Apr 21, 2006

Flashと比べた時のAjaxの利点

Ajaxが貧乏臭い件というエントリで、アプリケーションを作り込む立場の視点からAjax懐疑論が書かれている。関連エントリのFlashに代わるものにおいてFlashの利点・優れているところがまとめられているので、それも併せて読んだ上で。

確かに、Flashは魅力がいっぱいだ。

  • オーサリングツールがある(=簡単に作れる)
  • プラットフォームに依存しない
  • バイナリなので(Ajaxよりも)高速に動作する
  • 作者が挙動をほぼ完全にコントロールできる

これはほぼそのまま、現状Ajaxに欠けている要素である。Ajaxの問題点として角度を変えて見るなら、以下のようになるだろう。

  • 作るのが難しい(高度な知識が要求される、オーサリングツールが無い)→今後の発展次第?
  • プラットフォーム(実行環境となるブラウザ)に依存する部分がある→Web標準仕様への準拠である程度解消される?
  • 動作速度が比較的遅い
  • 文字サイズの設定やJavaScriptの実行許可、ユーザースタイルシートやGreasemonkeyスクリプトなどで動作が破壊されかねない

しかし、これらのメリット・デメリットはいずれもコンテンツ作者の視点からのものだということに注目したい。そうではなくコンテンツ利用者の視点から見てみると、Flashの特徴がデメリットに・Ajaxの特徴がメリットになってくる部分もある。

Flashにおいて作者がコンテンツを色々と縛れるということは、利用者の自由も色々と制限されるということだ。

Webページにはコンテンツ利用者が見たいように見るという接し方がある。Webブラウザはそのために、見出しジャンプやリンク抽出(Opera)、Greasemonkeyスクリプト(Firefox)、Migemoによる日本語インクリメンタルサーチ(風博士)など、様々な機能を備える方向で進化してきた。Ajaxは既存のWebページを、ユーザビリティの向上という方向性で拡張するものだ。そのため、Webブラウザに備わった機能の恩恵をそのまま受けることができる。Ajaxで作られたページとWebブラウザのそれぞれに備わった機能の相乗効果で、より大きな利便性を得られることもある。

それに対してFlashは、Webページの中に全く別の環境を埋め込む物である。Flashプラグインという安全なケ−ジの中でのみ動作するという特徴故に、ブラウザの違いやユーザの介入の影響を受けることは無い。しかしそれと同時に、ブラウザに備わった便利な機能からのアクセスも遮断してしまうため、コンテンツ作者の作った物以上の物は得られないのだ。

Flashは作者の自由が最大化されている一方で、利用者の自由が縛られている。Ajaxは作者の自由が縛られている一方で、利用者の自由が保たれている。

Flashが「こういう物を見せたい」という志向の強い企業サイトやアーティストなどに受け入れられて、Ajaxが「自分の見たいように見たい」という志向の強いギークに受け入れられているというのは、この違いから来るものに他ならないのではないだろうか。

このように志向の違う人々がいる限り、これらの技術は並立していくだろう。ただ、大多数の人は既に、「テレビ局」によって配信される「番組」をお仕着せのスタイルで受信することに何ら抵抗を感じず、また、それが当り前だと思っている。Ajaxのように利用者の自由を最大化するアプローチの恩恵を恩恵と感じる人がいつまでもごく少数に留まるのなら、Ajaxのようなアプローチは今後廃れていく一方なのかもしれない。

追記。Flashのアクセシビリティの向上といった文脈の中で、Webブラウザ(JavaScript)とFlash(ActionScript)の間での通信を行う技術についての話をどこかで聞いた気がする。それがあれば、Flashでもユーザの自由を向上できるかもしれないので、そのあたりの話がどうなっているのか気になるところです。

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