス上有益ではないでしょう。私達に一度は与えられた自由と選択肢の提供を諦めたとしても、Microsoftの株主達の利益は保たれるでしょう。Googleは非常に多才なスタッフを雇用しユニークな資産を独占する、すさまじい競合相手です。Googleの検索・広告・スマートフォン・そしてデータ収集における横断的な支配力は、彼ら以外の残りのプレイヤーに対して大きく傾斜した、Google有利のプレイフィールドをもたらしています。
社会的、市民的、そして個人的な権利の観点から、基本的なオンラインの基盤のコントロールをたった1つの企業に譲り渡す事は、恐ろしい事です。これが、なぜMozillaが存在するかという理由です。私達は、ビジネス上の好機があるからGoogleに競合するのではありません。インターネットとオンライン生活の健全性というものが、競争と選択に依存するからです。それらは、一般の消費者自身がより良い物を求めて行動を起こす事を自己決定できる、という事に依存しています。
Microsoftの決定はFirefoxの繁栄をより困難にするでしょうか? おそらく、そうでしょう。Googleをより強力にする事は、様々な面で危険です。そしてその答えの大部分は、サービス・Webサイトを作ろうとするWeb開発者や業界・企業が何をするかに依存します。もしChromiumのような1つの製品が充分なマーケットシェアを持っているなら、Web開発者や業界・企業にとって、サービスやWebサイトがChromium以外のブラウザで動作するかどうか気にかけないでいる事が容易になるでしょう。それは、Firefoxがリリースされるより以前の、Microsoftが2000年代初頭にブラウザのシェアで寡占状態にあった時に起こった事です。そして、それはまた起こるでしょう。
もし<ruby>今日<rt>こんにち</rt></ruby>のオンライン生活で何が起こっているか気になるのであれば、Firefoxにも注意を払って下さい。Firefoxは18ヶ月前よりも劇的に改善されています――Firefoxは速度とパフォーマンスの点で再び引けを取らなくなっています。1週間ほど既定のブラウザとしてFirefoxを試してみて下さい、そしてそれから判断して下さい。Firefoxを強くする事がオンライン生活の問題のすべてを解決する訳ではありません――ブラウザは様々な要素の中のごく一部に過ぎません。しかし、もしFirefoxがあなたにとって良い製品だと気付いたら、あなたがFirefoxを使う事がFirefoxを強くします。あなたがFirefoxを使う事は、Web開発者と業界・企業がChrome以外の事を考える事を手助けします。そしてそれはFirefoxとMozillaがインターネット上の生活をより良くする手助けとなります――より多くの選択肢、より多くのセキュリティの選択肢、より多くの競争によって。
参考までに、本件についての日本語で書かれた記事へのリンクもいくつか示しておきます。
- MSEdge/README.md at master · momdo/MSEdge:本件についてのMicrosoft公式発表の翻訳
- Microsoftが独自エンジンとしてのEdgeを断念してしまった日の記録 - 水底の血:訳者の方のブログ記事
- Microsoft EdgeがChromiumベースにすると公式に発表。多様性が失われるウェブへの懸念と祝福の声と - Togetter:各方面の反応集
- Microsoft EdgeのChromium移行とか - fragmentary:Web標準関係で手広く活動されてきた矢倉さん(こたせんせ)のブログ記事
- EdgeHTML死すとも...... | 覚え書き | @kazuhito:Web標準関係で手広く活動されてきた木達さんのブログ記事
- EdgeHTMLを悼む - saneyuki_s log:元Mozillaコミッタでもあって、現在もWebサービス提供者の中の人として働くさねゆきさんによる、各ベンダの事情に踏み込んで解説したブログ記事
- won't fix: RIP EdgeHTML. Software lifecycle is difficult:元IE6メンテナンスチームの一人で、現在はMozillaで開発者として働く加藤さんの、Microsoft製品のリリースサイクルという点に言及したブログ記事
- Microsoft EdgeのChromium化のアナウンスについて思うこと – Yoshifumi YAMAGUCHI – Medium:Googleでクラウド関係のアドボケイトをされている方による、仕様の標準化プロセスへの影響を解説した記事
ロストテクノロジーAdvent Calendar要にXULRunnerの話を書いた直後に、Gecko自体ロストテクノロジーになっちゃうねこれっていう感じの発表があったというのは、何とも皮肉な話です。
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