Sep 07, 2006

本人が「個性的なオシャレ」に不満を感じるということを、個性的なオシャレを推奨する人は分かっていない

基本的なオシャレオフの時に天馬氏に話したことと繋がることを改めて思ったんだけど。

天馬唯氏は、太っている人には太っている人なりの、チビにはチビなりの、個性的なオシャレの方が似合う、という風なことを以前から何度もおっしゃっている。「脱オタ」の文脈で持ち出される「オシャレな格好」が「丸井系」とか「綺麗め系」とかの系統に限られていて、(彼の目から見て)明らかにそれが似合わないだろうという系統の人間までもがそれに手を出そうとしていて、また、そうすることを脱オタ説教厨は奨励している、それが腹立たしいという風なことを、氏は常々おっしゃっている(と、僕は理解している)。

でも、オシャレに詳しい人が「個性的なオシャレ」を脱オタ希望者に推奨するというのは、「オシャレなんて自己満足」というオシャレのひとつの本質を否定する行為なんじゃないだろうか、と思うんだ。

とあるスレを覗いていて、似たような言い争いの場面に遭遇した。オシャレでない、むしろダサい人の多い場所で、「こういうのが無難」ととあるオシャレさんが示したコーディネート例に、別の人が「そんなのはダサい。もっと無難なのがいい」と噛みついていた。そして「もっと無難なの」の例として挙げられたものに対して今度は先のオシャレさんが「そっちの方がダサいよ」とさらに文句をつける、というやりとり。

系統の違う人同士が、例えば女性であれば「エビちゃん系」と「裏原系」の人達がいると、当人はそれぞれ自分のことを「オシャレ」と思っていて、それぞれ相手のことを「ダサい」と思っている、そういうものだ、というコメントもあった。自分の系統と違うものは全て「ダサい」という考え方。まさにこれだと思った。

本当にオシャレのことを知りつくしてる人はもっと視野が広くて「系統」という概念を持ち合わせているから、綺麗め系とかカジュアル系とかそれぞれに「良い」ところがあることも知っているのだと思う。でもオシャレの事が分からない人には、知識がない人には、ある一系統だけが「オシャレ」であって、それ以外は全て「ダサい」としか思えないんだ。

そして脱オタを考える人の多くにとっては「丸井系」「綺麗め系」とかそういうのだけが「カッコいい」「オシャレ」なのであって、それ以外のヒップホップだのストリートだのは、「ダサい」とまではいかなくとも「自分がそうなりたいとは思えない」、消極的には忌避の対象でしかない。

そういう「自分自身がなりたいと思っていない姿」に「改造」されたところで、嬉しくなんかないんですよ。はっきり言っちゃうと。以前の事を振り返って、今、改めてそう思う。

「ファッションなんて自己満足」と、オシャレに精通している人は言う。「万人に受け入れられるファッションは無い」と、そういう人は言う。そして多分それは正しい。

でも「オシャレな人が、脱オタ希望者の彼にふさわしいと思うファッション」と、「彼自身がなりたい格好」というのは、必ずしも一致しない。オシャレな人が「個性的なオシャレ」を勧めるのはオシャレな人の自己満足でしかなくて、彼本人の自己満足を蔑ろにしてしまっている。「オシャレなんて本人の自己満足」、それを図らずもオシャレな人自身が否定してしまっている。

整形手術は「かっこよくなるため」ではなく「コンプレックスを解消するため」に行うものだ、という言葉がある。他者から見て違和感があろうが、旧知の人が「前の方が良かった」と言おうが、本人は元の顔にコンプレックスを抱いており、手術によってコンプレックスが解消されるのが、一番重要な事なんだ。

「脱オタ」は、「オシャレになること」「彼女を作ること」「セックスすること」が必ずしも唯一の目的であるとは限らない。むしろ「コンプレックスを解消すること」が本質にして最大の目的なのかもしれない。友人が僕にしてくれた事は、そういう事だったのではないだろうか。

オシャレな人を悪者にしたい訳ではない。赤の他人が「どうなりたい」と思っているかなんて事は、誰にも知りようがない。自分のなりたい格好をイメージできない、明確に言語化できない、そしてそれを伝えられない、脱オタ希望者にも問題がある。何も言わずに自分のことを理解して貰おうだなんて虫のいいことを考えている甘ったれに、問題がある。

ただ、僕はその「甘ったれ」側の人間だから、どうしてもそちらに肩入れしてしまう。導く人には、甘ったれのことを理解して、的確なアドバイスをしてやって欲しい、という過剰な期待をしてしまう。そういうスタンスから、このエントリに書いた内容が頭の中から出てきた。

考えようによっては、これもビジネスになり得るかもね。ファッションの事が分からない、それどころか自分の理想像すらも分かっていない、オシャレのド素人に対して、カウンセリングを行いながら理想像を探り出し、的確なアドバイスをする。そしてファッション改善につきあってくれる。ああ、そんなカウンセラーがいてくれたらどんなにいいか……

エントリを編集します。

wikieditish message: Ready to edit this entry.











拡張機能